ドリッパーの個性に応じて微調整せず、あえて同じ分量、同じスピードになるように湯を落とし、淹れ比べてみた。ペーパーフィルターは各社の純正を使用(ペーパーを販売していないトーチを除く)。

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3つ穴、1つ穴、台形、円錐型……。さまざまな種類があるコーヒードリッパー、実際のところ、どのくらい味わいに差が出るものだろうか。そこで、メジャーなドリッパーを集めて大実験! はてさて、その結果は――。

■豆、挽き方、淹れる人は同じ。ドリッパーだけ替えて飲み比べてみた!

ドリッパーが違うと、コーヒーの味はどんなふうに変わるのか、あるいはさして変わらないのか? そんな素朴な疑問から、今回の実験は始まった。

数あるドリッパーの中でも代表的なのは台形と円錐形だろう。一般的には「台形は初心者でも失敗が少なく、円錐形は自分で味の調節ができる」とされるが、コーヒーの本を見ても、店頭で相談しても、「どれを選ぶかは、好みの問題。使いながら自分好みのドリッパーを探しましょう」などと言われることが多い。何かもうひと声、選ぶための目安があればいいのに。

そこで今回、ペーパードリップ用の透明な樹脂製ドリッパーを中心に、ステンレスメッシュフィルター、ネルなど、人気があるもの、手に入れやすいものを集結。豆(種類、焙煎度合い、挽き方、鮮度、量)、湯(温度、量)、淹れる人などドリッパー以外の条件はできるだけ揃えてコーヒーを淹れ、飲み比べを行なった。用いた豆は、名店「カフェ・バッハ」(東京都台東区)のバッハブレンド。15gをやや粗めの中挽きにし、85℃の湯でおよそ180mlを抽出した。番外編として、紅茶に似た淹れ方をするフレンチプレスと、アメリカ生まれのニューフェイス、エアロプレスも試してみた。

テイスターとしてお集まりいただいたのは、コーヒーのプロ、ワインのプロ、料理のプロと、分野は違えど敏感な舌を持つ強者ばかり。さて、ドリッパーの違いがコーヒーの味にどんな影響を及ぼすのか。

結果は次ページから!

<テイスター>
●焙煎士 板原昌樹さん
清澄白河と渋谷ヒカリエShinQs1階にある「ザ クリームオブ ザ クロップ コーヒー」勤務。2013年6月から焙煎を担当。試飲も含めると、一日平均10杯はコーヒーを飲む。
●ソムリエ 木邨有希さん
「ワインショップ FUJIMARU」ディレクター。ワインの評価がしにくくなるため、休日以外はほとんどコーヒーを飲まないが、今日はワインで鍛えた舌で試飲に挑む。
●料理家 吉岡秀治さん
「オカズデザイン」で料理とデザインを担当。コーヒー愛好家。昔は深煎り派だったが最近は中深くらい。イベント時はテーマに合うコーヒーを焙煎家にブレンドしてもらう。
<コーヒーを淹れる人>
●深町泰司さん
ライター、元喫茶店主。昔からのコーヒー好きで、約4年間喫茶店を営んだことも。現在はライター業一本で活動中。今回は、経歴を生かして実験の案内人を務めてくれた。

穴の小さな「台形ドリッパー」
▼初心者でも失敗が少ない。クセがなくやさしい味わいに
穴の数や位置は違っても、穴のサイズが小さく、抽出速度は主にドリッパーにコントロールされる台形。淹れる人の技量やクセが反映されにくく、おおむね安定した味に仕上がる。

■最もポピュラー「カリタ」

▼クセがなく軽やか。スムーズで飲みやすい
「クセがない。さらりとスムーズな飲み口で、軽い印象」(板原 ※敬称略、以下同)、「穏やか。コーヒー自体の特徴が突出して出てこない。酸が残った後で甘味がくる」(木邨)、「とにかく軽やか」(吉岡)など、軽さを挙げる人が多かった。一番の特徴は、底面の小さな3つ穴。抽出されたコーヒーが溜まることなく落ちるよう穴を3つにしてある。ドリッパーの内側に刻まれた溝はペーパーが貼りつくことを防ぎ、コーヒーが3つ穴へと自然に流れるようサポートする。カリタはペーパーともに販売店が多く入手しやすい。強い個性はないが、総合的に見て初心者にも安心して使えそうだ。
[カリタ 101-D 324円 問い合わせ先/カリタ:045−440−6444]

■初心者でも安心「メリタ(コーヒーフィルター)」

▼バランスがよく、ほのかな苦味を感じる
「すごく特徴的という味ではないが、香ばしさ、苦味を感じる」(木邨)、「苦味がほんのり舌に残る」(吉岡)、「味のバランスがいい。飲み口はやや重い印象で、フレンチプレスで押さずに抽出したようなイメージ」(板原)。抽出速度が一定になる小さな1つ穴を採用し、内壁の角度、溝の深さや向きなどと併せて、理想的な時間で抽出されるように設計。穴が1つしかなくサイズも小さいため、抽出し終わるまでに少し時間がかかるが、その分蒸らし時間が長くなる。粉をセットして湯を注いだら、あとはドリッパーまかせにしてよく、初心者でも失敗しにくい。
[メリタ コーヒーフィルター SF-M 1×1 450円 問い合わせ先/メリタ・ジャパン:0120−33−0212]

