ソーシャルメディアの全盛によって個人がメディア化し、そしてフェイクニュースが容易に拡散してしまう時代。これからのメディアは、いったいどこへ向かうのか──。発売中の雑誌『WIRED』日本版VOL.28では、第2特集「ポスト・トゥルースとメディアの死」として、これらの課題について取り上げた。

「SNSとフェイクニュース時代の「メディアのゆくえ」を読み解く7本のストーリー」の写真・リンク付きの記事はこちら

このテーマと関連して、本誌には掲載できなかった『WIRED』US版の翻訳記事や、雑誌『WIRED』日本版VOL.28からの転載など計7本のストーリーを紹介する。

注目すべきは、デジタル時代に向けた再建案の内部文書が2014年にリークされた『ニューヨーク・タイムズ』に関するリポート。紙メディアが苦境に陥るなか、いかに老舗新聞社がデジタル時代に相応しいメディアへと“脱皮”しようとしているのか。創業家出身の次期社長へのインタヴューと、彼の取り組みから次世代のメディアの行く末を読み解く。

一方、メディアがソーシャルメディアでの拡散が前提にしたビジネスモデルに移行することで、感情に訴えて「意見の相違」をつくる手法を重視するようになったことも見逃せない。こうした動きが何をもたらすのか、『WIRED』US版統括エディター、ジェイソン・タンツの考察は一読すべきだろう。

ジャーナリズムのあり方も変容している。人工知能を駆使した“AI記者”による記事の量産は、メディアとジャーナリズムをどう変容させるのか。そのアンチテーゼともいえる「人類学的」な取材手法を打ち出した、あるオランダ人ジャーナリストの取り組み。そして、「黒人ミレニアル世代」に特化したメディアの試みについて併せて読むことで、今後のジャーナリズムの進むべき道のヒントが見えてくる。

昨今の重大トピックのひとつがフェイクニュースを巡る問題である。その中心地となったのが、米大統領選で“暗躍”したマケドニアの「偽ニュース工場」。東欧の小さな街に住む18歳の青年は、なぜ米大統領選にまつわるフェイクニュースサイトを生み出したのか。その背景にある思想なき動機、そして偽ニュースの量産手法と拡散のメカニズムに迫った。

これに対して、フェイクニュースに踊らされないリテラシーを、子どもたちに教える動きが生まれている。わたしたちは、情報の荒波に対していかに「武装」すべきなのか、その一片が、米国の教育現場の取り組みから見えてくる。

『ニューヨーク・タイムズ』次期社長、史上最大のビッグシフトに挑む

ソーシャルメディアが存在感を高め、フェイクニュースが大統領選を動かす時代。『ニューヨーク・タイムズ』はジャーナリズムの未来を守れるか? 165年の歴史上最大のビッグシフトを率いる創業家出身の次期社長のヴィジョンに、デジタル時代のメディアのあり方を読み解く。>>記事全文を読む

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ニュースは「怒り」で拡散される:分断を生み出すメディアのビジネスモデル

ソーシャルメディアの登場によって、特定のニュースメディアが世論に影響力をもつ時代は終わった。フェイクニュースにあふれた「ポスト・トゥルース」の時代に、メディアビジネスはいかに変容するのか。>>記事全文を読む

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「AI記者」の進化が、読者を増やし、ニュースルームを効率化する

米大手新聞社『ワシントン・ポスト』が、人工知能(AI)による報道を強化している。ニッチ&ローカルなニュースをAIで自動生成することで読者を引きつけ、テンプレートで書ける記事もAIに任せることで人間の記者は本来の仕事に集中できる。人間とAIの協働が、これからのニュースルームをつくろうとしている。>>記事全文を読む

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J・ライエンダイクの「人類学的ジャーナリズム」と複雑な世界の伝え方

人々のストーリーを丹念に取材することで、複雑な問題の実態を描き出す。オランダ人記者、ヨリス・ライエンダイクの「人類学的ジャーナリズム」は、シンプルでわかりやすいストーリーが好まれる時代にどんなアンチテーゼを示すのか。言論空間がフィルターバブルに包まれ、世界各国がリベラルと極右に分断されつつあるいま、ジャーナリズムが果たすべき役割を、ライエンダイクに訊く。>>記事全文を読む

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「黒人ミレニアルのためのBuzzFeed」が描くコミュニティ戦略

大学の黒人学生たちが集まるカフェから生まれた、ロサンゼルスのメディアテック企業Blavity。「ミレニアル世代の黒人のためのBuzzFeed」と称される彼らは、どのように読者を巻き込み、コミュニティを築き、「ユーザーによるユーザーのためのジャーナリズム」を手がけているのか? >>記事全文を読む

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世界を動かす嘘の町・マケドニアの「フェイクニュース工場」を訪ねて

東欧・バルカン半島に位置するマケドニア共和国。英語を公用語とすらしない、遠く米国から離れた小さな街から、“嘘”ばかりのフェイクニュースサイトが生まれていた。マケドニアが「フェイクニュース工場」となった理由を求めて現地を訪ねた。>>記事全文を読む

PHOTOGRAPH BY ISSIE LAPOWSKY

米国の学校は子どもたちに「フェイクニュースに踊らされないためのリテラシー」を教え始めている

フェイクニュースが蔓延する時代に、米国の教育現場では子どもたちに「ニュースを読むためのリテラシー」を教え始めている。生徒たちに情報の荒波に備える「武装」をさせるためにすべきこととは? 米国のNPOと、ある小学校の取り組みを追った。>>記事全文を読む