晩婚晩産家計苦しめる年50万「ママ友費」

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夫の小遣いは月1万5000円でおつりがくる。一方、専業主婦の妻関連の出費は“青天井”。毎月10万の赤字克服のため妻が打ち立てた驚きのコストカット対策とは?

●家族構成(3人家族)
会社員のGさんの夫(46)/専業主婦のGさん(44)/幼稚園に通う長女(3)
●手取り収入(月)
37万5000円(夫)、0円(Gさん)計37万5000円
●貯蓄 280万円

■年収850万円 家族3人暮らし なぜ貯金できないのか?

「やりくりがとても苦手で、毎月8万〜10万円の赤字になってしまうんです」

専業主婦のGさん(44)は暗い顔です。大黒柱の夫(46)が勤める会社からボーナス(夏・冬各約100万円)が出るので月々の赤字はそれで穴埋めできます。でも、残りのボーナスは年数回の旅行や買い物などであまり残らない状況だと言います。それでも年間通してみると少しは黒字で、赤字にならないのであればそれでいいかなと思っていたそうです。

ところが、今春からお嬢さん(3)が幼稚園に通い始め、習い事を複数始めると今後ちゃんと教育費が準備できるかと急に心配になったそうです。そうしてお金に目がいき始めると、自分たちの老後資金も気になってきたと言います。

Gさんご夫婦はいわゆる晩婚晩産のご夫婦で、ひとり娘との3人暮らしです。夫の手取り月収は37万5000円。ボーナスを含む税込み年収は850万円前後なので悪くはありません。

貯蓄もそれなりに多いと思いきや、さにあらず。夫が入社時から続けている一般財形貯蓄でお金を貯めていますが、大きなお金が必要になったらおろしてしまっているので(直近では3年前に購入した分譲マンションの頭金)、現状の財形貯蓄残高は180万円ほどにとどまっています。これに加え、4年前に結婚して以降、「毎年ほんの少しずつ黒字家計」の積み重ねで100万円。合計280万円ほどの貯蓄があります。

▼夫の定年までに教育費も老後資金も貯めねば……

ただし、夫の給料が上がる見込みは低く、住宅ローン(月9万4000円)も固定資産税(ボーナスで支払い)も払っているので、今後着実に貯まる要素はない。さらに、夫が定年を迎える10数年後には娘も大学生になり、当然のことながらその学費はバカになりません。塾代や予備校費なども含めれば、今からまとまったお金を準備する必要があるのは明らかです。

教育費だけではありません。夫と自分の老後資金もしっかり蓄えなければなりません。娘が義務教育の小学校、中学校に通っている間に貯めたいのですが、どうやって支出をコントロールしてよいのかがわからず困っているというのです。

■独身時代の“浪費”スタイルをなかなか変えられない

まずは家計状況を見て、改善策を探ります。

ぱっと見たところ、家計はいわゆるメタボ家計で、各費目の支出がとても多い状態でした。夫婦ともに20、30代の独身時代に比較的自由にお金を使ってきたので、アラフォーでお子さんが誕生してもその消費生活のスタイルを急には変えることができなかったようです。

食費(7万6000円)は購入しても食べずに腐らせてしまうなど、ムダが目立ちました。かなりな量の食材を捨てていたと振り返ります。水道光熱費(月2万8000円)については「これくらいはかかるだろう」と思っていたそうですし、スマートフォン(2人で2万円)や生命保険(3万8000円)は内容を見直すものだとは少しも思ってもいなかったとのこと。

▼習い事3つ「教育費」は月6万6000円也!

お子さんにはGさんがよいと思うような習い事を3つもさせ(幼稚園代を含め6万6000円)、その送り迎えでタクシーを頻繁に使うので交通費(1万7000円)も高め。洋服も、Gさん本人はあまり買っていないつもりでしたが、「本当に本当ですか?」と念押しすると、「実は月に1度くらい衝動買いしてしまって……」とバツ悪そうに告白しました(1万3000円)。また、娘さんは活発な子で、本人が興味を持った「カブトムシ展」「恐竜博」のようなイベントに毎週のように連れて行っているそうです。

ここまで聞いただけでも、かなり出費ですが、まだ序の口でした。

■カフェで毎日おしゃべり「ママ友費」月4万円!

