ラゴスのオフィスで語るナイジェリアの伝統的なファッションデザイナー、オモボラジ・アデモス(2017年6月1日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ナイジェリアのポップアイコン、ウィズキッド(Wizkid)のミュージックビデオでは、ぴったりとしたショートパンツから長い脚を見せたダンサーたちや「モエ・エ・シャンドン(MOËT & CHANDON)」のシャンパン、派手な車などがフィーチャーされていた。しかし歌手本人は今、「ヴェルサーチ(VERSACE)」のTシャツや下着を見せるローライズのジーンズから、アフリカの伝統衣装へと服装を切り替えている。これこそがファッション中心地、ラゴス(Lagos)における若者の新たなトレンドなのだ。

 昨年、ヴォーグ(VOGUE)は「ナイジェリアのもっともおしゃれなポップシンガー」としてウィズキッドを取り上げた。外見がきわめて重要で激しい競争があるこの国で、とくに切望される名声ある称号だ。「これが今、流行なんだ」と26歳のスーパースター、ウィズキッドはヴォーグ誌に語る。「僕が故郷で着るのはアフリカの生地でできたものばかり。ナイジェリアの北部、西部、南部とあらゆる地域から素材を取り寄せてミックスしている」

 かつて老人や田舎の人のみが着ると思われていた服装が、今のファッショントレンドだ。南西部で着られている3重にレイヤーされた大きなローブから、南部の刺繍のある襟なしシャツ、そして北部の長いチュニックとアシンメトリーな刺繍入り帽子もだ。近年、伝統衣装は「トラッド」と呼ばれ、オフィスやナイトクラブ、さらにウエディングやビジネスミーティングでも着用されている。

 2000万人もの居住者が暮らすメガシティのラゴスでは土地が不足しており、ショッピングセンターもほとんどなく、レディ・トゥ・ウエアのブティックは見つけるのが難しい。不景気とナイラ(通貨単位)の下落は、裕福なナイジェリア人たちのドバイやパリ、ミラノでの爆買いに歯止めをかけた。その代りに彼らは地元で買い物を済ますようになり、それが道端の仕立て屋の人気上昇につながった。

■今、アフリカの「トラッド」がアツい

 2012年、「B.J.」の愛称で知られるオモボラジ・アデモス(Omobolaji Ademosu)は銀行の仕事を辞め、自身のメンズブランド「Pro7ven」を立ち上げた。ラゴスの中心から離れたオジョドゥ(Ojodu)にある2つの工房では、ディーゼル発電機の音が鳴り響く中、数十人の職人が裁縫やアイロンをしながら、いくつものオーダーをこなしていた。B.J.は自身のスタイルを「アフリカン・コンテンポラリー」と呼ぶ。格調高いオーダーメイドの刺繍襟付き民族衣装などは、15万ナイラ(約5900万円)に至る値段で販売されている。

「トラッドが流行りだ」とB.J.は笑う。「日々、いろんなナイジェリアの民族衣装に着替えるのはクール! これぞラゴス精神だ。国境もなく、俺たちは一つなんだ」

 ビジネスや政治のミーティングに出席するときも、ホスト役の出身地の民族衣装を着ていけば敬意を示すことができ、大きな契約を取り付けられるかもしれない。たとえばナイジェリアの大統領、ムハンマド・ブハリ(Muhammadu Buhari)は2015年の選挙活動で、国中のあらゆる民族衣装を着用した。ナイジェリアには500以上の民族グループがあり、生地やスタイル、ジュエリーのバリエーションも幅広い。それぞれの民族ルックは誇りの源であり、ナイジェリアの国境をも超えて広がっている。

 5月初旬、南アフリカの「経済的開放の闘士、EFF(Economic Freedom Fighters)」派のスポークスマン、Mbuyiseni Ndloziはインスタグラム(Instagram)に自身の写真を投稿した。身に着けていたのは、ダークな色合いの民族衣装にジェムストーンのネックレス。彼の多数の熱狂的な女性ファンたちは、絵文字のハートとともにコメントをすぐさま書き込み、愛情をこめて彼を「民族衣装のプリンス」と呼んだ。

■パリでも”アフリカの誇り”は忘れない

「パリにおいてさえも今、アフリカ出身の若者たちは自分たちをアフリカの王子のように見せたがる」とフォーブール・サン=トノレ(Rue du Faubourg St-Honore)に店を構えるアフリカファッションの高級ブティック「ムーンルック(MoonLook)」のオーナー、ネリー・ワンジ(Nelly Wandji)は言う。

 最近訪れたラゴスについても「スタイルとクリエイティビティ、出身デザイナーの知名度から言って、ナイジェリアは明らかにファッションリーダーだ。ラゴス・ファッションウィークはヨハネスブルグ(Johannesburg)を圧倒した。南アフリカがどんどんヨーロッパ化していく中で、ナイジェリア人らは本物の”アフリカの誇り”を抱き続けている」

 カメルーンにルーツを持つフランス人のワンジは、ナイジェリア人の代表らが大きな数を占めるアフリカ人居住者が、ファッショントレンドを左右すると言う。「居住地の若者たちはアフリカファッションを体現している。ヨーロッパやアメリカで見られる自身の文化を、トレンディーなものと再解釈した」

 50代の小柄な女性、グロリア・オジャカ(Gloria Odiaka)はラゴスの裕福な界隈であるレッキ(Lekki)で、ラグジュアリーな伝統生地店を成功させている。「若い世代が自国の服に関心を持つのは素晴らしい」とオジャカは語る。「私の息子はカナダで学んでいるが、私が訪れるたびに『ママ、お願いだから僕らにトラッドを買ってきて。カナダのTシャツはもういいよ』と言ってくるの」と笑った。
【翻訳編集】AFPBB News