韓国国防省の報道官は24日、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士1人が前日午後9時30分頃、南北の軍事境界線を越えて韓国側の監視警戒所へ亡命を求めたと発表した。

北朝鮮軍兵士の脱北は、今月だけで2人目になった。今月13日に脱北した兵士も、警戒が厳重な軍事境界線を徒歩で越えて亡命している。1人目の脱北兵士は脱北の動機について、「韓国軍の拡声器放送を聞いて決断した」と話しているという。

今や北朝鮮軍兵士の大部分は、入隊前に韓国のテレビドラマをこっそり見ていたものと思われる。拡声器放送を聞くまでもなく、国の外にどのような世界が広がっているかを知っているのだ。

いずれにしても、北朝鮮軍の軍紀の乱れは隠しようがない。

軍紀びん乱を象徴する現象のひとつが、女性兵士に対する「性上納」強要だが、これは上官が部下に求める一種のワイロだ。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

北朝鮮軍では、新兵の入隊時からワイロが飛び交っている。江原道(カンウォンド)のデイリーNK内部情報筋によると、「入隊手続きを担当するのは『軍事動員部』だが、この部署は新兵の配属先に融通が利く。入隊予定の子どもを持つ親は、『軍事動員部』に賄賂を渡して子ども達が少しでも待遇がいい、ラクな部隊に配属してもらえるよう便宜を図ってもらう」のだという。

比較的、待遇がよくてラクな部隊とは、配給事情もいい「平壌護衛局」や「後方総局」「警務部(憲兵隊)」「国境部隊」などだ。

「板門店勤務や空軍入隊は、血筋(出身成分)が大きく影響するが、それ以外の部署は軍事動員部が決める。おおよそ500ドルの賄賂が行き来する」(情報筋)

また、配属先の各部隊(警務部、護衛局、国境など)の幹部達は、わざわざ軍事動員部を訪れ、事前に賄賂を出した新兵のリストをこっそりもらう。

「リストのなかには、ドル札が入った袋が入っている。新兵の適正など考慮されずに賄賂を出した学生を優先的に連れて行く」(同)

こうしたことから、北朝鮮軍の幹部たちは除隊する数年前から、人民武力部の幹部に賄賂を渡し、軍事動員部に配属してもらうようにする。いわば「北朝鮮式天下り」だ。

軍事動員部で3年間ほど、指導員をすると賄賂で何万ドルも貯蓄できる。家1件が建てられるほどの金持ちになれることから人気の「天下り先」というわけだ。

こんな具合だから、最前線といえども軍紀が保たれるわけがないのだ。しかしそれでも、南北が対峙する非武装地帯(DMZ)は世界有数のホットスポットのひとつだ。兵士の脱北が続けば、それが引き金となって不測の事態が起きないとも限らないのである。