家計を一番苦しめている費目、それは交際費(4万円)でした。そして、それを使っていたのはほぼGさんひとり。子どもが幼稚園にいる間、カフェでおしゃべりしてランチやスイーツを楽しみながら降園時間まで待つこともよくあるというのです。いわゆる「ママ友費」です。

家計全体を見渡せば、Gさんの都合で膨らんでいる支出項目が多いことが分かりました。

一方で夫はお金をあまり使わないタイプの方で、1万5000円の小遣いで十分足りており(昼食は妻の手作り弁当で、会社の飲み会は一切参加しない)、結婚後は、お金をかけない生活ができています。ですから、今回相談に来る前に、夫に「お金が全然たまっていない」と話したところ、非常に驚いていたそうです。

家計の状況が分かり、どうして支出が膨らむのかの理由もわかったので、判明した部分の支出を下げていくことにしました。まず、1週間の大雑把なメニューを考えておくことで食材をムダにしないように面倒でも買い物前に計画を立てました。毎週土曜は「余りものを食べる日」として、料理アプリなどを参考にしながら調理するようになりました。

▼湯水のように使ったひとり娘のための教育費は……

3万円近かった水道光熱費は節水・節電グッズを試して削減を試みました。元手はかかりましたが、毎月3000円ほどの削減効果がありました。

通信費は、格安スマホを取り入れ、コスト削減しました。お得な情報には疎く、格安スマホなどはよくわかっていなかったそうです。自宅にネット回線を引いていなかったため、データ通信量が多めのプランで契約しました。

子どもの教育費(6万6000円)は、幼稚園代に加え、ピアノ、英語教室、体操教室の月謝で高額になっていました。娘は、ピアノは楽しそうにやるけれど、英語や体操には前向きに取り組まないというので、思い切ってやめたそうです。再びやりたいと言い始めたら検討してみる形にしました。その他の支出や、交通費や被服費、娯楽費も使い方や購入の仕方を変えて減らしました。

■赤字家計の元凶「ママ友費」削減のウルトラC

そして、家計の最大のガン、交際費という名の月4万円の「ママ友費」はどうしたか?

これについてGさんは妙案を思いつきました。なんと自分自身にも小遣いを与えることで削減を図ったのです。Gさんは自分が毎月使っているママ友費(年額にすると約50万円)を知って驚き、このままでは小遣い1万5000円でやりくりしている夫に申し訳ないと思ったそうです。

よって夫と同額をGさんの小遣いとし、ママ友との交際費に充てていくことにしました。今までの半分以下の支出になるので、うまくやりくりできるか心配でしたが、ママ友たちに「カフェ代にお金を使いすぎていて家計が大変なの」ということを素直に伝えると、「私もそうだった」と共感してくれる人も何人かいて、おしゃべりをする場所を工夫していくことができました。

【家計費コストカット額ランキング】

1位:交際費 −3万7000円
ママ友との交際費が主。ほとんどがカフェ代・ランチ代。夫はほとんど飲み会などがない。
2位:食費 −2万4000円
「食材には特にこだわっていない」がムダにしている食材が多く、改善が必要。
3位:教育費 −1万8000円
通っていた3つの習い事のうち、2つ(英会話と体操教室)をやめた。
4位:生命保険料 −1万7000円
子どもが生まれてから見直しをしていなかったので、現状に合わせた保障に見直した。
5位:通信費 −1万2000円
夫婦ともに格安スマホに変更した。
6位:交際費 −1万1000円
タクシーが多かったので、面倒でも可能な限り電車やバスを利用するようにした。
7位:被服費 −6000円
安いからといって衝動買いするのを抑え、衣類は十分検討してから購入することに。
8位:その他 −5000円
有料テレビ(ケーブル局)を解約し、美容室を割安な店に変更した。
9位:水道光熱費 −3000円
節水・節電グッズを利用。使い方も注意した。
9位:娯楽費 −3000円
お店主催のイベント(カブトムシ展など)の入場料などに頻繁にお金をかけていたが、お出かけ系を少なくして、近くの公園など遊ぶように。

▼晩婚晩産の夫婦の家計は老後資金が不足しがち

このように削減していった結果、毎月8万円以上の赤字家計は、4万4000万円ほどの黒字が出せるほどに健全化しました。毎月赤字ではなくなったので、夏冬各100万円のボーナスもそのほとんどを貯蓄できるように。今、Gさんご一家の貯蓄は劇的に増え始めています。

しばしばお伝えすることですが、いわゆる晩婚晩産のご夫婦は、それまでの独身時代の生活レベルを落とせず、念願の子どもが誕生したことで、教育費や子ども関係のお金(今回のママ友費なども含む)を湯水のように使ってしまうということがよくあります。

その結果、老後資金が不足するという人が少なくありません。子どもための支出だけでなく、老いて今ほど働けなくなる時代のための準備を同時にすることも忘れてはなりません。アラサーで結婚する世代よりもお金の使い方にシビアになって、確実に貯めていくことが重要なのです。

(家計再生コンサルタント、マイエフピー代表取締役、ファイナンシャルプランナー 横山 光昭)