専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第110回

 以前、お金持ちがフェラーリなどの高級車を買って気分を一新し、ライフスタイルを変えようとする外国映画がありました。結局、そんな買い物をしたところで、自分の根本部分の”渇き”みたいなものは満たされず、どうしたものかと、途方に暮れるのでした。

 とどのつまり、車を買い替えることは、彼女、もしくは奥さんを替える願望に他ならないのです。そこは現実的にうまくいかず、代償行為としての車購入だったのです。

 これが日本だったら、フェラーリを買うお金があれば、キャバクラで3年ぐらいモテまくりですよ……って、解釈がだいぶ違うでしょ。アメリカにはそもそもキャバクラはないし。

 実を言うと、我々のささやかな浮気の代償行為は、ゴルフなのです。穴に入れる行為は似ています……って、なんとお下品な冗談ですこと。

 さて、ゴルフ関連で浮気の代償行為なるものは何か?

 それは、なんぼ安くても会員権を購入して、ゴルフ倶楽部のメンバーになることです。もちろん、友の会でも構いません。安いメンバーシップのコースだと、10万円程度で買えますから。それで愛人を持てたと思ったら、うれしいじゃないですか。

 じゃあ、具体的にメンバーになって、何をすればいいのか?

 それは”男の隠れ家”的社交です。

 私も2度ほどメンバーになりましたが、”隠れ家”に遊びに行くのは、実に気持ちのいいものです。馴染みになったら、支配人に声をかけてもらって、まずは軽く「おはよう」と挨拶。「昨日の『やすらぎの郷(※)』見た? 川奈のゴルフコースが映ってたね」なんて世間話をかわします。
※倉本聰原案・脚本のシニア向けドラマ。テレビ朝日系列で放送中。

 そうして、ラウンド前にゆとりを持って食堂に行けば、若くて可愛いウエートレスがモーニングコーヒーを運んできてくれます。別に何が起こるわけでもありませんが、日頃、カミさんにせっつかれながら、トーストをインスタントコーヒーで流しこんでいる日常と比べれば、雲泥の差でしょ?

“本拠地”を置くということは、ぶらりと出かけて、どこぞに寄り道してもいい訳が立ちます。マイコースでは、チェックインして「今日は調子が悪いから、練習だけ」と言って、午前中で帰る手もあります。名門コースメンバーのおじいちゃんは、よくこうやってマイコースを練習場として使っています。

 さあ、余った時間は何なりと好きなように。今流行りの出会い系バーに行って、貧困の調査をするのもやぶさかではありません。

 ただ、実際のところ、安くても会員権を買うのは、かなりの決断が必要です。そういう方は、ニュークラブを、ニューボトルを入れるかのように導入してはいかがでしょうか。

 まだ相手の個性を知らない、しかも誰の手垢もついていない、まっさらなクラブを手に入れるのは、非常に気持ちがいいものです。ビニールの包装を破り、「どれどれ、オジさんがたっぷりと調教してあげるから」と、怪しい言葉を投げかけても犯罪にはなりません。綺麗なクラブを、自らの手で汚せるなんて、浮気以上の快感があるかもぉ〜……って、そういうことですか。

 妄想は尽きませぬが、予算(お小遣い)縮小の折、なかなかニュークラブもニューボトルも入手できない。そうお嘆きの諸兄、こうなったら”焼けぼっくいに火がついた作戦”を決行しましょう。かつて使っていた愛用のクラブを、ほっくり返して、また使ってみるのもありです。

 実は最近、10年前に使っていた7番ウッドと、5年前に使っていた5番ウッドを、クラブ置き場で発見して再び使ってみました。きっかけは、五十肩で、思い切りクラブが振れないからでした。じゃあ、せめてよく飛ぶウッドを使ってみよう、となった次第です。

 で、これがすごく活躍して、残り180ヤードってときにナイスオンすることがしばしば。「おまえは軽く振っても飛ぶからなぁ〜。たぶん、オレがテクニシャンだからだろ?」なんつって、昔つき合っていた子と10年ぶりぐらいにSNSで出会い、旧交を温めてそこから不適切な関係に進展する――そんなふうに見えて、ちょっと興奮しませんか?

 どうです? ゴルフと浮気は、快楽の上ではかなり似ている部分がありますよね。3番ウッドと5番ウッドを使って、380ヤードぐらいのミドルホールを2オンしたときは、ドーパミンがあふれ出ましたから。はるか昔、狙ったキャバ嬢を口説き落としたぐらいの快感が走るってものです。

 五木寛之先生の名作『青春の門』では、都会に染まってしまった織江が、幼馴染の信介に再会します。そこで”大人のテク”に動揺する信介が、印象的なリアクションをします。

「織江、こ、こげなこと〜、どこで覚えたと〜?」

 久しぶりに再会した5番ウッドも、「すごかぁ〜、おまえ、どっかのプロとつき合っていたんじゃないか〜」と、驚くことしきりの”テク”を見せてくれます。しかも、押入れの中で「浮気もせずに、あなたに呼ばれるのを待っていたの」と言うから、泣けるじゃないですか。

 映画『トイ・ストーリー3』では、子どもの頃使っていたおもちゃたちが、お払い箱になって捨てられる運命に。そこから、おもちゃたちが健気に元の主人を探しまくる、という感動ものの話が展開されます。


人間相手に浮気するより、ゴルフクラブの浮気ぐらいで我慢しましょう ゴルフクラブも久しぶりに使ってあげれば、さぞ喜ぶんじゃないですか。かつては一緒に戦った”戦友”なのですから。

 ともかく、人間相手の浮気や恋愛よりもゴルフクラブのほうが、面倒くさいフォローとか、莫大な出費とか、さらには修羅場となる別れ話や訴訟がないので楽です。なんぼ放置していても、クラブはずぅ〜っと待っていてくれますし。

 さあ、昔のクラブと今一度、よりを戻してみてはいかが?……って、こんなオチでいいのだろうか……。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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