WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

「残念ながら優勝はできなかったけれど、今日、いいプレーができてよかった」

 これが、先の全米オープンを2位でフィニッシュした松山英樹の、私が聞いた第一声だった。


全米オープンでは2位と奮闘した松山英樹(左) さぞ悔しいだろうと思っていたが、不満足な結果に終わったときの、いつもの声のトーンとはちょっと違っていた。どちらかというと、久しぶりに自分の思ったプレーができたことへの喜びからだろうか、その声からも充実感があふれていた。

 そうか……、結果よりも”どれだけ自分が納得したショット、パットが打てるか”――これが、松山の評価基準だったな、と改めて思い出した。

 今年2月、ウェイストマネジメント・フェニックスオープンでツアー4勝目を挙げたときも、優勝しても「ショットはよくなかった」と不満を漏らしていた。それほど、松山は自らのショット、パットへの基準、それに対する自己評価は厳しい。

 全米オープンでは「65」をマークした2日目、そして強風の中で「66」とその日のベストスコアをマークした最終日の2日間は「最高」のプレーだったと評した。

 とりわけ、初日の「最悪」から「最高!」へと評価が一変した2日目は、ショットが冴え、パットも決まった。久しぶりに好調だったショットは、5戦4勝と快進撃を見せた昨年10月から今年1月以来の、精度の高さだったという。

 そういう意味では、今回2位に甘んじたのは、2オーバーと出遅れた初日と、スコアをあまり伸ばせなかった3日目が要因だったと言える。その辺りは松山本人もよく自覚している。そのうえで、メジャー制覇への手応えもつかんだようだった。

「2日間いいプレーができたので、あと2日間のよくない日をもう少しいいスコアで回れるようになったら、(優勝の)チャンスは増える。そして、チャンスはすごく増えてきていると思う」

 さて、次なるメジャーは7月、およそ1カ月後に全英オープン(7月20日〜23日/イングランド・ロイヤルバークデール)が待っている。

 全米オープンが終わったばかりだったが、松山はその次なるメジャーに向けて、早くも冷静に分析していた。今回、2日間しかいいプレーができなかったことから、「(メジャー制覇のためには)準備の段階から、もう少し変えていかないといけないのかな、とすごく思いました」と語った。

 松山は、米ツアーが24〜25試合、日本ツアーが1〜2試合、それに1〜2戦の非公式戦を含めて、年間27試合ほど戦っている。トップ選手は皆、それくらいか、いやむしろもっと少ないかもしれない。タイガー・ウッズなどは、全盛の頃は年間20試合に満たないことがほとんどだった。

 シード獲得などに対してまったく心配のいらない松山も、現在は自分の体調に合わせたスケジュールを組むことができる。実際、5月は「第5のメジャー」プレーヤーズ選手権(5月11日〜14日)を戦ったあと、メモリアル・トーナメント(6月1日〜4日)までの間に、当初はディーン&デルーカ招待(5月25日〜28日)にも出場を予定していたが、土壇場になって急きょ予定を変更。2週連続のオフウィークを過ごした。

 そんな松山は、メジャー大会の前週は実戦には出場しないで調整を進める方針を取っているが、全米オープンの前週、拠点のフロリダ州は連日大雨の悪天候だった。松山は「練習があまりできなかった」と嘆いていた。

 しかし、松山の体調管理をしている飯田光輝トレーナーにとっては、この悪天候は願ってもないことだった。飯田トレーナーが言う。

「大きなケガこそないが、松山はどこかしらに痛みを抱えている。今年は首とか、いろいろなところが……。初年度以来、多く(痛みが)出ているので……。そういう意味では、ちょっと故障が続くような年かな、と思っています」

 放っておけば、一日中でも練習を続けてしまう松山。ゆえに、悪天候によって「神様が休めと言っているんだ」として、大事な全米オープンの前に松山の練習をセーブできことは、まさに「恵みの雨」だったと飯田トレーナーは振り返る。

 その松山がこのあと、例年にないスケジュールを組んだ。全英オープンの2週間前に、欧州ツアーのアイリッシュオープン(7月6日〜9日/北アイルランド・ポートスチュワートGC)に参戦するという。

 ロリー・マキロイ(28歳/北アイルランド)が大会ホストを務める試合で、マキロイが松山に「出場してほしい」と声をかけたというのがもっぱらの噂だったが、松山本人は「そんなことはないですよ」と笑って否定する。

 ともあれ、メジャー本番の2週前に欧州に渡るのは、時差など体調面のことを考えても大きなメリットとなる。さらにその間、オフウィークにはロンドンでテニスのグランドスラムのひとつ、ウインブルドン(全英オープン)が開催されているが、松山は「ウインブルドンもあるので、見に行こうかな」と話す。そんな気持ちの余裕が見られるのは、相当な進歩であり、いい傾向だ。

 はたして、全英オープンは心身ともに万全な状態で迎えることができるのか。優勝争い、悲願のメジャー制覇に向けて、それは大きなカギのひとつになるだろう。

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