海鳥の楽園! 天売島に鳥の群舞を見に行くが、あいにく……

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日本一の漁獲量を誇る甘エビで有名な羽幌町の港から西北西へ約24km離れた焼尻島と、3kmへだてて兄弟島をなす天売島は、絶滅危惧種のオロロン鳥など多数の海鳥が住む「海鳥の楽園」です。中でもウトウは、何と80万羽とも100万羽ともいわれる数が、夜、一斉に帰巣するとか。そんな圧巻の光景を見てみたい! というわけで、6月初旬、一泊二日でウトウ観察に行ってきました。

天売島へ渡るには、羽幌中央ふ頭から羽幌沿海フェリーが運航する船を利用

■ フェリーで約1時間半。意外に近い素朴な離島

天売島へ渡るには、羽幌中央ふ頭から羽幌沿海フェリーが運航する高速船「さんらいなぁ2」かフェリー「おろろん2」を利用します。フェリーでは先に焼尻島まで約60分、天売島まで約95分の船旅です。今回は、14:00発のフェリーに乗船し、いざ天売島へ。

出港30分前に羽幌フェリーターミナルの窓口が開き、乗船券などを購入。フェリーは天売島までの運賃が大人2等客室2290円(9月〜6月)。乗り物酔いが心配な方は、ここで酔い止め薬を販売しているので利用をオススメします(私も購入)。

天気はあいにく小雨交じりの曇りでしたが、フェリーは港を出港。北海道本島を離れるワクワク感と冒険心がムクムクと湧き上がってきました! フェリーといえども、想像以上のスピード感で羽幌から離れ、焼尻港を経由して15:30過ぎ、天売港に到着。港には、宿を予約した乗船客を出迎える各民宿の方が待ち構えていました。観光を大事にする島のホスピタリティーを感じますね。

上陸したらその足で、島に2軒しかない食事処を続けて取材。そして18:00頃に宿へ。宿に着いたら、荷ほどきもそこそこに夕食。実は旅のハイライト、ウトウの帰巣を体験する「ウトウ・ナイトウォッチングツアー」は、19:00頃、宿にバスが迎えに来るということで、それまでに夕食を済ませることになるのです。テーブルにすき間なく並んだ料理を急いで堪能しました。 ■ ガイドさんの説明を楽しみ、秘境感あふれる観察地へ

小雨が降る中を「ウトウ・ナイトウォッチングツアー」の小型バスに乗り込み、赤岩展望台へ。このツアーへの参加は、宿泊する宿に頼めば予約できます。参加料は通常1人1000円。観察シーズンが始まったばかりの6月初旬は、半額の500円で参加できました。

観測現場の赤岩展望台まで、バスでゆっくり10分ほど進むまでの間に、運転手兼ハイドの方がウトウの生態の説明や観測の注意点などを詳しく解説してくれました。この話が何とも面白おかしいのでお楽しみに。個人でも展望台へ行くことは可能ですが、宿のご主人曰く「ものすごい数のウトウが道路にも降りてきて、車の下に入り、時には激突することも。マイカーで行くのはオススメしないよ」。

ガイドさんによると、天売島のウトウは北大西洋に分布するウミスズメ科の海鳥で、繁殖期以外は海上生活。

天売島には2月頃から高さ100m以上の断崖が続く西海岸に姿を見せ、毎年同じつがいで、陸の土に掘った同じ巣穴を見つけて繁殖を行う、海鳥きっての「おしどり夫婦」だそうです。調査によると推定40年は連れ添う夫婦も! 春に1つがいで1個の卵を産み、夫婦交互に温めるとヒナがかえります。すると、ヒナに与える小魚を日中捕り、日没と同時に一斉に帰巣。その数、40万つがい! 独身ウトウもいるので、合計100万羽が天売島に生息しているそうです。これほどの数の海鳥と人々の暮らしが隣り合わさった場所は、世界広しといれども天売島だけ。

島には西側の断崖絶壁を見渡せる場所に「海鳥観察舎」も設けられています。

■ 顔をかすめることも!無数に飛び交うウトウの姿に圧倒される

いよいよ観察現場の赤岩展望台に到着。まだうっすらと青味が残った夜空にポツポツと飛び交う影が。「今日みたいな天気の日は、晴天時よりばらけて戻ってくることが多いです。ただしより低空を飛び交うので身体にぶつかってくる可能性も。ウトウも人もケガをすることが滅多にありませんが、怖い方はバスの中からでも十分に見られますよ」とガイドさん。いやいや、せっかく来たのですから、ウトウたちの中に飛び込みますよ!

道路から岬に続く展望台に行くと、頭上には弾丸のように飛び交う無数のウトウが!目を凝らしてまわりの陸上を見ると、これまた無数の巣穴が密集。そこには、ウトウが運んできた魚を横取りしようと待ち構えるウミネコたちがひしめいているのです。「ビュンビューーン、バザバサ〜〜ッ!」。着地が上手でないウトウはよろけながら地上に降り立ち、ヒョコヒョコっと小股で巣穴に飛び込むもの、その場でしばらく立ち尽くすものなどが、あちこちにウヨウヨ。

そうこうしているうちにも、上空にはどんどんウトウの姿が増え続け、時には顔の近くをかすめることもあり、スリリングでハラハラドキドキ!怖さもありましたが、それ以上に北海道でこんなにも壮観で神秘的な光景を目の当たりにできたことに感動!20:00過ぎまで約1時間、現実と夢の中をさまようような幻想体験に浸りました。天候次第では、もっと激しく密集して飛び交う様子も見られるそうで、また何度も訪れたい!と実感した旅でした。ウトウが帰巣する光景が観察できるのは、ヒナのふ化が始まる5月中旬から巣立ちを終える7月下旬くらいまで。ぜひこの体験をあなたも!

【北海道ウォーカー編集部】