横浜銀行が導入した「Airリザーブ」の画面イメージ

写真拡大

 スマートフォンの普及などを背景に、あらゆる業界でインターネット経由の取引が拡大している。それと同時に、リアル店舗の役割をどのように定義し、いかに顧客の来店を促進するかがあらためて問われている。
 小売りの世界では「オムニチャネル」「O2O(Online to Offline)」といったキーワードに注目が集まっているが、リアル店舗を通じた新たな価値の提供という問題意識は金融業界も同じ。その課題に対するひとつの答えとして、横浜銀行は地方銀行としては例の少ない「土日営業」を一部支店でスタートした。平日日中には時間をつりにくい現役世代に、より気軽に店舗へ足を運んでもらうためだ。

 また、スマホ世代の顧客に高い利便性を提供するため、資産運用や住宅ローンの相談をネット上で簡単に予約できるサービスを一部支店で導入。来店した顧客をロビーで待たせることなく、スピーディに案内することが可能になった。サービスを企画した横浜銀行 総合企画部の和田理子調査役と、予約管理システム「Airリザーブ」を提供したリクルートライフスタイル ネットビジネス本部 Air事業ユニットの弓場央嗣プロデューサーに、来店促進と店舗業務の効率化をどのように実現したかを聞いた。

●「平日15時まで」では現役世代を呼び込めない



 インターネットバンキングがほとんどの銀行で標準的なサービスとなり、残高照会や振り込みはもちろん、今や投資信託の購入や外貨預金、カードローンなど、さまざまな取引をスマホやPC上の操作だけで完結できる。その分、店舗を訪問する顧客は減少傾向にある。業務効率化と顧客の利便性向上は果たせたが、金融商品の提案など、対面取引では行ってきた営業活動のチャンスが失われつつある。地域に根ざしたリテール業務を重視する地方銀行としては、顧客との接点を希薄化させるわけにはいかなかった。

 特に、これから資産を形成していく30〜40代をどう取り込んでいくかは大きな課題だ。この世代は出産や住宅購入などのライフイベントがあり、銀行の顧客としては有望な層だ。横浜銀行の和田調査役は「これまで、資産運用のご相談などにお越しいだたくのは、比較的時間に余裕のあるシニア層の方々が中心でした。しかし、スマホでの取引が増える中、どうしたら来店されるお客様を増やせるかを考えると、より若い資産形成層の方々へのアプローチを強化することが必須でした」と説明する。

しかし、平日の15時までしか開いていない銀行の窓口に、仕事が最も忙しい世代を誘引するのは難しい。そこで横浜銀行では昨年12月、主要駅からのアクセスがよい上大岡支店と町田支店の2店舗で、土曜日・日曜日の10時から17時まで営業を行う「はまぎん 土日BANK」を開始。普通預金の口座開設や住所変更といった諸手続きに加え、資産運用・保険・住宅ローンの個別相談を受け付け(住宅ローン相談は日曜のみ)、現役世代への営業体制を充実させた。

●ウェブでの即時予約が来店ハードルを下げる



 さらに和田調査役は「時間のない方々にお越しいただく以上、ただ店舗を開けるだけではなく、待ち時間なしでスムーズにご案内できることも必要だと考えました」と話す。「休みの日に銀行が開いていたから入ったはいいが、長時間待たされた」といった体験をした顧客は、また店舗へ足を運ぼうとは思わないだろう。「銀行は『敷居が高い』と感じていらっしゃる方にも、気軽に来ていただけるよう、『はまぎん 土日BANK』の実施にあたっては、ご来店のストレスを少しでも小さくすることを重視しました」(和田調査役)。

 そこで導入したのが、リクルートライフスタイルが提供する予約管理システム「Airリザーブ」だった。横浜銀行では複数のネット予約システムを比較検討したが、導入の決め手となった最大の評価ポイントはユーザビリティだ。

 今回の予約サービスは顧客が自分のスマホやPCを通じて利用するものなので、銀行の内部で使う業務システムとは異なり、初めてアクセスする顧客でも操作説明なしで簡単に使えるものでなければならなかった。Airリザーブでは、ウェブ上に表示されるスケジュール表形式の画面から予約したい時間帯を選び、連絡先を入力するだけで予約が完了するので、直感的な操作が可能。また、コールセンターに連絡してみないと空き状況がわからない電話予約と異なり、顧客はウェブサイトを開けばいつでも予約可能な時間帯を知り、即座に予約可能なので、問い合わせがあったが都合が合わず来店チャンスを逃すといったことがない。

 Airリザーブの導入は顧客の利便性向上だけでなく、業務の効率化にも貢献しているという。予約画面には必須項目の連絡先等に加え、来店目的を記入する自由記述欄を設けている。この欄は空白でも予約可能だが、「保険」「住宅ローン」などの目的を一言でも書いてもらえれば、店舗側はあらかじめその分野に詳しい営業担当者を割り当てることができる。当日の来店後に一通り話を聞いてから「その商品でしたら別の者が担当ですので……」と交代するよりもスマートだし、詳しい相談内容を書いてもらえれば、最適な商品を提案するための事前準備も可能だ。

●サービス導入で顧客と社内の両方にメリット



 さらに、上大岡・町田の2支店では、電話などネット以外の経路で受け付けた予約も、Airリザーブを活用して管理することとした。窓口担当者との会話や、コールセンターからのアウトバウンドセールスなど、来店予約が発生するシーンはさまざまだ。それらの予約を各部門が別々の台帳で管理するのは非効率的だし、場合によっては営業担当者のスケジューリングミスにもつながりかねないが、Airリザーブの活用で予約に関係するバックエンド業務も大幅に省力化が見込める。新たな業務システムを導入すると、システムの使用方法を従業員が覚える必要があるため、現場の反発や一時的な業務の停滞を招くこともままあるが、Airリザーブに関しては最低限の説明だけで導入初日から現場に浸透し、トラブルも発生していないという。

 リクルートライフスタイルの弓場央嗣プロデューサーによると、「Airリザーブはさまざまな業種に対応できるよう、汎用的な機能の組み合わせで構成されています。例えば、ユーザーの反応をみながら予約条件を変更するといったこともリアルタイムで可能です」といい、現場の声を反映して顧客サービスを継続的に改善できるメリットを強調する。

 和田調査役は「これまで銀行の情報システムというと、「銀行都合」でつくられ、お客さま目線での使いやすさや柔軟性などが犠牲になる部分もありましたが、今回はスピード感も大切にしました。自行専用の予約システムを一から開発していたら、企画からサービスインまで1年単位のプロジェクトになっていたかもしれませんし、お客様にここまでの使いやすさはご提供できていなかったと思います」と話し、自前主義にこだわらず、外部の知見を取り入れたことでスピーディなサービスの提供が可能になったと説明。情報セキュリティに関しても、仕様書上でのチェックだけではなく、横浜銀行とリクルートライフスタイルの両社チームが顔を合わせて議論し、さまざまな観点から検証した結果、セキュリティが十分確保できる水準であることが確認できたので、問題なく導入できたという。

 ビジネスのデジタル化が進行すればするほど、リアルの顧客接点ではこれまで以上に顧客のニーズに寄り添ったきめの細かいサービス提供が求められる。同時に、労働時間の短縮や、生き生きと働ける職場環境づくりは社会的な要請となっており、サービス品質向上を従業員個々人の努力に依存する時代ではない。Airリザーブによる予約管理の改善は、店舗業務全体の中ではごく一部の要素かもしれないが、ITを使った現代的なサービス向上のモデルケースとして、今後の店舗運営のヒントになる事例と言えるだろう。(BCN・日高 彰)