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「フットボールは利発さが求められるスポーツである。相手よりも迅速に、正しい位置を取れるか。その予測も含め、ポジション的優位がモノを言う」

 そう語るスペインの指導者、ミケル・エチャリは、際だったスカウティング能力で高く評価されている。レアル・ソシエダで戦略担当スカウトをしていたとき、チームはチャンピオンズリーグに出場。その目利きは「千里眼」とも言われる。

 ハリルJAPANを継続的にスカウティングしてきたエチャリは、6月のイラク戦(と、直前のシリア戦)の選手たちをどう見たのか。ちなみにテストマッチのシリア戦については次のように述べている。


大迫勇也のゴールで先制、幸先のいいスタートを切った日本だったが...「シリア戦の4-3-3は戦術的な欠陥があった。まず、中盤3人の距離が近すぎた。サイドFWは下がってボールを受けに来ず、サイドバックもフォローが少なかった。結果、システム異常を生じさせていた。今シーズンのバルサも、イニエスタがいないだけで、このシステムの運用に戸惑うことになったが、全体の連係がないと難しい。

 ただ、日本は後半途中から本田(圭佑)がインサイドハーフに入り、状況は好転した。同じく途中出場の乾(貴士)も2度、3度と左サイドを破って、可能性を示している。この2人によって幅も深みも出て、周りにアドバンテージを与えた」

 2試合のシステムを見極めた上で、エチャリが詳細に選手評を語った。

GK
川島永嗣
UAE戦、タイ戦は落ち着いたセービングを見せていたのだが……。イラク戦、ミスはたったひとつだったが、重大だった。吉田麻也との呼吸が合わず、一瞬、エリア内のボールを見合ってしまい、相手につつかれ、それを押し込まれた。吉田がクリアする選択肢はあったが、川島も自分の判断でボールをキャッチにいっており、判断ミスと言える。

DF
酒井宏樹
3月のUAE戦では深さと、幅を与え、先制点を演出。今回のイラク戦も、右サイドで本田がタメを作り、酒井が縦を走り、小気味よくボールを引き出していた。テンポのあるコンビネーションで、数多くの好機を演出。チーム全体に低調なプレーが多かった中、及第点が与えられる出来だろう。ただし、終盤、負傷により交代した。

長友佑都
システム上、高い位置を取る必要性があるが、後ろに引っ張られた。サイドFWとの連係をもっと作り出す必要がある。シリア戦もショートコーナーの反応に遅れており、かつての長友ではなかった。ただ、ここぞというときの技術は高く、イラク戦では後半に攻め上がって、原口元気に戻したマイナスパスでチャンスのお膳立てをした。

吉田麻也
川島と同じく、ひとつのミスの代償が大きすぎる。こうした失点のリスクを回避できないと、高く評価するのは難しい。経験豊富な選手で、攻撃のセットプレーでは武器になるが、守備ではターンに問題を抱える。

昌子源
森重真人に代わって抜擢されたようだが、シリア戦の失点はイージーなミスだった。クロスに対し、背後を取られて被(かぶ)っている。ただ、シリア戦よりもイラク戦のほうがパフォーマンスは上がっており、改善している点はセンターバックとして魅力だ。

守備的MF
遠藤航
長谷部誠の代役か。しかし、ライン全体をコントロールできなかった。失点シーンは飛び込んでかわされている。

井手口陽介
ディフェンシブな選手のようだが、イラク戦は存在を感じなかった。もっとも、交代で入った今野泰幸も状況を改善できていない。

倉田秋
シリア戦では序盤のうちに香川真司に代わって出場。何本か高い技術の好パスを見せたが、中盤でイニシアチブを取れなかった。シリア戦の失点シーンでは、遅れて入って、入れ替わられてフリーでクロスを打ち込まれた。イラク戦は後半、途中出場したが、流れを変えられなかった。

今野泰幸
シリア戦はこの日の日本の最高のコンビネーションをゴールで結実させた。しかし、インサイドハーフとしては連係を生み出せず、ボールを運ぶのに四苦八苦。イラク戦も目立った働きはない。

攻撃的MF
本田圭佑
右サイドバック、酒井宏樹と目覚ましい連係を作った。イラク戦の先制点となるゴールで蹴ったボールも質は高い。ただ、シュート機会では、勘が鈍っているのか、凡ミスだった。シリア戦は久保裕也と交代で入って、インサイドハーフとしてチームを好転させている。戦術的能力は高い。

久保裕也
ダイアゴナルランに優れたストライカーで、UAE戦、タイ戦は効果的だった。しかし、イラク戦は疲労か、消耗か、著しく精彩を欠いた。あるいは慣れない左サイドに入った影響なのかもしれない。

原口元気
大迫勇也とのコンビが合うのか、シリア戦は左FWとして大迫と起点になり、長友→今野のゴールをアシスト。イラク戦もトップ下として、序盤は大迫との連係でゴール前に迫っている。走力に長け、ダイアゴナルランも惜しまない。ただ、イラク戦の後半は足が鈍り、長友からのクロスでコントロールをミスしていた。トップ下としての適性には疑問がある。

FW
大迫勇也
シリア戦の得点シーンはポストワークで起点に。イラク戦も原口との相性のよさを見せた。先制点はボールの軌道を予期し、適切なインパクト。さらに前半には独力であわやPKという機会を作った。一方、単純なロングボールの空中戦ではほぼ敗れており、際どいプレーをものにするインテンシティの低さも露呈した。

 チームとして戦術的に機能しなかった場合、必然的に選手のプレーの質は上がらない。イラク戦は厳しい内容だったと言えるだろう。長谷部、香川の欠場による「痛み」が伝わってくる。今後の活躍に期待を込めたい。

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