核融合炉実用化のカギとなるか。「逃走電子」の制御方法発見で核融合反応の安定化が可能に

物理学誌Physical Review Lettersに、核融合炉の安定的な運転を可能とする「逃走電子」制御についての論文が掲載されました。核融合炉は、恒星が光を発するのと同じ原理を利用して大量のエネルギーを生みだします。エネルギー源は海水に含まれる水素などであるため、枯渇の心配が殆どないのもメリットとされます。

核融合炉は軽い元素の原子を衝突させて原子核を融合させ、そのときに生じるエネルギーを発電などに利用します。炉の内部は1億5000万℃にもなり、非常に高い温度と圧力が発生します。この状態では水素分子の原子と電子が分離したプラズマ状態となり、原子核も電子もそれぞれが自由に動き回れるようになります。そして原子核同士が高速衝突することで新たな物質となる際に、熱や光、電磁波などの非常に高いエネルギーを放出します。

しかし、この反応が続くとプラズマ内の高い電界によって電子が活発化しすぎて「逃走電子(Runaway Electron)」と呼ばれる状態になってしまい、安定的に反応を継続させることが難しくなります。

論文では、水素やヘリウムとなどの軽い元素とは正反対のネオンやアルゴンといった質量の大きいイオンを持つ元素を炉内に噴射することで電子を減速させ、反応を制御できることがわかったとしています。ざっとした説明だけでは大した成果に聞こえないかもしれないものの、研究チームの一人でスウェーデン・チャルマース工科大学のLinnea Hesslow氏は「活発化する電子を効果的に減速させられるようになれば、実用的な核融合炉の実現に大きな一歩となる」と述べました。

研究が始まってから60年もの歳月が流れても、いまだ核融合は夢のエネルギーのままです。しかし、今回の成果は将来の大規模な実験に不可欠な技術と考えられており、Hesslow氏はエネルギー問題の解決にも役立つ核融合炉の研究にもっと多くのリソースを、と呼びかけています。
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