冷房のない多くのレストランでは、風が通る日陰のテラス席から埋まっていく

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 設備の整った日本ではなかなか信じ難い状況かもしれないが、フランスでは冷房があまり普及しておらず、毎夏、30度を超える猛暑の日でも、大抵の人は鎧戸を閉めて陽光をさえぎり、扇風機をかけて水を飲んでやり過ごす。あちこちで「猛暑対処法」が話題になり、冷房が効いているスーパーの、特に冷えている肉売り場の前が、心なしか混んできたりする。

 そもそもフランスは北海道から樺太と同じくらいの緯度。冬の暖房は完備しているし、湿度が低いため乾燥には気を付けなければならないが、冷房設備はなくても十分生活していける国だった。それがここ十数年、猛暑がニュースになることが増え、2003年の熱波では、フランスだけで14,000人以上の死者を出した。先週末から今週にかけ、フランス全土で30〜35度を記録、ボルドーワインで知られるヌーヴェル・アキテーヌ地方では、最低気温も23〜24度までしか下がっていない。ロワールなど西側の地域では37度まで、パリ市内でも33〜34度まで気温が上がっているから、行政も「暑さ対策」を盛んに呼びかけている。

 だが、一般家庭にはほとんど冷房がない。街中のカフェやビストロでも、“Climatisé”(冷房しています)の表示がなければ、大抵はテラスを開け放しているだけだ。高齢者や子供など、特に注意を払わないと命にかかわる。そこで各メディアも、涙ぐましい猛暑対処法を連日掲載している。

 たとえば「換気は夜にして、昼間は窓やカーテン、よろい戸を閉め、“夜気”を保存する」こと。石造りの家や集合住宅の中は、ふだんならひんやりするほどだが、昼間の熱気が入ってくるとなかなか温度が下がらないからだ。もっとも、窓を閉め切って鎧戸を下ろした薄暗い室内で、扇風機だけに頼って1日過ごすのもなかなか厳しいものがある。冷房設備のあるオフィスに勤務していれば、少なくとも昼間は問題ないが、家にいる人々にとっては長くて暑い1日。ずっと家にいてはもたない、と「1日に2〜3時間はスーパーや図書館、市役所や映画館など、冷房のあるところで過ごす」ことも推奨されている。

 小売店で冷房のあるところはあまりないが、和食店や日本食材店などは冷房完備というところが多く、熱波が来ると日本食が増える、という在仏日本人も少なくない。ほかにも「軽くてゆったりした服を着る」「1日に何度かシャワーを浴びたり、スプレーなどで体を濡らす」という切羽詰まった感じのアドバイスも。

 そんな状況下なので、観光旅行や出張を計画している場合は、ホテル予約時に「冷房設備」の有無の確認を。リゾート地や大きなホテルなら大抵はついているが、街中の小規模なホテルではないことも多い。やむを得ず冷房なしの宿泊なら、設備のあるレストランをまとめたサイトもあるから、食事だけでも涼しくゆっくりと。