来季の磐田加入が内定している筑波大の中野。仙台戦では手応えと課題を感じ取った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦が6月21日、全国各地で行なわれた。ユアテックスタジアム仙台ではJ1ベガルタ仙台と茨城県代表の筑波大が対戦し、筑波大が3-2で仙台に勝利し、ジャイアントキリングを達成した。
 
 試合開始早々の6分、中盤でボールを受けた筑波大MF三笘薫が力強いドリブルで仙台陣内に切れ込む。「梁(勇基)選手を抜いた時スペースがあって前に運ぼうと思い、意外と相手がプレッシャーに来なくて、(北川)柊斗君がおとりになってくれて前のスペースが空いたのでうまく前に行けました」と振り返った三笘は仙台の選手の間をスルスルと駆け抜けてゴール前へ。豪快に右足を振り抜いたシュートはクロスバーに当たってゴールネットを揺らし、先制点となった。
 
 しかし、昨季も天皇杯2回戦でJ3盛岡相手に5失点を喫し、惨敗した仙台も黙ってはいなかった。31分、筑波大出身で今シーズン川崎フロンターレから期限付き移籍中のMF中野嘉大が佐々木匠とのワンツーでゴール左に抜け出し、左足でシュートを決めて同点に追いついた。さらに後半に入って50分、DF石川直樹からパスを受けた中野が放ったクロスボールがそのままゴールへ吸い込まれた。
 
 筑波大OBの2ゴールで、試合は決まったかに見えたが、仙台に傾いた流れを引き戻したのは、筑波大のもうひとりの中野だった。
 
 65分、CKのチャンスを得た筑波大は、MF高嶺朋樹からのキックをファーサイドにいたDF小笠原佳祐がヘディングで競り勝ってゴール前へ折り返す。
「自分がゴールを決めるという強い気持ちを持っていました。良いボールが上がって小笠原が競り勝つのは予想していました。予測した所に落としてくれたので、あの瞬間良い判断ができたと思います」と振り返ったのは、来季ジュビロ磐田加入内定のFW中野誠也だ。小笠原が折り返したボールをヘディングでゴールに押し込み、同点に追いついた。
 
 これで流れは一気に筑波大へ。73分仙台守備陣の連係ミスから途中出場のMF西澤健太がボールを奪って、一気に前へ。ゴール前に飛び込んでいたのは三笘。西澤のクロスからワンタッチで右足シュートを決めて逆転に成功。そのまま筑波大は試合終了まで身体を張って仙台の反撃を抑え込んだ。
 
 試合の流れを変える活躍を見せた中野は、すでに磐田への加入が内定していることもあり、J1クラブと戦えるこの試合への意気込みは強かった。
「J1、J2のチームにどれだけ勝負できるか、自分のなかで常に問いながらやっていました。今日は結果につながって良かったです」
 
 来季を見据え、J1クラブ相手でも活躍することを目標にしてきた中野だけに、「この1対1に勝てばゴールという場面は何度も作れたのですが、そこであと一歩の力強さやテクニックという面で冴えませんでした。一個キレが上がれば抜けた場面もありましたし、守備に回る時間が多くて力が発揮できませんでしたが、そういう状況でも爆発的な力を出したいです。自分はJ1にチャレンジしていくので、早く適応していかなければなりませんが、こうやって実際に公式戦をやって課題が分かったので良い経験になりました」と勝利したにもかかわらず多くの課題を口にした。
 
 筑波大の小井土正亮監督の「試合後は苦笑いしていました。彼にとっては課題が見つかった試合だったと思います。もっとできる選手ですし、彼自身それを望んでいるので、どちらかと言うと、まだまだだったと感じた試合だったと思います」というやや厳しいコメントからも、高みを目指す中野への期待の大きさが感じられた。
 
 3回戦はJ2福岡との対戦が決まった。
「こうやって天皇杯でプロのチームと試合ができるのは本当に幸せなことだと思いますし、大学チームにとってはこの舞台しかないので、もう1回引き締め直して次の試合も勝っていきたいと思います」
 
 来季飛躍するための大切な戦い、と天皇杯を位置づける中野が再び輝きを見せるか。大学サッカーファンだけでなく、磐田サポーターにとっても注目の試合となるだろう。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)