なぜ赤ちゃんと「いないいないばあ」で遊ぶことが大切なのか?

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著:Caspar Addyman(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ Lecturer in Psychology)

 笑顔と微笑みは、年齢、言語、そして文化の壁を超越しているが、赤ちゃんはそれを誰よりも良く知っている。赤ちゃんは私たちの言葉を話さない。私たちの文化も共有していないし、私たちより少なくとも1世代分は離れている。にもかかわらず、私たちは赤ちゃんと容易に笑顔を共有できる。

 あなたがいつも赤ちゃんと一緒に過ごし、清潔に暖かく守られ、十分に食事を与えられているのであれば、赤ちゃんは全力であなたの心を虜にしようと努めるだろう。赤ちゃんは上機嫌で快活でカリスマ的で社交的だ。猫が登場する愉快なYouTubeの動画と対等に張り合えるだけの生来の喜劇的な性格を備えている。しかし、認知科学の研究では、最初に心が触れ合う段階における可愛らしさの重要性は長い間認識されていたが、さらに深く掘り下げた研究者はこれまでほとんどいなかった。少なくともこれまでは。ここへ来て、私が好んで言う「赤ちゃんのための建設的な心理学」が新たに盛り上がりつつあり、私たちは生まれたときから微笑みと笑顔が大切な目的に役立つことを理解し始めている。

 スキャンの解像度の高さが表情を描くのに十分となった2000年以降、超音波で描き出された赤ちゃんの笑顔の事例報告が行われるようになった。ダーラム大学の心理学者のナジャ・ライスランド氏はこの証拠を体系的に観察し、胎児の7通りの顔の表情を識別し、赤ちゃんは泣くことと笑うことを子宮で「練習」していることを確認した。これは、親たちから送られた、生まれたての1〜2ヵ月でもう笑顔を見せてくれる赤ちゃんの笑い声も収録された映像証拠に基づいて実施した私自身の赤ちゃんの笑顔に関する広範な調査からの発見を裏付ける。最初の笑顔はお腹に溜まったガスのようなものだ、というのはただの通説である。むしろ赤ちゃんは本当の喜びを表現している。赤ちゃんの笑い声が静かで、息遣いが聞こえ、穏やかであるのは、とても幼い赤ちゃんには大人のように完成した笑い声を作り出すための筋肉の制御能力が備わっていないからである。しかし、両親は誰よりも自分の子供をよく知っているので、生後の数週間で本物の笑顔が見られたという報告があれば、私たちはそれらを信じることにしている。

 この調査では、いないいないばあが世界中で最も一般的な赤ちゃんを笑わせるための方法であることが示された。いないいないばあのやり方を次第に複雑にすることが求められるにせよ、それは赤ちゃん時代の数年間は有効である。最初の6ヶ月で、赤ちゃんはあなたが自分の傍らに戻って来ることに対し心から驚いている。 そして赤ちゃんたちはそれを予測することを学習し、またその予測が当たることを喜ぶようになる。よちよち歩きの幼児になるまでは、赤ちゃんは頻繁にあなたのご機嫌をとろうとする。この期間においては、赤ちゃんとの接し方の基本要素は同じままでいい。全てはアイコンタクトに尽きる。アイコンタクトは、全て余分なものが削ぎ落された純粋な社会的相互作用だ。私の話、聞いている? 本当? iPhoneをいじりながら片手間にいないいないばあなんかできないよ。ほら、それで良いよ。さあ、私の目を見てね。

 いないいないばあは赤ちゃんが一番欲している「大人からの注目」を与える。そして、世界中で一番分かり難く、従わざるを得ない「他人」という謎の存在を赤ちゃんはいないいないばあから学ぶ。いないいないばあが人気であるということは、赤ちゃんの笑顔の重要な特徴であると考えられるこの2つを強調している。その目的は学習を促進することであり、それは極めて社会的なことだといえる。

 パリ大学の心理学者ラナ・エッセイリー氏と彼女の同僚たちは、赤ちゃんはジョーク好きな(真剣ではない)相手からより多くを学ぶことを発見した。私はその逆もまた真であると考えている。楽しそうな赤ちゃんは、自分が興味を持っていることを自分に教えてくれるよう大人たちを促す。たとえば、泣くということは、赤ちゃんが何かを止めて欲しいと思っていること、そしてあなたがそれを止めてくれるよう望んでいる、ということは明らかだ。赤ちゃんの笑いがその逆である、ということは実はそれほど明白ではない。赤ちゃんがあなたに相手になっていて欲しい時に笑う。このようにして、赤ちゃんは色々学んでいく。

 とりわけ、赤ちゃんや幼児は、ジョークと偽りと融通の利かなさの違いを見分けようとしているようにも思われる。シェフィールド大学の心理学者エレナ・ホイッカ氏は、この能力は子供が2歳になる前に発現することを実証した。他の研究では、ホイッカはユーモアの産生の初期段階を追跡調査し、乳児が1歳の時は、親の「ジョーク」をコピーすることを示した。2歳になると、赤ちゃんは自分自身のジョークを編み出すようになった。心理学者であるポーツマス大学のバス・レディ氏とバーモント州のジョンソン州立大学のジーナ・ミロート氏は、赤ちゃんがこのようにあからさまに道化役を演じるように移行することは、他の心理を認識していることの重要な指標であると推測している。また、これは、両親にとってはジョークのネタが枯渇してしまいそうになるくらいの疲れを知らない幼児期のエネルギーとも一致する。

 逆説的に、赤ちゃんを笑わせる最善の方法は、赤ちゃんを真剣に受け入れることだ。結局のところ、人は、口に出して言うほどの面白いことが何もないときでさえ他人を笑わせる。ボルティモアにあるメリーランド大学の心理学者ロバート・プロビン氏は、日常生活における笑いの大半はジョークに関連しているのではなく、社会的な品位と集団の結束とに関連していることを示した。私自身の研究室での最近の調査も、そういった行動が早期に始まることを示唆している。私たちはグループ、ペア、または一人で面白い漫画を見ている幼児を撮影し、そばにいる別の子供がたった1人の時でもその幼児は5倍ほど多く笑っていることを発見した。幼年期においてもジョークは皆と共有された時にもっとも愉快なものになる。

 言うまでもなく、私たちは十分にこのことを長い間知っていた。チャールズ・ダーウィン氏と著名なビクトリア朝の心理学者ジェームズ・サリー氏は、2人とも人間の感情の進化に対する赤ちゃんの笑顔の役割に興味を持っていたのだ。違いは、今回は研究室に赤ちゃんを連れて来たということだけである。私たちが赤ちゃんの笑い声をどれだけ真剣に受け止めているかを示すため、私たちは、赤ちゃんが外界および赤ちゃんの周囲の人々との関係に注意を払う方法が笑顔によってどのように変わっていくかを調べる実験を計画している。私の仕事が赤ちゃんを笑わせることであることに、えもいわれぬ特権を感じるのである。

This article was originally published on AEON. Read the original article.
Translated by ka28310 via Conyac