フランスの大女優が来日!

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 フランス映画祭2017の団長を務める女優のカトリーヌ・ドヌーブが来日し、映画祭の関連企画で、東京・映画美学校で6月21日に行われたマスタークラスの講師を務め、司会の筒井武文監督や観客の質問に答えた。

 代表作のひとつとして知られるジャック・ドゥミ監督の「シェルブールの雨傘」(1964)について、「完璧に美しい映画ですね」とふられると「ええ、私もそう思います。大好きな映画です」とにっこり。「あのときの撮影は困難なものでした。予算も限られており、夜の撮影が多く、クレーンがあまりないなど技術的な手段が圧倒的に欠けていました。しかし、ドゥミは移動撮影など複雑なものが好きでした。それでもドゥミは、困難を上手く避けて通りました。特に思い出深いのが、相手役のニーノ・カステルヌオーボと道を歩くシーン。私たちは飛んでいるかのように見えなければならないのですが、私たちを動かすプラットフォームがなかったので、木の箱を使って、おもちゃの車をひっぱるようにして撮影しました。その成果を映画で見ると、技術的に限られていたのにあんなに素晴らしいものができたと感心します」と、手作りの装置を用いての撮影を振り返る。

 さらに、「予算が限られていても、ドゥミは本質的なものは何ひとつ犠牲にしなかったと思います。衣装などはあきらめた部分があったかもしれませんが、撮影期間、移動撮影や装置などの技術的な部分であきらめることはせず、他の部分で節約をしていました。今では、当時のような予算であんな作品は作れないでしょう」「彼の世界を理解するには、何本も作品を見ないとだめです。外側は喜びに満ちているが、内部はメランコリックで悲しいもの。それを見せたいという欲求が彼の作品では明らかだと思います。そしてすべてを美しさ、楽しさで覆って見せるのです」とドゥミ監督の映画哲学を語った。

 またドゥミ監督作で、実姉フランソワーズ・ドルレアックと共演した「ロシュフォールの恋人たち」(1965)については「困難なものでした。夏の撮影で、石造りのロシュフォール広場はものすごい暑さでした。ダンサーにとっては厳しいものだったでしょう。けれども、この経験は驚くべきもの。ミシェル・ルグランの音楽にドゥミが書いたセリフ。それらがひとつになると、私たちのすべての心が奪われ、どこか別の世界に運ばれていきます。ドゥミの世界に支えられました」と述懐。そして「見かけはとてもソフトな男性ですが、実に欲求の高い人でした」とドゥミ監督の人となりを明かす。

 姉のドルレアックについては「私たちの実人生を知らない人たちは、外見だけ見るととても対照的であると思うかもしれません。外見だけ見ると、私は穏やかで静かで内気、姉は断固とした決意をもち、突飛で、驚くべき存在と。でも、実際には違います。彼女は見かけほど自信を持っておらず、私も内気ではあるが見かけほど控えめではありません。一番の共通点はふたりとも早口だということ。ユーモアのセンス、気の利いた受け答えができます。1歳半の年の差なので、私たちはいつも双子のように相互補完的でした」と夭逝した姉との思い出を振り返った。

 そのほか、ロバート・アルドリッチ、実現しなかったアルフレッド・ヒッチコックとの作品、ルイス・ブニュエル、マノエル・デ・オリベイラとの撮影を語った。

 また、観客に女優として必要な資質などを問われ、「俳優の撮影の準備は、スポーツ選手と同じように肉体的なエネルギーが必要」「我慢強くあること。撮影現場にいる1日の中でカメラの前で演技する時間は短いものなので、カメラの前でしっかり強度を出すこと」とアドバイスしていた。

 ドヌーブとカトリーヌ・フロとの共演作「ルージュの手紙」がオープニング上映される「フランス映画祭2017」は6月22日から25日まで、東京・有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇で開催。