ラゾーナ川崎東芝ビル(「Wikipedia」より)

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 上場企業のうち、3月期決算企業の株主総会集中期間が始まった。その皮切りは6月13日に開催された阪神阪急ホールディングスだった。例年、「阪神タイガース」絡みの質問が話題を呼ぶが、今回も「今年優勝できなければ、フロントの大改革をお願いします」と、株主からはフロントに対しては厳しい注文がついた。その模様は、経済紙ではなくスポーツ紙が大きく報じた。

 14日には、時価総額トップのトヨタ自動車が、愛知県豊田市の本社で株主総会を開いた。2年連続の減益予想を踏まえ、豊田章男社長は「M&A(企業の合併と買収)を含め、あらゆる選択肢を検討しないといけない」と、競争力強化に向けた戦略を説明した。外国人の積極登用で自動運転など次世代技術の開発を加速させる。

 総会では取締役報酬の年間総額を40億円に引き上げる議案などを承認した。「外国人取締役の増加などに対応できるようにする」――。豊田社長は報酬引き上げの議案をこう説明した。同社の株主総会招集通知によると、2017年3月期の取締役(社外含む)の役員報酬と役員賞与は合計で16億8400万円だった。外国人登用をにらみ、取締役の報酬上限を大幅に拡大した。

 社長、会長を歴任した後、取締役を13年に退任、名誉会長に就いていた張富士夫氏は14日付で相談役に退いた。

 今回は、これから開催される株主総会の注目点をピックアップしてみよう。

●株主提案と議決権行使助言会社

 株主提案があった企業数は15年に初の40社を超え、昨年は50社に達した。今年も増加しそうだ。07年に急増した後、一時減少していた投資ファンドによる株主提案も増加に転じている。

 そして株主提案の増加に伴い、議決権行使助言会社が存在感を増している。機関投資家を顧客として、投資先企業の株主総会議案に対する議決権行使について賛成・反対の推奨を行う会社だ。

 17年に機関投資家の行動指針(日本版スチュワードシップコード)が改定され、企業統治の質の向上を促している。その指針のひとつは、機関投資家に対して、株主総会での議決権行使の方針と、実際に議決権を行使した結果について開示するように求めている。日本株に投資している運用会社、信託銀行、生命保険会社などが対象だ。

 米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)、米グラスルイスなど議決権行使助言会社の推奨を参考にする株主が増えてきた。ISSはROE(自己資本利益率)が過去5年平均と直近ともに5%を下回った企業の経営者の再任に反対を推奨している。

 新日鐵住金の株主総会は27日に開催される。取締役13人の選任議案が諮られるが、ISSはこのうち進藤孝生社長、宗岡正二会長の2人の選任に反対推奨した。ROEが低いことを問題視したためだ。新日鐵住金のROEは、13年3月期から17年3月期まで直近5期平均で4.2%にとどまる。

 新日鐵住金は「13年3月期は新日本製鐵と住友金属工業が経営統合したことに伴い、資産の減損損失が発生した。この期を除けばROEは直近4カ年で平均6.7%ある」と反論し、「足元は改善傾向で、18年3月期のROE10%の目標の実現に向け努力する」と説明している。

 ISSは、今年は相談役・顧問制度を新たに設ける定款変更決議についても反対を推奨することにした。グラスルイスは、役員(取締役及び監査役の総数)の3分の1以上を独立役員することや、役員兼任数の上限を引き下げることを提言している。

 ほとんどの大企業で、社長・会長経験者は相談役・顧問に就くのが慣例になっているが、それを廃止する企業が出てきた。日清紡ホールディングスは6月下旬をめどに相談役・顧問制度を廃止する。J.フロント リテイリングも新任の相談役を今後、置かない方針だ。

 みずほフィナンシャルグループが6月23日に開く株主総会では、第3号議案から第18号議案まで株主提案があった。ISSは、このうち配当決定機関を取締役会から株主総会に変更する議案や、役員報酬の個別開示などに賛成する。役員報酬の個別開示については、グラスルイスも賛成を推奨している。

 29日に開催される黒田電気の株主総会でISSは、社外取締役の選任を求める大株主からの株主提案に賛成するよう推奨した。成長戦略に新たな視点を盛り込めると指摘した。この大株主とは、「物言う株主」として知られる旧村上ファンドの関係者が運営するレノだ。黒田電気は同提案への反対を取締役会で決議、グラスルイスも反対を推奨している。

 黒田電気では、議決権行使助言会社の判断が分かれた。レノが14日に関東財務局に提出した大量保有報告書によると、共同保有分を含め保有株の比率は36.17%に上る。

 またISSは、音楽配信などを手がけるフェイスによる日本コロムビアの完全子会社に向けた株式交換に反対を推奨している。この件に関しては、日本コロムビア株式を約7%保有する米運用会社RMBキャピタルも反対を表明している。

 日本コロムビア側はISSの反対推奨に対して「完全子会社化が企業価値の向上につながる」とする見解を公表した。その日本コロムビアの株主総会は6月23日に開かれる。

●最大の注目は東芝とタカタの株主総会

 経営再建中の東芝は28日に株主総会を開く。債務超過に転落し、半導体子会社の売却や株式上場が維持できるかどうかなど、問題が山積している。グラスルイスは、会社側が提案する綱川智社長ら全取締役9人の再任案に反対を推奨している。助言会社が取締役全員の資質を問題視するのは異例だ。

 グラスルイスは、15年に不適切会計(粉飾決算)問題が発覚して経営陣が刷新された後も、米原子力事業で巨額損失が新たに見つかり、17年3月期決算の発表を先送りしたことを理由に挙げている。「取締役会は適切に機能していない」と指摘し、綱川社長についても「会社全体の監督ができていない」と批判した。

 エアバッグの大規模リコール(回収・無償修理)問題で経営難に陥ったタカタは27日に開く株主総会で、高田重久会長兼社長を含む取締役6人を再任する議案を提案したことが明らかになった。

 これで事態が急変した。タカタが日米で法的措置を取る方向性がはっきりした。日本はタカタ本体の民事再生法。米国では米国子会社が民事再生法に相当する連邦破産法11条の適用申請を株主総会前に行うと報じられている。

 東京証券取引所は16日、同社株の取引を一時停止した。そんな大混乱のなかで、タカタは株主総会を迎える。株主にとっては、保有株式が無価値になりかねない深刻な事態だ。もし、株主総会が予定通り開かれれば、怒号が飛び交う、大荒れの総会になることは避けられない。
(文=編集部)