6月20日、米国ジョージア州とサウスカロライナ州で連邦議会下院選挙戦が行われた。民主党がトランプ大統領への国民の信を問うとしてチャレンジした選挙である。結果は、いずれも共和党が勝利し、民主党は敗北した。

 トランプ政権が誕生してちょうど5カ月、この間に米国の4州で連邦下院選が催されたが、民主党は全敗である。民主党を支持する米国の大手メディアは「トランプ政権の危機」を盛んに報じるが、選挙の結果はまったく異なる事実を示している。

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巨額の選挙資金を投入した民主党

 6月20日に行われたジョージア州下院6区の特別選挙では、共和党の女性候補、キャリン・ハンデル氏が民主党のジョン・オソフ候補を破って当選した。

 元々、この選挙区の下院議員は共和党のトム・プライス氏だったが、トランプ政権の保健福祉長官に起用されたため空席となり、特別選挙が行われたのである。

 民主党側はこの選挙をトランプ政権への信を問う住民投票とみなし、民主党全国委員会(DNC)が500万ドルもの資金をオソフ陣営の選挙運動に投入した。民主党の下院院内総務のナンシー・ペロシ議員も下院民主党の先頭に立ってオソフ候補を応援した。オソフ陣営は自己調達の資金も含めて合計3500万ドルを投じるという、近年の単一の下院選では記録破りの巨額キャンペーンを展開した。

 一方、選挙資金が2300万ドルとキャンペーンの規模が下回る共和党のハンデル候補側は、トランプ政権支持をアピールする戦術で選挙戦を戦った。トランプ大統領も選挙期間中、同候補を支援するメッセ―ジを頻繁に送った。

 選挙結果は、得票率がハンデル候補51.9%に対してオソフ候補48.1%だった。ハンデル候補は、勝利宣言をした後、「トランプ大統領に感謝します」という謝意を表明した。

 同じ6月20日に行われたサウスカロライナ州下院5区の特別選挙では、共和党のラルフ・ノーマン候補が民主党のアーチ―・パーネル候補に勝利した。得票率はノーマン候補が51.1%、パーネル候補が47.9%だった。ここでも民主党側は、全国委員会が28万ドル、パーネル候補自身が55万ドルの選挙資金を使い、共和党側の選挙資金を大きく上回っていた。

 連邦議会下院の特別選挙は4月11日にカンザス州4区でも行われている。この選挙では共和党ロン・エステス候補(得票率52.5%)が民主党ジェームズ・トンプソン候補(同45.7%)に勝利した。また、5月25日に行われたモンタナ州(全州1区)の下院特別選挙では、共和党グレグ・ジアンフ候補(同50%)が民主党ロブ・クイスト候補(同44%)を破った。

メディアの報道と有権者の動向に大きなギャップ

 これら4地区の選挙はいずれも、ジョージア州6区のように現職の共和党議員がトランプ政権の閣僚などに任命されて議員を辞職し、その空席を埋めるために行われた。つまり、元来、共和党が強い地区だったのである。

 しかし民主党側は、トランプ大統領の支持率の低下や「ロシア疑惑」などトランプ政権への逆風が吹く中、共和党への支持も大きく低下していると判断し、通常よりも大規模な選挙資金を投入して一気に議席の奪取を図った。

 今回、民主党が全国規模で展開した「反トランプ・反共和党」選挙戦の司令塔となったのは民主党下院のナンシー・ペロシ院内総務だった。だが、これまでのところ選挙は4戦全敗であり、民主党内でペロシ議員のリーダーシップへの批判が高まっているという。

 現在の連邦議会下院の議席は共和党が241、民主党が194である。民主党が2018年の中間選挙で多数派となるには、24議席を増やさねばならない。民主党首脳部は、現在のトランプ政権の支持率低下が民主党の議席獲得につながることを期待している。

 だが、4州での下院選挙結果をみる限り、「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」「CNNテレビ」など反トランプ色を鮮明にしている大手メディアが喧伝する「トランプ政権の危機」と、草の根の米国有権者たちとの動向には、かなりのギャップがあると言わざるをえない。

筆者:古森 義久