中国による資金流出対策と相場への影響

写真拡大 (全2枚)

16日に中国国家外貨管理局が公表した資料によると、中国の銀行口座を介した資金は1月から5月で623億ドルの流出となりました。昨年は1月から5月で1448億ドルが流出していましたので、中国当局による送金制限によって極端な資金流出に歯止めがかかったようです。

図1は2013年以降の中国の銀行口座を介した資金の流出入と米ドル対円相場です。2015年8月の人民元切下げ以降、資金流出の傾向が強まり、ほぼ同時期に米ドル対円相場は円高が進行していました。この背景としては、資金流出による人民元売りの圧力に対抗するため、中央銀行である中国人民銀行が外貨、特に米ドルを売って、人民元を買うという為替介入を行ったためと考えられます。

※画像をクリックして拡大
図2は図1を通貨別に見たものです。資金流出が強まった2015年8月の人民元切下げ以降では人民元が流出、米ドルが流入というフローになっています。興味深いのは2015年の8月と9月は一時的に米ドルが流出して人民元が流入しています。この一時的なフローは急激に米ドル高/人民元安となったために、中国の企業が保有していた米ドルを売って利益獲得を狙う動きだったのかもしれません。しかし、その動きも短命に終わり、再び人民元が売られるトレンドが継続しています。

※画像をクリックして拡大
図2からは日本円よりも米ドルのシェアが圧倒的に大きいことも分かります。これは米ドル対円相場にも影響を与えるものと考えられます。つまり、銀行経由の資金流出が発生すると、中国人民銀行は人民元買い/米ドル売りの為替介入をすると考えられますので、米ドル対円相場には円高/米ドル安を誘発する圧力になりうるということです。現在の状況は、中国当局がどのような手段を使って資金流出を抑制しようとも、資金流出の傾向は止まっておらず、引き続き円高圧力があるということになるでしょう。

中国当局が人民元売りに歯止めをかけるために送金規制など資金流出対策を強めてくると、世界経済にとっては大きなリスクとなります。世界中の株式や不動産などの資産を買ってきた中国マネーの流れが止まり(さらには逆流も?)、資産価格の上昇にストップがかかる懸念があるためです。特に中国からの投資が多いとされるオーストラリアの不動産市況の悪化が懸念されます。19日には、格付け会社のムーディーズがオーストラリアの4大銀行の長期信用格付けを引き下げました。同国で住宅市場に関するリスクが高まっているとのことです。英国でも不動産市況の減速が報じられており、今後発生するかもしれない世界中の資産バブルの崩壊は、中国による資金流出対策が引き金になるかもしれません。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。