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政府が地方創生に向けた人口減少対策をまとめた「まち・ひと・しごと創生基本方針」案では、市街地の空き店舗解消のために課税を強化する方針が検討されている。報道によると、地方の商店街の活性化のため、空き店舗に立ち退きを促して新たな出店希望者への貸し出しや売却につなげていくという。

空き店舗には、どういった税制が適用されていたのだろうか。また課税強化でどのような影響が出てくるだろうか。久乗哲税理士に聞いた。

●店舗併用住宅の固定資産税は6分の1に優遇されていた

ーーこれまでどのような税制が適用されていたのか

そもそもここでいう商店街の店というのは、1階が店舗で2階が住居という店舗併用住宅の話になります。商店街の店であったとしても、住宅部分がない店舗であれば、固定資産の減額はありません。

その前提を元に話を進めますが、店舗併用住宅の場合、固定資産税の課税上、住宅用地として認められる比率は、

(1)地上5階以上の耐火建築物の場合は、全床面積に占める居住用面積の割合が4分の1以上2分の1未満で0.5、2分の1以上4分の3未満で0.75、4分の3以上で1.0となります。また、(2)上記以外の家屋については、4分の1以上2分の1未満で0.5、2分の1以上で1.0となります。

ですから、いわゆる商店街の店舗併用住宅、すなわち1階は店舗で2階は住宅というような店舗併用住宅は、固定資産税の課税上、居住用として扱われることになります。また、住宅用地の課税標準の減額の対象となり、住宅1戸あたり200平方メートル以下では固定資産の評価額は6分の1に減額されます。

したがって、上記(2)に該当する店舗併用住宅の固定資産税は6分の1に優遇されるということになります。

●空き家課税強化のメリットは課税の公平の実現

ーー商売をやめても、やめる前と変わらないのか

商売をやめて空き家になったとしても、そもそもが居住用として扱われていますから、優遇を受けたままになるということになります。政府は、この優遇が空き家を放置することに繋がっていると問題視しているわけです。

確かに、商売を止めてもそこに住み続けるのであれば、居住用ですから、固定資産税の優遇の対象であるべきだと思います。でも、住むこともなくなった空き家に住み着いてまで、固定資産税の優遇をするべきなのかといわれれば、課税の公平の観点からは好ましくないとも思います。

空き家に対する課税強化のメリットは、課税の公平の実現だと思います。また、固定資産税収も上がるという点では行政サイドとしてはメリットだと思います。

一方で、空き家を持っている人は、固定資産税の負担が増えることが、デメリットになります。

ーーこれから空き家が減っていくことが期待されるのか

固定資産税の優遇を止めたからといって、空き家がなくなるかといわれれば、それとこれとはまた別の問題だとも思います。空き家の解決策としては、新たな所有者に売却して活用してもらうか、自らが賃貸するなどの活用をするかということになります。

しかし、商店街の空き家の所有者がそのいずれかを選択するかといわれれば、固定資産の問題だけではないとも思います。そもそもの売却を良しとするのかどうかという個人的な価値観や、賃貸にする場合の資金的なリスクなどについても検討が必要でしょうから、簡単に空き家がなくなるということはないと思います。

【取材協力税理士】

久乗 哲 (くのり・さとし)税理士

税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。

事務所名 :税理士法人りたっくす

事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/

(弁護士ドットコムニュース)