誰もが一度は子どものころに傘でチャンバラごっこをしたことがあるものですが、実はその考え方は間違いというわけではないようです。身近な道具である傘は、雨をしのげるだけではなく、暴漢など身に降りかかる攻撃をかわすための道具として真面目に論じられていたことがありました。

The Umbrella as a Weapon - Geri Walton

https://www.geriwalton.com/the-umbrella-as-weapon/

紀元前2000年頃から存在していたと考えられている傘はかつて、宗教的な意味合いを持っていたものとも考えられています。傘は国王の意向を示すための象徴として使われることもあったとのことで、ヨーロッパでは贅沢品として位置づけられてきたという歴史があります。

そんな傘ですが、ヨーロッパでも次第に一般市民の道具として使われるようになると、「チャンバラ」のような本来とは異なる使われ方をされるようにもなってきていたようです。1897年にJ.F. Sullivanが記した書物「The Umbrella: A Misunderstood Weapon (傘:誤解された武器)」では、当時のヨーロッパで人々が傘を使って遊ぶ様子がユーモアを交えて描かれていたとのこと。

「武器」とはいえ、この書物で書かれている傘は他人を殺傷するようなものではなく、日常のワンシーンとして登場しています。例えば、怒り狂った子犬が飛びかかってくるときに身を守るために使う「武器」や……



見知らぬ人物に襲われた子どもを守るために、母親が傘を使って撃退する様子など。この場合はたしかに「武器」と言っても良さそうな気はしますが、当時のヨーロッパ人もどこかクスリと笑えるような傘の使い方をしていたことが伺いしれます。



また、傘を使ってフェンシングに興じるという遊びもあった模様。当時の傘フェンシングを再現するイベントも開催されています。

Umbrella fencing at Suffolk 2014 - YouTube

どこかおもしろおかしく捉えられていた傘の武器使用ですが、大まじめに武器としての有用性を唱える考え方も存在していた模様。軍人だったCharles Random de Berenger中佐は、1830年代に記した書籍「Helps and Hints How to Protect Life and Property (命と財産を守るための助力と助言)」と1838年の「Defensive Gymnastics (防衛のための体の動かし方)」の中で、数ある防衛術の1つとして、傘を使った身の守り方を紹介しています。



先に記した著書の中でde Berenger中佐は、傘について「武器として転用することがおそらく可能であり、相手を叩くための棒として、または傘を広げることで盾として使い、その間に自分のポケットからピストル銃を取り出すことができる」と記しています。また、襲いかかってくる犬に対する防御策としても有用であると述べています。

傘を防御用の武器として考えていたのはde Berenger中佐だけではありません。1899年にPearson's誌で「New Art of Self Defence (自己防衛のための新しい技術)」と題された記事を発表していたEdward William Barton-Wright氏は、その2年後の1901年に、傘または杖を防御術に組み込む手法を発表しています。

Barton-Wright氏が提唱する防御法は、自身の名前と「柔術 (ju-jitsu)」を組み合わせて「Bartitsu (バーティツ)」と命名されており、暴漢などから身を守るための数々の方法が考案されています。その多くは、柔術などをベースにする身のこなし方や攻撃方法となっているようですが、その一貫として傘を取り入れる方法が述べられています。



この中でBarton-Wright氏は、傘を使って防御する方法を次のように述べています。攻撃される状況になった場合にはまず、攻撃者の頭部を傘で叩くこと。そうすることで相手は頭を守るために両腕を頭の高さまで持ち上げます。防御者はその状態を狙って今度は相手の肘から先をつかんで体の自由を奪い、拳で攻撃者のアゴまたは心臓のある部位を強く殴ることで、攻撃者の意識を失わせます。

これ以外にも、Barton-Wright氏は「攻撃者の武器の攻撃レンジから離れる方法」や「攻撃者とあなたが同等の武装状態にある時に相手の攻撃力を無効化する方法」、「背の高い相手に立ち向かう方法」、「蹴りに長けた相手から身を守る方法」など、なかなか面白そうな防御法を紹介しているとのこと。以下のサイトでは、「New Art of Self Defence」の中身が紹介されており、興味がある人には面白い内容になっているかも。

Journal of Manly Arts



せっかく傘を使った防御術を学んでも、すぐに折れ曲がってしまうような傘では意味がありません。ということで、そういう人のために「自己防衛傘」という商品も販売されています。以下の「リアルセルフディフェンス」製の傘は非常に高い強度を備えている傘で、橋のようにして上に人が乗っても折れ曲がらないほどの丈夫さが確保されているとのことです。

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