働き女子はいつだって優しい癒しを求めている。だから、甘めでゆるめなラブストーリーをCandy BoyとSuits WOMANがプレゼンツ。今回の主人公は、年齢=彼氏いない歴の真面目なアラサー女子・優。

私、中村優(31)は、おじさんだらけの辞書編集部で働いているOL。中学からの女子校育ちで、大学も女子大出身。男性と話すだけで、極度に緊張する奥手な性格のせいで、気付けば年齢=彼氏がいない歴の高齢処女に!

そんな恋愛経験値低めの私に、奇跡の出来事が起きた。辞書編集部に異動してきた真面目系男子の前野君と、取材と称して動物園デートしちゃったのです。しかも、前から気になっていた映画を一緒に観たり、カフェでスイーツをシェアしたり。思いっきり、女の子の気分を味わってしまいました。これって、もしかして、こ、恋人同士みたい? 

こちらを見つめる真剣なまなざしにキュン! 私、初デートだってバレていないよね??

シェアハウス「ラ・メール」のオーナーで、メイクの仕事をしているひまりさんが、私の初デート話を聞いてくれたり、慰めてくれたりしてくれる。今まで自分に自信がなくて「私なんて……」と思ってしまっていたけれど、ひまりさんのおかげで少しずつ前向きになってきた。

ひまりさんのおかげで、どんどん女子力もアップしてきました!

辞書の編集も最終段階。作り手の思いが詰まった辞書だから、長く愛される存在になってほしいな。なんだか、本づくりの気持ちって、恋愛にも似ているのかも??前野君みたいな優しくて、思いやりのある男性だったら、きっと彼女になったら幸せだろうな。あれれ、私、LINEのメッセージを交換しているだけなのに、すっかりつきあっているような気分になっていた。「また今度、どこかに一緒に行きませんか?」って、これってデートのお誘いって思っていいんだよね?

私が、スマホの画面を見つめていると、横からひまりさんが笑顔で話しかけてきた。

「なんだか嬉しそうですね。優さん、最初にラ・メールに来た時と違って、綺麗になりましたね」

えっ?私が綺麗?でも「ラ・メール 」に引っ越してから、変わってきたのかもしれない。でも次の引っ越し先を探す期限もあるし、シェアハウス「ラ・メール 」から退去する日も来るだろう。最初はドキドキしすぎて心臓に悪いなんて思ったのに、あれ、意外とこの生活が楽しくなってきたのかも。

前野君の良いものを作りたいという姿勢を見ていたら、自分も先輩なのだし頑張ろうって思ってきて、今日は早出して出勤した。すると、すでに席には前野君の姿が!机にうつぶせて仮眠をしている前野君。本当に、仕事が好きなんだな。思わず、彼の頬に触れようとしてしまった。どうしよう、前野君のこと好き……?なのかしら。でも恋って、私の今までの経験に無さ過ぎてこの感情が自分でよくわからない。

発注ミスで、イラストが足りない緊急事態!?

「優さん、ちょっとこれを見てもらえるかな」

編集長から厚手の大き目な封筒が渡された。なかにはプリントされたイラストが何十枚も入っていた。でも、発注票とあわせてみると、数十枚分のイラストがた、足りない!どうやら、新規にイラストを発注するページと、一つ前の版のイラストを使いまわす指示が混ざっていたために、必要なイラストが足りていないというピンチに! 

「あ……。どうしよう」どうやら、編集長からのメールと、赤文字で入れられた指示内容と、古いバージョンの辞書のイラストとの突き合わせをきちんとしなかったために起きたミス。完全に、私が「大丈夫」と勘違いをしてしまって、古い辞書を確認しなかったから起きたミスだ。

今から急ぎでイラストを描いてくれる人を探さなければ。それと同時にページの編集もしないといけない。どうしよう。編集長に怒られる私。自分の不甲斐なさに、屋上で落ち込んでいたら、前野君が現れた。

「大丈夫です。僕、イラストレーターさんのところに行って、お願いしてきます。優さんは残りの作業をやっていてください」

「えっ」

前野君も担当のページがあって忙しいのに、代わりにイラストレーターさんのところへ行ってくれるなんて。

「さっき、咳をしていましたね。これを着てください」

着ていたジャケットを掛けてくれた前野君。男の人の服って大きいんだ。前野君に包まれているみたいで、不思議と落ち着くな。

家に帰ると、シャワーを浴びる気力もなくベッドの上で横になっていたらそのまま眠ってしまった。今朝は、自分のミスで周りに迷惑をかけてしまっているので、挽回したいと思っていたら、あれれ、なんだろう頭がぼーっとする。仕事が多忙で風邪で倒れてしまったみたい。どうしよう、熱があって動けない。

「優さん、お仕事が忙しそうでしたね。ビタミンが足りていなかったのかもしれないです」

レモンを絞った暖かいレモネードを淹れてくれたひまりさん。

「大丈夫です。今日、僕は仕事がお休みの日なので、ゆっくり休んでください」

「ビタミンCをとるといいですよ」と、フルーツを差し出すひまりさん。

えっ!ひまりさんが看病をしてくれるの?逆に、緊張して、ね、熱が上がってしまいそう。

「何も食べない状況だと、身体に悪いですよ。このフルーツを召し上がって下さい」

口の中で甘酸っぱいフルーツの旨みが広がった。早く風邪を治さなきゃ。あれ、ピンポーン?またピンポーン。誰か来た?宅急便かな?

「僕が見てきますよ、そのまま横になって休んでいてくださいね」

玄関にひまりさんが向かった。ドアの開く音がする。

「すみません、優さんの家……ここですよね?僕、同じ会社の者なのですが、仕事で心配なことがあって来てしまって……」

この声……前野君!?前野君がわざわざ仕事帰りに来てくれたの?手にはコンビニの袋を提げている。もしかして、看病をしてくれようと思ったの?

えっ!まさかの前野君とひまりさんが鉢合わせ!違う、ご、誤解だってば!

「あ……ああ、僕、お邪魔してしまったみたいですね。優さんみたいな素敵な人がひとりな訳ないです……よね」

「そんなことないですよ、さあ上がってくださ…」

「すみません。失礼します」

「えっ!ちょっと待って!」

前野君は駆け出して行ってしまったようだ。ひまりさんと同棲してるって思われたのかな……?シェアハウスの間柄なんだけど、もしかして誤解された?

ベッドでもやもや考えていたら、前野君からLINEでメッセージが届いた。

「今までどうもありがとうございました。幸せになってください」

どうしよう、悲しくて涙が出てきてしまった。誤解されたくない自分がいた。

「ごめんなさい。僕のせいですね」

ひまりさんが心配してくれている。

「大丈夫です。私ずっと、恋とは縁遠いんで。また今まで通りの日々に戻るだけです」

なんでこんなこと言ってるんだろう!?本当はすごくつらい。でも、今どうすればいいのかわからない。……後編につづく。

Starring:松本ひなた、前田大翔