【福田正博 フォーメーション進化論】

 まもなく折り返しを迎えるJ1リーグは、柏レイソルが首位に立ち、勝ち点2差でセレッソ大阪が2位につけている。この2チームに関しては、開幕前からいい戦いをするだろうと予測をしていたが、正直、首位を争うまでとは思っていなかった。


15節終了時点でJ1の首位に立つ柏レイソル シーズン序盤は、両クラブとも思うように勝ち星を掴めていたわけではない。柏は第6節まで2勝4敗。C大阪は第2節で浦和に1-3で敗れ、続く第3節では同じ昇格組の札幌相手に先制しながらも引き分け。どちらも攻守が微妙に噛み合っていない印象だった。

 それが、柏は第7節の神戸戦から第14節の浦和戦まで8連勝。第15節の甲府戦は引き分けたものの、アウェーで勝ち点1を積み上げた。一方のC大阪も、第4節のサガン鳥栖戦で今季初勝利を挙げてからは、第15節まで8勝3分1敗。この1敗は柏との直接対決で喫したものだ。

 共に開幕直後とは見違えるような結果を残すことができているのは、前線からの守備を見直したことが大きい。

 柏は開幕当初、昨年からJ1で多くの経験を積んできたGK中村航輔、CBの中谷進之介と中山雄太など、柏の育成アカデミー出身の選手たちが守備を担い、攻撃はクリスティアーノ、ディエゴ・オリヴェイラに加え、仙台から新たに獲得したハモン・ロペスの3人の外国人選手が担っていた。

 3-1で勝利した開幕戦のサガン鳥栖戦こそ、この形が機能したものの、続くガンバ大阪と川崎に敗れ、開幕3戦で6失点と守備への負担の大きさを露呈した。そこで下平隆宏監督は、ハモン・ロペスの故障もあり、守備を立て直すために前線に手を加えた。

 前線のディエゴ・オリベイラとハモン・ロペスに代わって、中川寛斗と武富孝介を起用した。彼らがハードワークで守備に貢献することで、ボールを失っても攻守の切り替えが早くなり、よりいい形でボールを奪えるようになった。それによって、クリスティアーノの攻撃力や右サイドアタッカーの伊東純也のスピードが活きるようになり、攻守のバランスが改善されて結果につながっている。

 柏を見てあらためて思うのは、サッカーにおいて攻撃と守備は「表裏一体」ということ。下平監督は勝つためにハードワークできる選手を使った。「得点力の高い選手を起用すれば攻撃力が上がる」という考えは机上の空論に過ぎない。持っている攻撃力を活かすためには、基盤となる守備の構築も必要ということだ。

 また、ピッチに立つ全員がそれぞれのよさを出し、他のチームメイトが持っていない部分を補完し合う関係性も重要だ。そうしたチームになるように下平監督が下した決断が、快進撃の最大の要因になっている。

 C大阪も柏と同様に、ユン・ジョンファン監督が前線からの守備に手を打ったことが転換点になっている。ただし、ユン監督の一手は大胆だった。C大阪には清武弘嗣や柿谷曜一朗など、トップ下のポジションで実績を持つ選手がいる中、ユン監督がこのポジションに置いているのは山村和也だ。

 山村は、ロンドン五輪代表や鹿島アントラーズ時代は、主にボランチやCBを務め、加入したC大阪でも、昨シーズン任されていたのは同じようなポジション。言わば”守備の人”である山村を、攻守の要である司令塔にコンバートしたのだ。

 山村のトップ下での起用は、当初は前線からの守備を期待してのものだと思って見ていた。だが、今では”不動のトップ下”と言えるほどの存在感がある。ボールが収まり、ヘディングも競り勝てる。そして何より、得点が取れる(15節終了時点で6得点)ことが最大の強みだ。彼の攻撃面での仕事ぶりは失礼ながら予想外だった。そこに目をつけたユン監督の「選手を見る目」の高さに驚いている。

 もともとC大阪は、若く才能豊かな選手が多く、ツボにハマれば相手を圧倒するが、反面、安定感に欠ける脆さも併せ持つチームだった。そうした部分が、山村の起用後はどんな試合展開でもなくなり、粘り強く戦うチームに変貌していった。その結果、安定して勝ち点を積み重ねられている。

 ただ、柏とC大阪がこのまま突っ走るためには、まだ乗り越えなくてはならない障壁がある。長いシーズンを戦っていく中では、必ず好不調の波があり、首位争いの疲労感やプレッシャー、負けることへの恐怖心も生まれる。

 前半戦は、ハードワークをしてツキも呼び込みながら勝ち続け、チームに好循環が生まれた。だが、同様の戦いをしても結果が伴わなくなったり、ミスを恐れてチャレンジできなくなったりすると、そこからリズムを崩すことも十分に考えられる。中村航輔(柏)、キム・ジンヒョン(C大阪)と、どちらもGKの調子がいいため大崩れはしないと思うが、苦しい状況になった時に、いかにチームを立て直せるかがポイントになるだろう。

 そこで柏のカギを握るのが、中盤の要であるキャプテンの大谷秀和だ。柏の選手たちはアカデミー育ちの若手が多く、コンビネーションに優れる反面、経験が不足しているため、うまくいかなくなると修正しきれない可能性もある。そうしたときに、アカデミー育ちで百戦錬磨の32歳がいることの意義は大きい。また、ベンチにも細貝萌や栗澤僚一という経験豊富なベテランが控えているのも頼もしい点だ。

 さらに、現状ではベンチを温めている外国人選手を、下平監督がどうマネジメントするかもポイントだ。チームがつまずいた時に彼らの起用が起爆剤になればいいが、出番に飢えていた外国人選手が試合に出ると、好き勝手なプレーをしてチームがバランスを崩す危険もある。ディエゴ・オリベイラはいい選手だが、クリスティアーノと共存させると守備がうまくいかなくなる印象が強い。それだけに、下平監督が攻守のバランスを取りながら、彼らをどう起用するかに注目したい。

 C大阪は、苦しくなった時にユン監督がどんな手を打つのかが興味深い。清武弘嗣、杉本健勇、山口蛍、柿谷曜一朗、丸橋祐介など、才能豊かな選手たちをまとめあげ、3年ぶりにJ1を戦うチームを、就任1年目にして首位争いをするまでにした彼には、まだまだ多くの引き出しがあるはずだ。

 柏、C大阪に加え、3位につけるG大阪にも言えることだが、自クラブの育成アカデミーで育った選手たちが躍動するクラブが、今年は上位にいる。育成システムはJリーグ創設当初からの理念のひとつで、G大阪は昔からJ1での成績につながっていたが、それが他のクラブでも結果に結びつくようになってきた。

 柏は、2010年にJ1で優勝した頃は、育成アカデミーとトップチームで志向するサッカースタイルが異なり、一貫したクラブの体制ではなかった。だが、その後に舵を切り直し、アカデミー育ちの選手がトップチームで力を発揮しやすい環境に変えたことで、選手たちはJ1で存分に実力を発揮できるようになった。

 もちろん、サッカーはクラブの数だけスタイルがあるべきで、浦和のように、お金をかけて外部から有力選手を数多く獲得するチームもあっていい。ただ、「リーグ発足時のような改革を」とJリーグが旗を振る中で、育成重視型のクラブが優勝争いに加わっているのは嬉しいことだ。彼らが後半戦にどんな戦いを見せるのか、とても楽しみにしている。

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