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●予想以上の早さで近づく自動運転社会

BMW、モービルアイ、コンチネンタルといった企業と連携し、自動運転の世界で一大勢力を築いているインテル。なぜ自動車事業にここまで熱心なのだろうか。

○自動運転開発プラットフォームを展開

インテルの日本法人は重点市場と位置づける自動車事業に焦点を当て、6月22日にプレスセミナーを開催。インテルで自動運転の事業開発を担当する野辺継男氏は同セミナーに登壇し、インテルが自動車事業に注力する背景について説明した。

同氏によると、自動運転が実現すると予想されるタイミングは、以前の見通しよりも早まっているという。なぜ自動運転社会の到来が早まるかというと、個々のクルマからのデータ収集が進む一方で、クラウド上に集まったビッグデータをディープラーニングを用いて処理し、そのデータを個々のクルマにフィードバックする技術が、過去2年で急速に現実味を帯びてきたためだそうだ。このぶんでいくと、早ければ2020年にも無人運転タクシーが実現する可能性があるというのが野辺氏の見立てだ。

クルマの頭脳を押さえたいインテル

自動運転社会が予想以上の早さで近づく中、インテルは2017年1月に自動運転向け開発プラットフォームの「Intel GO」を発表した。Intel GOでは、車載コンピューターとデータセンター(クラウド)、そしてその両者をつなぐ5Gネットワークの全てにソリューションを提供できるという。だからこそ自動車事業に熱心になっているわけだろうが、とりわけ重要と思われるのは、自動運転車において、人間でいえば脳のような役割を果たす車載コンピューターだ。

自動運転車はカメラや各種センサーで周辺環境を認識し、エンジンコントロールユニット(ECU)で走行状態を把握しつつ、データセンターと通信することでクラウド上にある3次元地図を参照する。これらの情報を統合し、クルマを正確に動かすのが車載コンピューターだ。自動運転社会では、自動車メーカーとIT企業のどちらが主導権を握るのかという議論をよく耳にするが、クルマの「頭脳」を押さえられる企業は、主導的立場の有力候補と言えるだろう。

このような背景もあり、インテルは自動運転に関する取り組みを加速している。

●世界的な合従連衡を推進、日本企業との連携は?

○有力企業が集結、トヨタとはライバル?

インテルは2016年に自動運転事業本部を立ち上げ、2017年1月にはIntel GOを発表した。3月には、単眼カメラと画像処理半導体による衝突防止システムで実績のあるイスラエルのモービルアイを約150億ドルで買収する意向だと発表。現時点で、インテル陣営にはBMW、モービルアイ、米国の自動車部品大手デルファイ(Delphi)、最近になって提携を発表した独コンチネンタルらが名を連ねる。デジタル地図を手掛ける独ヒア(HERE)にも、インテルは15%の出資を行っている。

自動運転を軸にアライアンスの構築を進めるインテルだが、日本企業との関係はどのような状況なのだろうか。

日本企業ではトヨタ自動車が米エヌビディアと提携したので、おそらくインテル陣営とはライバル関係になる。スバルとマツダはトヨタと提携関係にあるので、インテル陣営に入るのは難しそうだ。本田技研工業はグーグル系の米ウェイモと自動運転の共同研究について検討中。日産自動車はDeNAと自動運転車両を使った新たな交通サービスプラットフォームの開発で合意している。

インテル執行役員でオートモーティブ担当の大野誠氏によると、日本での取り組みについて現時点で報告することはないそうだが、積極的な活動は進めているとして今後の展開に含みを持たせていた。いずれかの自動車メーカーがインテルと組むことになるのか、あるいは別の方向性があり得るのか。自動運転社会を見据えた世界的な合従連衡も待ったなしの情勢だ。