JRの特急や普通列車などに連結されている「グリーン車」は、普通車よりも豪華な設備やサービスが提供される特別車両ですが、そもそも「グリーン」は何に由来するのでしょうか。

緑はやはり特別の証だった!

 新幹線や在来線の特急列車のほか、一部の普通列車に連結されているJR「グリーン車」は、別途「グリーン料金」が必要になる特別車両です。普通車と比べて1席あたりの専有面積が広かったり、背もたれを深くリクライニングできたり、普通列車ではこの車両だけ車内販売が行われたりと、ワンランク上の設備とサービスが提供されます。


四つ葉のクローバーマークが掲示されるグリーン車(画像:写真AC)。

 なぜこのような特別車両が「グリーン車」と呼ばれるのでしょうか。鉄道博物館(さいたま市)に聞きました。

――グリーン車の由来は何でしょうか?

 グリーン車は1969(昭和44)年5月の運賃改定で、それまでの「一等車」の呼称が置き換わる形で登場しましたが、名前の由来についてはふたつの説があります。ひとつは、一等車の車体側面に引いてあった淡い緑色の帯からという説です。もうひとつは、1958(昭和33)年から急行列車の「特別二等車」で指定席と自由席を区別するために、指定席のヘッドレストにかぶせられた淡い青緑色のカバーからという説です。

 これらの色が現在のグリーン車マークの色と同じかどうかは定かではありませんが、1969(昭和44)年以前から、国鉄内部で特別車両のことを「グリーン車」と仮称していたようです。

――クローバーマークの由来は何でしょうか?

 四つ葉のクローバーが「幸運の印」とされていることから、利用する人に幸運が訪れてほしいという関係者一同の気持ちが表現されたもの、といわれています。

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 また、JR東海による東海道新幹線50周年を記念した特設ウェブサイトでは、グリーンの由来として一等車側面の帯色という説のほか、一等車のきっぷが緑色だったこと、という説も紹介しています。いずれにしてもグリーンはやはり、特別な車両や座席を表す色として使われていたようです。

「グリーン車」誕生の経緯とは?

 前述のように、「グリーン車」は別途「グリーン料金」が必要になる特別車両ですが、この「グリーン料金」は「利用料」という性質のものです。

 かつて国鉄では、客席(客室)の等級(グレード)によって「運賃」そのものが異なっていました。1969(昭和44)年5月の運賃改定でこの等級制を廃し、客席のグレードを問わず運賃は一律になりました。

 JR東海の元社長である須田 寛さんの著書『東海道新幹線』(JTBパブリッシング)によると、この等級制の廃止により、「グリーン車」の「利用料」として「グリーン料金」が新たに設定されたといいます。つまりグレードの高い「グリーン車」は運賃に「グリーン料金」をプラスして利用するという、現在の形になったのです。またクローバーのマークは、数々の国鉄特急のヘッドマークデザインを担当した黒岩保美(やすよし)さんによるものだそうです。

 現在では、JR九州の在来線特急における「DXグリーン」や、東北・北海道・北陸新幹線の「グランクラス」など、グリーン車よりもさらに上質の設備やサービスを提供する列車も登場しています。首都圏では東海道本線や宇都宮線(東北本線)をはじめ、一部のいわゆる通勤列車にもグリーン車が連結されています。JR東日本によると今後、中央本線や青梅線などを走る列車にも導入予定とのことです。

【写真】グリーン車よりさらに上、「グランクラス」の車内


北陸新幹線「かがやき」の「グランクラス」。シートは電動リクライニングつき(画像:写真AC)。