呼ぶ方にも、呼ばれる方にもお作法があるホームパーティー。

人格やマナーが試される場でもあるが、その正解を知らぬ者も多い。

都内の様々な会に参加し、その累計回数は約100回にものぼる29歳の優子が、多角的な視点でホームパーティーを評論してゆく。

これまでに、正しい家主の振る舞いやゲストとして招く人の選抜方法を考えた。

今回はゲストが最も頭を悩ませる、「手土産」について考えてみた。




私は人よりホームパーティーに参加する頻度が高い気がする。しかし何度参加しようとも、毎回私の頭を悩ませるものがある。

“手土産”だ。

粋な参加者が集う会に野暮な物は持っていけない。少しハズしを効かせたような、ありきたりではない物を持って行きたい。

ある種、手土産は口よりをモノを言う。その人のセンスが間違いなく垣間見える。だからこそ、毎回細心の注意を払って選ばなければならないのだ。



「さとみ、今度のレイナさんの会に何を持っていくか決めた?」

今週末、私とさとみは麻布十番にある友人宅に招かれていた。ホストの名前はレイナ・33歳。彼女は大学時代からの友人で、3年前に結婚し、麻布十番に住んでいる。

「まだだよ...優子は決めた?」

レイナは昔から美意識が高く、インスタ映えしそうな物が好き。お酒はあまり飲めなかった記憶がある。

元々“プロ女子大生”のラスボスのような存在で、酸いも甘いも経験済み。従って、東京中の美味しいものはごまんと食しているはずだ。

また、最近のレイナは料理に並々ならぬこだわりを持っており、今回も手料理を振る舞ってくれるという。

そんな彼女の自宅へ持参する手土産だ。下手な物は持っていけない。

今回は、私を含め計5名の女性が集うと聞いていた。皆何を持っていくのだろうか...。

デザート系ならば『千疋屋』の丸ごとメロンポンチや『エシレ・メゾン デュ ブール』の世界最高級と謳われるバターケーキなども喜ばれた記憶がある。

人と被らないようにしつつ、最適な物は何かと真剣に考えていた。


まずは大定番の手土産から。定番だからこそセンスが問われる?!


手土産の三大定番「酒・花・菓子」


-他のゲスト達は、結局何を持ってくるのかしら...

レイナ宅に向かうタクシーの中で、自分の手土産が入った紙袋を見つめる。

レイナの自宅は麻布十番駅から徒歩数分のところにあるタワーマンションだった。広々とした車寄せでタクシーを止める。見上げるタワーは、高くそびえ立っていた。

エントランスには、待ち合わせをしていたさとみが立っている。その手には、花束だ。

「私はお菓子や食事系だと勝負できないと思ったから。お花にしたの。」

たしかに、女性で花をもらって嫌な人はいない。

それに食べ物や飲み物はセンスが真っ向から問われるが、花ならばそこまで厳しいジャッジをされずに済む。

「お花、かぁ...それは良いアイディアね。」

さすが、さとみだ。上手に逃げた気がする。

インターホンを鳴らし扉を開けると、そこには既に数名の女性が集まっていた。

「あら優子ちゃん、お久しぶり。」

呼ばれたゲストの中に、大学の先輩である智恵子さんの姿もあった。彼女はいつ会っても聡明さがにじみ出ていて、大好きな先輩だった。

その手には、ワインとシャンパンが抱えられている。




定番のお酒でも、会に合わせた物を選ぶ


「最近お気に入りのビオ・ワインなのよ。レイナちゃん、そこまでお酒飲まないから、家にないかなと思って。逆に他のゲストの方々と一緒に飲めるでしょ?」

たしかに、レイナはお酒をあまり飲まない。嗜む程度だ。

「さすが智恵子先輩...」

主催者だけではなく、他のゲストのことも考えた手土産に思わず唸る。

しかも身体に良いビオ・ワインときた。今日集まっているのは皆30歳前後で、“ビオ”や“オーガニック”という言葉にめっぽう弱い。女性が喜ぶツボもしっかり押さえている。

「お酒詳しくないから、何出せば良いのかいつも困ってたんです。智恵子先輩、ありがとうございます。」

これには主催者であるレイナも喜んでいた。

さとみが持ってきたお花を、レイナが慣れた手つきで花瓶に生け、テーブルの上に置くと、場が一気に華やいだ。

そしてもう一人、レイナの友達だという美香は、袋からゴソゴソと大きなボックスを取り出した。


難易度の高い菓子類や料理で喜ばれるモノとは?


