東南アジアの拠点化狙うイスラム国、高まる危機感 フィリピンの戦闘は激化

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 フィリピンで現在、フィリピン軍とイスラム国(IS)系武装勢力の戦闘が繰り広げられている。戦闘での双方の兵士と民間人の死者は合わせて300人を超えるとされ、戦闘は今後さらに激化すると見られている。同時に、ISの東南アジアへの影響力拡大に対して懸念の声が高まっている。

◆タイムリミットは今週末?
 ロイターによると、フィリピン空海軍は、今週末までの制圧を目指し、20日早朝には武装勢力への反撃を開始した。戦地となっている商業地帯を三方向から囲い込み、湖に向かって追い詰める作戦のようだ。

 マラウイ市の戦闘は5週目に入るが、なぜ今週末までの制圧に躍起なのだろうか? 答えはラマダンにある。ロイターは今週末にイスラム教のラマダン終了を祝う「イード」があると指摘する。ラマダン期間中は宗教上の理由で戦闘が禁じられているため、その終了後に新たな武装勢力が雪崩れ込むと予想される。その前に沈静化したい思惑だ。

 戦闘の起きた経緯は、現地メディア『Rappler』によると、先月23日、軍がフィリピンのイスラム主義組織「アブ・サヤフ」のリーダーであるイスニロン・ハピロン氏の捕獲作戦を敢行、これに失敗したことから戦闘が始まった。戦闘は4方面で展開しているが、政府側がテロ集団の制圧に動き、集団同士を孤立させつつあるという。

◆フィリピンがテロ集団の中枢に?
 フィリピンでのISとの戦闘は、今回に限ったことではなく、同国がISの活動拠点になり得ると懸念されている。APによると、ISは昨年発表したビデオの中で、シリアに行けない有志はフィリピンに集えと呼びかけている。今回の戦闘にも、近隣諸国の外国人500人ほどが参加しているという。

 USAトゥデイも同様の懸念を示している。ISがイラクとシリアで形勢不利になったことから、東南アジアで拠点構築を目論んでいると見る。インドネシアやマレーシアなど、ムスリムが多数派を占める国も近く、地の利があるとの分析だ。記事によるとISは2016年、フィリピンのミンダナオ島にイスラム国を樹立すると表明している。

◆警戒する東南アジア周辺国
 こうした事態に周辺諸国は危機感を募らせる。インドネシア国防相は、ジャカルタのバスターミナル爆破事件を受け、「この地域におけるテロの脅威は、これまでにないほどの緊急事態に発展した」(USAトゥデイ、6月10日付)と述べ、強く警戒している。国際暴力・テロリズム研究センター長は「(アジアの周辺国は)都市の占拠は中東のどこかで起こる話だと思っていた。アジアで起こるとは考えていなかった」(同上)と述べている。

 シンガポールも脅威を感じているという。APによると、IS関連組織のジェマ・イスラミアが過去にシンガポール周辺で複数の大規模なテロを実行したことから警戒を強めているという。

 フィリピンでのテロとの戦いは一朝一夕に解決するものではなさそうだが、アジアの安全保障のためにも事態の好転を願いたい。週末までに制圧できるかが一つの焦点となりそうだ。