インドが開発した大型ロケット「GSLV Mk-III」 Image Credit: ISRO

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 インド宇宙研究機関(ISRO)は6月5日、新型ロケット「GSLV Mk-III」の試験打ち上げに成功。搭載していた通信衛星を予定どおりの軌道に投入した。

 同国のプラナブ・ムカルジー大統領は「この重要な成果を誇りに思う」と述べ、開発にかかわった科学者や工学者、技術者たちを讃えた。

 インドが宇宙開発において有力な国のひとつに数えられるようになって久しいが、これまで保有していたロケットは、世界の水準と比べてやや能力が低く、大型の高性能な衛星を開発しても、自国からの打ち上げはできなかった。

 しかしこのGSLV Mk-IIIの誕生により、いよいよインドは大型の人工衛星を自力で打ち上げることが可能になり、さらに他国からの商業打ち上げ受注の可能性も出てきた。そして大型の月・惑星探査機や有人宇宙船の打ち上げといった、宇宙大国へ向けた未来も見えてきた。

◆インドの宇宙開発の歩み

 インドは比較的早くから宇宙開発、宇宙利用の可能性に目をつけていた。1980年には自国で開発したロケットで、人工衛星の打ち上げに成功している。これはソ連の人工衛星の打ち上げ(1957年)や米国(1958年)から約20年、日本や中国(1970年)から10年遅れだった。

 その後、インドはフランスやロシアなどからロケット技術を導入して徐々に力をつけ、1990年代に小型・中型の低・極軌道衛星(地球観測衛星や偵察衛星)を打ち上げられる「PSLV」というロケットの開発に成功。続いて2000年代には、小型の静止衛星(通信や放送衛星)などを打ち上げられる「GSLV」ロケットの開発にも成功し、これまで目的に合わせて、このPSLVとGSLV(のちにGSLV Mk-II)の2種類のロケットを使い続けてきた。

 しかし、「小型・中型の衛星を打ち上げられる」と書いたように、PSLVやGSLVの打ち上げ能力はやや低く、大型の低軌道衛星や、中型以上の静止衛星を打ち上げることはできなかった。インドは人工衛星の開発でも高い技術をもっており、中型の通信・放送衛星を製造する技術もあったものの、それを打ち上げられるロケットがないために、欧州などに打ち上げを発注するしかなかったのである。

 これは宇宙開発におけるインドの自立性という点で大きなネックとなっていた。大型の衛星の打ち上げを他国に頼らねばならないということは、たとえばその国との関係が悪化すれば打ち上げは止まるし、さらに足元を見られて打ち上げ費用をふっかけられることもありうる。

 そこで開発されたのが、大型・中型の衛星も打ち上げられる能力をもった大型ロケット「GSLV Mk-III」だった。

◆ゾウも打ち上げられる大型ロケット「GSLV Mk-III」

「Mk-III」とつくと、なんとなくマイナー・チェンジな感じも受けるが、実際には、新型の大型固体ロケットを開発したり、エンジンを束ねて2倍のパワーを出せるようにしたりと、打ち上げ能力を大きく向上させるためさまざまな技術が投入され、これまで運用されていたGSLVとはまったく異なる機体になっている。

 GSLV Mk-IIIは、4トンの静止衛星を打ち上げられる能力をもつ。従来のGSLVの打ち上げ能力は約2トンだったので、単純に2倍になった。ちなみに4トンというと、大人のインドゾウとほぼ同じ重さなので、インドのメディアでは「インドゾウも打ち上げられるようになった」と表現されることもある。

 もっとも世界には7トンの静止衛星を打ち上げられるロケットもあるので、4トンという数字はそれほど大きなものではない。しかし放送・通信衛星には3〜4トンのものも多いので、ほぼ十分な能力といえよう。

 GSLV Mk-IIIの開発において、とくにインドが力を入れ、そして困難をきわめたのは、衛星を最終的に軌道へと送り込む第3段エンジン「CE-20」の開発である。