広がるAI採用、進む人事業務の自動化

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5月29日、ソフトバンクが新卒採用業務にAIを導入するというニュースが、各メディアを通じて報じられた。同社は採用試験時に新卒者が提出するエントリーシートの内容を審査し、項目ごとに合否判定を出すAIを開発しており、人力の場合に比べ約7割の時間削減へとつながるとしている。

世界に目を向けてみると、エントリーシートの確認作業のみならず、採用プロセス全般を一元化するという動きが出ている。例えば、その代表格に米サンフランシスコに拠点を置くAI企業ミャー・システムズ(Mya Systems)がある。

同社は先月、人材採用向けのクラウド型AIチャットボット「Mya」のさらなる開発に1140万米ドルを充てることを発表したばかりだ。「Mya」は求職者追跡システム(ATS)を搭載しているほか、キャリアサイトと連携しており、オンライン評価や仕事のプロとのネットワーキングも可能。現在、β版で試験的に運用中なのだが、今年末までに利用者数は200万名に達するとも言われている。

ミャー・システムズのAIチャットボット「Mya」は、すでに有名企業を中心に起用されているが、従来の人手による採用方式に比べ、採用スピードが上がったと実感している企業は多いという。フェイスブック メッセンジャーやEメール、SMSを通じて現場の人事担当者と求職者がやり取りをし、それにより採用プロセスを最大75%自動化可能としている。あくまでもAI、人間による二重チェック体制が原則である。

こうしたAIチャットボットの導入に、人事担当者は比較的肯定的だ。5月18日付で公開されたキャリア・ビルダーの研究によると、人事担当者の55%が、5年後までにAIによる人事業務の自動化が実装され得ると考えているという。ちなみに、回答者の大半はAIを脅威と捉えていない。

以上の見解は、米世論調査会社ハリス・ポール(Harris Poll)が、民間企業の人事担当者231名を対象に実施したオンライン調査(実施期間:2017年2月16日〜3月9日)を通じて得られたものである。

ただ企業人事へのAIの本格導入には懸念もある。例えば、求職者を評価する側に認知的バイアスが働き、特定の人種に対して不利な結果がもたらされ得る事態だ。過去には、マイクロソフトのAIチャットボット「Tay」が、特定の人種に対しヘイトスピーチを行い問題となったが、人種差別的思想を持った人事担当者がAIを学習させることによって、採用試験が公正に行われなくなる可能性は否定できない。

そんななか脚光を浴びているのが「ThisWay Global」だ。人間特有の認知的バイアスを回避するAIが組み込まれており、性別や人種、年齢等に関連した情報を避け、その代わり能力値に関わる情報を収集する。それらテクノロジーが導入されれば、求職者が不当な理由により採用を見送られるケースは減りそうだ。

一方、エントリーシートだけではなく、面接にまでAIやロボット(もしくは機械端末など)が使われ出すとすれば、それに対し、採用される側が違和感なく馴染めるかどうかも問題となってくる。従来のAIアシスタントやロボットと言えば、どうしてもぎこちない動きに、たどたどしい言葉遣いというイメージがある。

とはいえ、近年では外見、内面ともに人間に近づけることを目標にAIおよびロボット研究が進められている。グーグルは今年に入って自社の音声認識技術のエラー率が5%以下まで低下したことを発表しているが、AIやロボットの振る舞いが生身の人間とほぼ同等レベルに達するのも時間の問題だろう。なお、求職者の大半はアプリなどを通じたAIとの会話のやり取りに居心地の良さを感じているという調査結果もあるという。

AI人事の場合、採用するか否かの決断はスピーディーだ。採用される側は、面接結果が出るまで待たされず、ストレスから解放される。それどころか、1社に対する時間のロスが減る分、従来よりも多くの企業に応募する機会が付与される。

求職者からのAIチャットボットに対するフィードバックを定期的に収集し、適宜システムを改善するという企業人事の努力次第では、企業の人事担当者および求職者の双方がAIの受益者となることが予想される。