■穴の位置に技あり「メリタ(アロマフィルター)」

▼甘くて華やか。奥ゆかしいコクも感じる
「香り立ちがよく、甘味と酸味が感じられる。軽やか」(吉岡)、「台形ドリッパーの中では、一番“コーヒーらしさ”を感じる。キャラメルのように甘くて華やか。果実のジューシー感もある」(木邨)、「ほんのりした甘味と奥ゆかしいコクが、他の台形より感じられた」(板原)と、全体的に好評価。小さな1つ穴が、ドリッパーの底ではなく側面にあることが特徴。しかも、穴が底面よりやや高い位置にある分、抽出前の蒸らし時間がさらに長くなり、風味がしっかり引き出される。「もしかしたら、雑味が底に溜まって抽出されにくいため、味がクリアになるのかも」(板原)という意見も。
[メリタ アロマフィルター AF-M 1×1 470円 問い合わせ先/メリタ・ジャパン:0120−33−0212]

穴の大きな「円錐形ドリッパー」
▼微調整が利くので経験者向き。重厚感のある本格的な味わいに
大きな穴が底に1つだけ。台形に比べてコーヒー粉の層が厚くなるため味がしっかり出やすいが、湯を落とすスピードを上げれば軽めに仕上げることも可能。淹れ方次第で味が変わるので面白みはあるが、腕も問われるドリッパーだ。

■ルックスもかっこいい「ハリオ」

▼すっきりキレイだがグッと主張する強さあり
「香りと酸味が際立ったキレイな仕上がり。でも強い。普段あまりコーヒーを飲まない人には辛いかも」(吉岡)、「味わいはかなりすっきり。香りはキャラメルのよう」(板原)、「台形ドリッパーより芳香を感じる。いかにもブラックコーヒーという感じで、苦味、甘味、酸味がそれぞれにグッと主張してくる。カフェイン感も強い」(木邨)と2人が力強さを指摘。特徴は、内壁の高めのリブ(溝)。大きな凸部がペーパーとドリッパーの密着を防ぎ、空気の抜け道を確保するので、湯を含んだ粉をしっかり膨らませることができる。スタイリッシュなルックスで、海外のコーヒーショップでも使用率高し。
[ハリオ V60透過ドリッパー01 クリア 432円 問い合わせ先/ハリオ:0120−398−207]

■通好み「コーノ」

▼クリアでコクがありバランスのよさは秀逸!
「バランスがよく、飲みやすい」(吉岡)、「クリアですっきり、かつコクもしっかり出ている。飲みごたえがある」(板原)、「コクはあるけれど、酸がかなり立っている印象でしつこくない。カフェインを感じる。丸みがある」(木邨)。まだ日本でペーパードリップが普及していなかった1973年に発売開始。特徴は、内壁のリブ(溝)が短いこと。リブのない部分にペーパーが貼りつくため、コーヒー液のアクが脇から漏れて下に落ちることがない。その他は至ってシンプルなつくりで、それもまた特徴の一つ。つまり、淹れる人の力量がそのまま味に出る道具でもあるのだ。ディープな愛好家にファンが多い。
[KONO 名門フィルター MDN-21 918円 問い合わせ先/珈琲サイフォン:03−3946−5481]

■可愛い実力派「トーチ(ドーナツドリッパー)」

▼しっかり力強く、厚みのある味わい
「しっかりした力強さがありつつ、エレガントな印象。マグカップでぐいぐい飲みたい飽きのこない味わい。でも、私には少し重いかも」(木邨)、「いかにもコーヒーらしい厚みのある味。カフェオレにしてもおいしそう」(吉岡)、「豆が持ついいところを、きちんと引き出している感じ」(板原)など、一同骨太な印象をコメント。特徴は、急な角度(中に入れる粉の層が厚くなる)と、内壁の段々(湯を中心へ押し戻す)。湯に触れる粉の量を少しでも多く、というシンプルな考えを具現化した形で、「サッと淹れてもきちんと出る」(深町)。美濃焼と白木を組み合わせた、温かみのあるデザインも◎。
[トーチ ドーナツドリッパー 2484円 問い合わせ先/トーチ:027−386−5460]

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<結論>
▼ドリッパーでコーヒーの味は変わる!
味の濃淡、香りの出方など、想像以上に差が出た。

▼台形の「メリタ アロマフィルター」、円錐形の「コーノ」が好評
テイスター3名全員が、好きだと名を挙げたのがこの2つのドリッパー。

▼迷ったら、見た目で選ぶのもアリ
案内人・深町さんによれば、嗜好品なのだから見た目も含めて心地よく使えることも大切。

<試飲会を終えて>
「ドリッパーでコーヒーの味が変わるのか?」。半信半疑で実験を始めてみてびっくり。こんなに個性の違いが見られるとは! テイスターの面々も「コーヒーを仕事にしていますが、同じ豆でここまで味比べをしたのは初めて」(焙煎士 板原昌樹)、「違いがよくわかり面白かった」(ソムリエ 木邨有希)、「穏やかなブレンドのときはメリタ アロマフィルター、パワフルな豆のときはコーノと、家にあるドリッパーを何となく使い分けていたけれど、こういうことだったのか」(料理家 吉岡秀治)と、納得の表情。この記事が運命のドリッパー選びの一助になれば幸いです!

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(本城 さつき 文・本城さつき 撮影・オカダタカオ テイスター:焙煎士 板原昌樹、ソムリエ 木邨有希、料理家 吉岡秀治 コーヒーを淹れる人:深町泰司)