前大統領の醜聞では若者たちの不満が爆発 Lee Jae-Won/AFLO

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 韓国・文在寅大統領は消防士、警察官などの公共部門で81万人の雇用を目指すという。さらにその後、公共部門「非正規ゼロ」までぶち上げた。だがそれらの財源についてはほとんど触れず、民間の雇用増に対しては有効な政策が打ち出せていない。自分たちの将来を託した新政権に、韓国の若者たちは裏切られてしまうのか。在韓ジャーナリストの藤原修平氏が、韓国で彼らに話を聞いた。

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「恋愛」「結婚」「出産」「人間関係」「マイホーム」「夢」「就職」の7つを放棄した「七放世代」今の韓国の若者を表す時によく使われる言葉だ。

 実はこの数年で、彼らが諦めざるを得なくなった“将来”は徐々に増えてきた。はじめは2011年頃、「恋愛」「結婚」「出産」を放棄した「三放世代」という呼び名がまず登場した。

 2011年といえば、サムスンを擁する韓国が一部の産業分野で日本を凌駕すると言われるようになった頃で、KOSPI(韓国総合株価指数)が当時の最高値を記録した年だ。以降、ソウルにはガラス張りの高層オフィスビルが乱立。その一方で、2009年に80%近かった短大卒以上の就職率は翌2010年には50%台中盤まで急落した。格差社会の歪みが若者世代を直撃したのだ。当時大学生活を送った27歳の女性はこう語る。

「同級生の多くが就職留年や留学を選択し、卒業式にはほとんど出席しませんでした。私は運良く、卒業後に希望通りの職を見つけましたが、給料が安いだけでなく、毎日残業で帰宅は深夜。学生時代に付き合っていた彼氏とも音信不通になってしまいました。今は職場を辞めて、大学院を目指しています」

 2014年頃になると、三放世代は「人間関係」と「マイホーム」も放棄した「五放世代」と呼ばれ、翌2015年にはさらに「夢」と「就職」を放棄した七放世代となった。この間、学生たちは友人付き合いもままならないほど、余裕がなくなっていったようだ。

 現在、ソウルの中堅大学に通うパク・ジョンヒョンさん(仮名)はソウル市内の居酒屋で自身の生活をこう語った。

「バスや列車を乗り継ぎ片道2時間以上かけて通学してくることは、僕の周りでは当たり前です。自分の場合は3時間ちょっと。実家はそんなに裕福ではないので、バイトをして自分で学費を稼いでいます。バイト先は時給が良いソウル市内。家に帰るのは深夜1時近くで、それから毎日のように出される課題を片付けるので、寝るのは夜中の3時近くになります」

 そこまで苦労して卒業しても、すぐに就職できるわけではない。多くの学生は卒業後、“就職準備生”となる。ソウル市内の大学で教鞭をとるキム・サンウンさん(仮名)が語る。

「就職準備生にとって、友人たちは情報交換の貴重な仲間であり、精神的な支えです。でも実際は、友人に会うよりも、就職に向けた技能習得のために予備校に通い、その学費を稼ぐためにアルバイトに勤しまざるを得ません。そんな毎日に彼らは疲れ果て、就職、そして夢を放棄してしまうのです」

 民間への就職ではなく、安定を求めて公務員を目指し、専門の予備校へ通う若者も少なくない。しかし、公務員試験の合格率はわずか2%と、超難関となっている。

※SAPIO2017年7月号