中国人が大泣きしたインド映画Dangal、異例の大ヒットの理由

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ハリウッドには、スポーツ映画は自国以外ではヒットしないという定説がある。野球にしろ、アメリカンフットボールにしろ、題材となる競技に関心のない観客は、たとえどんな魅力的な物語であろうとその映画を観たいとは思わない。そんな定説を覆したのが、ディズニーが共同製作・配給を手がける「Dangal」だ。

「きっと、うまくいく」や「PK」などで知られるインドの大スター、アーミル・カーンが主演とプロデューサーを務め、ニティーシュ・ティワーリーが監督した「Dangal」は、アマチュアレスリングに情熱をかける家族の物語。

インドの田舎を舞台にしたヒンディー語の作品でありながら、現時点の全世界興行収入は3億500万ドル(約340億円)を突破し、ディズニー配給作品の中では「美女と野獣」、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」、「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」に次ぐ成績を収めている。スポーツ映画としては今年最大のヒットだ。

人気の理由は何か? まず言えるのは、レスリング場面が映画の多くを占めるとはいえ、競技そのものは作品を構成する要素の一つに過ぎないということ。元レスリング選手の父親が世界チャンピオンの夢を二人の娘に託すという物語の核は、登場人物たちの心模様にある。人生の再起、愛情、親の子に対する犠牲、不可能への挑戦といったモチーフが、スリリングで時にユーモラスな、心あたたまる演出で描かれているのだ。

中国人ファンは「泣きながら親に電話した」

「Dangal」は昨年12月にインドで封切られ、インド映画史上最高額となる495クローレルピー(約85.4億円)の興行収入を記録した。北米では、インド映画歴代2位の1240万ドル(約13.8億円)を記録。アラブ首長国連邦、マレーシア、台湾、オーストラリア、ニュージーランドでも好成績を収めた。

しかしこれらの国でのヒットは序章に過ぎなかった。今年5月に公開された中国で、興行収入1億8500万ドル(約206億円)を超える爆発的ヒットを飛ばしたのである。この記録は、公開から7週経った現在も更新され続けている。

中国人に支持された要因としては、「きっと、うまくいく」や「PK」の大ヒットにより既にアーミル・カーン人気が高いことに加え、女性のエンパワーメントが主題の一つであること、インドと中国の価値観の近似性などが挙げられる。

カーン本人は、「Dangal」が大成功した理由を「中国の人々は、物語や登場人物、そして各シーンを心の底から理解してくれました。多くの観客が、自分の親が辿ってきた道を思い出し、親に電話して泣きました。このとても強力な感情が映画をヒットに導いたのです」と語っている。

「Dangal」のヒットは今後も他の地域に波及していくだろう。製作したディズニーにとっても、ここまで大きな成功は予想外だったに違いない。「Dangal」はスポーツ映画の真のチャンピオンとなった。