主催者によって変わる捉え方


「これ、キルフェボンのケーキです」

そこには、思わず写真を撮りたくなるような色とりどりのケーキが並んでいた。




「まぁ、美味しそう❤」

溜め息混じりにレイナが微笑む。さとみも智恵子先輩も、ケーキを上から見てどれにするか今から考えているようだ。

「食事は全てこちらで用意しているから。ケーキは、食後に皆さんで頂きましょう!」

レイナの仕切りで、皆そそくさと席に着く。

主催者によっては、トータルバランス、言うならばコースで料理を考えている人もおり、料理の持ち込みは嫌がられるケースがある。(それぞれが食べものを持ち寄るポットラック形式は除く)

手土産はあくまでも主催者への思いやり。メインになってはいけない。デザートは意外性はないが、やはり手土産として最適なアイテムだろう。

「『クレマドール』のラグジュアリーヨーグルトか、『天のや』のたまごサンドもいいかなと思ったんですが...」

美香の発言に、皆口々に“それも良いわね”など言っている。

「で、優子は?何を持ってきたの?」

さとみの好奇の目が、私が持参してきた紙袋に向けられた。




「食後に飲むコーヒーにしたよ。」

悩んだ挙句、私はGINZA SIX に新しくオープンした『カフェ エクスペルト』の可愛らしいボトルに入った珈琲豆とグラウンド(挽いた)タイプのコーヒー2種類を買っていった。

「何これ、珈琲?初めて見た」
「ボトルが可愛い❤飾ってるだけでも楽しめるね。」

他の3人が口々に放つ感想を聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。

コーヒーや紅茶も、女性が集う会ならば喜ばれる手土産だ。 飲みきれなかった場合でも、家主がその後も楽しめる。

しかし、さとみのお花もそうだが、男女によって喜ばれる手土産は大きく異なる。


ホムパの手土産の正解:先にホストの趣味嗜好を押さえろ


花より団子と言う通り、男性ならば花より手料理などの方が良いだろう。

一人暮らしの男性の家にはコーヒーメーカーが無かったり、飲まずに放置される可能性も高い。甘い物が苦手な人もいる。

その一方で、女性は自分で料理をしたい人が多いため、手土産はあくまでも“サブ的要素”だ。

「レイナさん宅への手土産、緊張しました(笑)」

美香が笑うと同時に、皆も頷きながら一斉に笑った。

東京中の美味しいものを食べ、舌が肥えている人ばかり。そんな人たちに持参する手土産は、相当レベルが高いものでなくてはいけない。

さとみは、“花”という当たり障りのない物を選んだ。私は敢えて“新商品”という変化球で勝負した。

菓子類や酒で勝負できるのは、手土産偏差値の高い人のみ。そこは人生経験とその人のセンスが物を言う。

「手土産情報は、日々アップデートしておかないといけないわね。」

流行を上手に取り入れつつ、喜ばれる手土産のアンテナを張っておくこと。それは、東京の狭いコミュニティーの中で生き抜くための必須スキルなのかもしれない。

▶NEXT:6月29日 木曜更新予定
ホムパの新常識・UberEATS。その正しい活用方法とは?

【これまでのホムパのお作法】
Vol.1:会話を盛り上げるだけでは不十分。見られている、家主の品格
Vol.2:ビジネスは、ホムパで始まっている。ゲストを有機的に繋ぐ主催者の手腕とは