Rettyグルメニュース

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ライター紹介

小林孝充

TVチャンピオンラーメン王選手権第8回優勝。ラーメンWalker百麺人。 歴代ラーメン王によるラーメン大王決定戦で優勝し"初代ラーメン大王”に。累計13000杯のラーメンを食べたラーメン界のトップランナー。Rettyアカウントはこちら

 

イタリアンやフレンチなど、一流レストランで腕をふるったシェフが独立し、開業するラーメン屋を特集する「脱シェフ」ラーメン企画。

【第1回】"脱シェフ"ラーメン屋を追え!名店「オテル・ドゥ・ミクニ」出身者がラーメン界にもたらしたもの
【第2回】年商4億を捨て、ラーメン道へ--まろやかチーズと麺がからむ「らぁ麺フロマージュ」誕生秘話
【第3回】上品すぎる二郎系ラーメン?元割烹料理人が旨味にこだわり尽くした究極の一杯

 

第4回で取り上げるのは、2011年のオープン以来、途切れることのない行列が続く浅草橋の「饗 くろ喜」。

昨年、最新のミシュランで「ビブグルマン」に選出されたこともラーメン業界で話題となった。

 

*ビブグルマン・・・グルメ情報のガイドブックとして知られる「ミシュランガイド」に導入された評価指標。従来の星(三つ星、二つ星、一つ星)の評価からは外れるものの、安くでおすすめできる店舗に与えられる印。

 

ラーメン好きの間で「くろ喜」といえば、季節限定で提供するラーメンである。私が食べてきた季節限定ラーメンだけでも、実にバリエーション豊富で、トッピングのひとつひとつまで徹底的にこだわった仕事ぶりは他に類を見ない。

▲季節限定「牡蠣塩そば」

▲季節限定「鮎と松茸の塩そば」

▲季節限定「寒締めほうれん草のとろみそば」

▲季節限定「鯛塩そば」

▲季節限定「あさりの味噌つけそば」

 

一杯の丼に表現された季節感。ラーメンを目の前に出された瞬間に、その美しさに息を呑んだ経験は一度や二度ではない。

果たしてこの一杯を作り上げる職人は、どのような経歴の持ち主なのであろうか?

あの「金舌」を手掛けた!? 先見の明をもった料理人

くろ喜の店主は、黒木直人(くろきなおひと)さん。魚屋を営む家に生まれ、服部栄養専門学校で料理を学ぶ。

元々はイタリアンに憧れてイタリアに渡るつもりだったというが、イタリアに行っても自分の国の料理を作れないのは問題だと、専門学校の卒業後に赤坂の料亭の門を叩き、板前の修業を始めたそうだ。

その後はイタリアンや和食を渡り歩き、牛角系のレストラングループの総料理長にまでのぼりつめる。そして、最後に手掛けたお店が、いまや押しも押されぬ人気の焼肉店「金舌」。私も当時、金舌の「日本一のレバ刺し」を食べにお店へ何度も足を運んだものだが、まさかそれを作っていたのが黒木さんだったとは驚きである。

睡眠時間は1日1時間。ラーメンの研究を続ける日々

総料理長として人気店を作りあげた彼が、なぜラーメンの道へ転身したのか?

黒木さんよると、総料理長という監督の立場で仕事を行う日常が続いたとき、もう一度現場に立ち、客と向き合いたいという料理人としての気持ちが徐々に膨らんでいったという。

そんな折に出会ったのが、かつて湯島にあったラーメン屋「大喜」(現在は仲御徒町に移転)。

https://retty.me/area/PRE13/ARE9/SUB901/100001341712/

 

「ラーメンは、お腹を満たす食べ物」という認識だった黒木さんにとって、麺やスープ、具に至るまでひとつひとつに徹底的にこだわった大喜の鶏そばは衝撃だったという。

それをきっかけにラーメンを食べ歩くようになり、丼1杯にまとめるという料理の表現手法、お客1人あたり20分の食事時間の中で勝負するというラーメンの美学にすっかり魅了されたのだ。

当然、奥さんからは猛反対を食らったというが、それでもその反対を押し切って独立を決心。開店当初、研究に研究を重ねていた頃の睡眠は、なんと1日1時間程度だったという。

そんな極限な状態であっても、黒木さんにとってラーメン作りは面白くて仕方なかったという。そんなラーメンにかける情熱がくろ喜を瞬く間に行列店にのし上げたのだろう。

▲塩そば

「くろ喜」の塩そばを食べてみると、くろ喜のラーメンを特徴づけているのは「トッピング」にあるように思う。

低温調理のチャーシューやローストしたトマト。そして、イタリアンのインボルティーニ(イタリア語で包む)を応用し、トマトソースを塗りオリーブを中に入れた鶏もも肉。

具材は彩り豊かで個性的ながらも、味は見事にまとまっており、それらは麺やスープの旨みを引き立てる。

黒木さんは、お店をオープンさせて5年がたった去年、基本のラーメンを大きくリニューアルした。今後は、より自分が作りたいラーメンだけをシンプルに目指していくそうだ。

未だ、黒木さんのラーメンに対する挑戦は終わらない。私が季節に敏感でいられるのは、「くろ喜」のおかげかもしれない。

 

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