とりあえず水道水を飲んでおけば間違いない

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 加糖されているソーダなどの「炭酸飲料」と違い、水に炭酸ガスが含まれただけの「炭酸水」は、カロリーもゼロで健康的に思える。炭酸飲料からの置き換え用として、香料のみ加えてサイダーなどの風味にした炭酸水も販売されている。

ところが、「ただの水」であるはずの炭酸水でも肥満につながる可能性があるという研究結果を、2017年5月14日〜15日に「デイリー・テレグラフ」や「サン」「デイリー・ミラー」など英国の複数のタブロイド紙が相次いで報じた。

脳に働きかけて食欲を増進させる「グレリン」

英国で話題になった一連の報道を検証し、その結果を発表したのは「英国営保健サービス(NHS)」だ。国民に安全で信頼できる医療情報を提供することを目的として、健康ニュースや医療報道の検証結果をウェブサイト上で発表している。

NHSによると、炭酸水の研究を行ったのはパレスチナのビルゼット大学。論文は肥満研究の専門誌に掲載されており、メディアによるでっち上げの「フェイクニュース」ではなかった。では、気になる研究の内容はどうだろうか。

研究はまず実験用ラットを4グループにわけ、それぞれ「水道水を飲む」「ガス抜きをした炭酸水を飲む」「炭酸水を飲む」「炭酸飲料を飲む」状態にしたうえで自由に餌を食べられるようにし、6か月後の体重を比較している。

すると、炭酸飲料を飲んでいたラットの体重増加が最も多く、水道水を飲んでいたラットの体重は最も軽かった。ここまでは誰でもわかる結果だ。しかし、同じ水を飲んでいたラットを比較すると、水道水とガス抜き炭酸水を飲んでいたラットは6か月間でほとんど体重が増加していなかったのに対し、炭酸水を飲んでいたラットはなぜか体重が増加していたのだ。

詳しく調査すると、炭酸水ラットは水道水やガス抜き炭酸水ラットに比べて食べるエサの量が増加しており、脳に働きかけて食欲を増進させる「グレリン」というホルモンの血中濃度が高くなっていることがわかったという。

18〜23歳までの健康な男性20人を対象に、4種類の飲み物をそれぞれ別々の日に飲んでもらい、その都度血液検査を行ったところ、やはり炭酸水や炭酸飲料を飲んだあとは血中グレリン濃度が上昇しており、水道水の6倍、ガス抜き炭酸水の3倍に達していた。

これらの結果を受け、論文では「炭酸飲料に含まれる二酸化炭素がグレリンの放出を誘発して食物摂取の増加を招き、体重増加、肥満などを引き起こしている」と結論づけている。ただし、NHSは内容に疑問を呈しているのだ。

NHSは「研究の甘さ」指摘

NHSは論文を否定しているわけではなく、炭酸水によってグレリンの濃度が高まる可能性は認めている。ただし、いくつかの理由から「必ずしも炭酸水が肥満の原因かはわからない」としている。

まず、人とラットは同じ種ではないので、同様の効果が見られるかは人間を対象とした臨床実験をしなければわからないと指摘。ラットは限りなく人間と近い生理的反応をすると言われているが、それでも今回の研究でわかるのは「可能性」でしかない。人間でグレリン濃度の検証もしているが人数が少なすぎる。

さらに、研究では他の生活習慣が影響を与えていなかったどうかが検証されていないことも問題視している。NHSによると、炭酸飲料をよく飲む人は食生活が乱れがちで運動を嫌がる傾向にあり、そもそも太りやすい状態に陥っているのだ。

またグレリン以外にも存在する食欲を刺激するホルモンの数値には変化がなかったことも明らかになっており、本当にホルモンの影響で食事量が増えたのかという疑問も指摘されている。

とはいえ、単なる水道水が肥満にとっては最も低リスクであることはNHSも認めており、「喉の渇きを解消したいのなら、水道水を飲むことを推奨する」と結論づけている。