中国南西部・四川省彭山にある農場のアメリカミズアブの幼虫(2017年2月23日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】旺盛(おうせい)な食欲で肉や野菜、果物の残飯をくねくねと身をよじらせながら食べ尽くしていく無数のうじ虫──ここは中国南西部にある一風変わった農場だ。見ていて気持ちの良い光景ではないかもしれないが、この大飯食らいのうじ虫こそが、中国が抱える厄介な問題、食品廃棄物の山を減らしてくれる救世主になるかもしれない。

 専門家によると、このアメリカミズアブの幼虫は米大陸原産で、どの個体も1日に体重の2倍の残飯を食べることができる。四川(Sichuan)省彭山(Pengshan)にあるこの農場では、この幼虫を高タンパクの飼料として家畜に与え、その排せつ物を有機肥料としている。

 この農場の責任者を務めるフー・ロン(Hu Rong)さんは「この虫たちは気持ち悪くないよ! 生ごみを処理してくれるんだから。そのことを別の観点から見ないと」と語る。

 幼虫たちの餌に困ることはない。人口14億人の中国では、国民1人当たり年30キロ近い食料が廃棄されているからだ。

 フーさんは「平均すると、1キロ分のうじ虫は4時間で2キロのごみを消費できる」と語る。

 フーさんは、成都(Chengdu)で2000軒の飲食店から廃棄物を収集する業者の「チェンウェイ・エンバイロメント(Chengwei Environment)」から廃棄された食品を購入している。同社のワン・ジンファ(Wang Jinhua)代表によれば、「(アメリカミズアブの幼虫の群れの中に)魚を入れると白い骨しか残らない」。

 国連(UN)の食糧農業機関(FAO)によると、世界では毎年、約13億トンの食料が人の食用に生産されているが、その3分の1が廃棄される一方で、約8億7000万人が飢えている。

 食品廃棄物は環境汚染問題をも深刻化させている。FAOが2011年に発表した報告書によると、食品廃棄物を国になぞらえた場合、米国、中国に次ぐ世界3位の温室効果ガス排出国になる。中国は毎年、計4000万トンの食品廃棄物を出しているが、重さで計算すると、米ニューヨーク(New York)のエンパイアステートビル(Empire State Building)110棟分に相当する。

■食物連鎖でいずれ人の栄養分にも

 だが、この体の細長いアメリカミズアブの幼虫たちは、生ごみを処理する以外でも役に立ってくれる。

 丸々と太った幼虫は、ニワトリ、魚、カメなどの生き餌、あるいは乾燥飼料として販売される。栄養成分の最大63%がたんぱく質、36%が脂質だ。幼虫は、生ごみからたんぱく質と脂質を摂取し、やがて飼料として食べられる家畜を通して人間の食物連鎖に組み込まれ、栄養分を還元してくれる。また、幼虫の排せつ物は有機肥料にもなる。

 中国、カナダ、オーストラリア、南アフリカをはじめとする国々では、家禽(かきん)や養殖魚に虫を飼料として与えることが法律で認められている。

 欧州の昆虫産業を代表する非政府組織(NGO)「食料・飼料用昆虫の国際プラットフォーム(IPIFF)」のクリストフ・デリアン(Christophe Derrien)事務局長は、「米国や欧州連合(EU)では、(虫を飼料とすることは)もっと厳しく制限されている」と指摘する。だが、EUでも今年7月から魚の養殖場で昆虫由来のたんぱく質を飼料として与えることができるようになった。

 食品廃棄物のリサイクルは、環境面だけでなく経済面でも利益をもたらし得る。フーさんはアメリカミズアブの生きた幼虫と有機肥料を販売して十分な収入を得ており、電気代、人件費、運送費、食品廃棄物の仕入れ代といった費用を差し引いても、フーさんの年収20万〜30万人民元(約330万〜490万円)は中国ではかなりの高所得だ。

 アメリカミズアブ農場が中国に誕生したのは3年前。以来、今では全国各地で目にするようになったのも不思議ではない。

 ワンさんは、「今年、成都周辺でも新たにアメリカミズアブ農場が3〜4か所、開設されることになっている」と語った。「その狙いは、廃棄物を有用なものに変えることだ」
【翻訳編集】AFPBB News