「中央突破」というタイトルには「シーンに風穴を開けたい」という想いが込められていると語るイトヲカシ

 2人組ユニットのイトヲカシが21日に、1stフルアバム『中央突破』をリリースする。メンバーは伊東歌詞太郎(Vo)と、宮田“レフティ”リョウ(Ba、Gt、Key)。昨年9月にシングル「スターダスト/宿り星」でメジャーデビュー。デビューから9カ月を経てリリースされた本作は、シングル曲の4曲に「スタートライン」など新曲6曲を加えた全10曲で構成されている。「シーンに風穴を開けたい」という想いからこのタイトルが付けられた。現在おこなわれているツアーではアルバム曲をすでに披露し、「伝える」ということをテーマにチャレンジしていると話す。その想いを伝えるために必要なこととは何なのか、楽曲に込められた真意や制作背景など2人に話を聞いた。

ライブで新曲は新しいチャレンジ

「中央突破」ジャケ写

――1stフルアルバム『中央突破』が完成しましたね。ツアーではすでにアルバムの曲も披露されているのですか。

伊東歌詞太郎 はい。いきなりライブで新曲を聴いてもらうということは新しい“チャレンジ”だと思っています。それで伝えることができるかどうかというのは、本当のアーティストの真価が問われると思います。そういう気持ちで今ツアーをやらせて頂いています。

宮田“レフティ”リョウ 初めて曲を聴く瞬間は、凄く重要だと思います。それがライブだったらどうだろうと。音源よりもライブの方が心の部分を伝えるには直接的だと思います。

伊東歌詞太郎 「次は新曲です!」と言うと、お客さんは「おお!」となるじゃないですか。でも、終わった後に「そう言えば新曲だったな!」って(笑)。

宮田“レフティ”リョウ 咀嚼する前に曲が終わってしまう。

伊東歌詞太郎 伝わらない時があるというのは、ボーカルのせいだと思います。ライブで聴いていて歌詞がちゃんと聴き取れるように曲を作っているバンドは、正直あまり観たことなくて。

 僕が昔からよく言われていたのが、「君は何故か歌詞がよく聴こえる」ということです。声質などもあると思いますが、それは大切なことだと改めて思いました。曲を予習してからライブで盛り上がるのは、やはり自分の頭の中で歌詞を再生しているというのが少なからずあると思うので。

――それはありますね。

伊東歌詞太郎 言葉をしっかり伝えていけば、初めての曲でも感動は生まれるのではないかと、それこそが本当の曲の力になるんじゃないか、と考えています。伝えるということは、どこで何が大切なのかということを考えてライブをすれば、絶対に伝わると思っています。それが全く知られていない新曲であってもです。それで感動を生むことも出来るし、感動が生まれればその曲を好きになってもらって、アルバムを聴いてもらえるようになると思います。だから“チャレンジ”です。

宮田“レフティ”リョウ 確かに歌詞は一つの重要なファクターだよね。

――日本語で歌っていると尚更ですね。

宮田“レフティ”リョウ そうですね。でも、洋楽のアーティストを観ていて、全然知らない曲で歌詞がわからなくても涙することもある。それはハートの部分だと思います。言葉を超えた部分で感情を揺さぶられている。言葉というのはハートを伝えるツールであるし、音楽もそうだと思います。そのハートを伝えるためにはどうすれば良いのかという…。手法というのは目的があってこそですし、そこが逆転しないようにしないといけないし。

――音楽を大きく見ても手段と目的が逆転してはダメ?

伊東歌詞太郎 音楽を手段にして成功する人がいてもいいのですが、僕はガキだからそこを許容できなかったりします。音楽を手段にしている人を見ると、ちょっと僕自身が傷付いてしまいます。そこは割り切って大人になればいいのですが、なりきれない自分がいます。

――『中央突破』収録曲はライブでの反応はいかがですか?

伊東歌詞太郎 「この曲が反応良いな」というのが意外な曲でした。色んなベクトルを見せたいがために入れた曲、「ヒトリノセカイ」という曲なのですが、肌で感じる反応が凄く良いです。「伝えられているな」という実感があります。

――「ヒトリノセカイ」は、ちょっと異質な感じがする曲という印象がありました。アルバムではバラード寄りの楽曲が多いと感じたのですが、やはりイトヲカシの武器はそこにある?

宮田“レフティ”リョウ アッパーよりはミドルテンポ的なところが武器かなと思います。

――メロウな感じ?

宮田“レフティ”リョウ そうですね。僕らは王道のポップスをやりたい、ということを考えた時に、僕らが聴いてきたポップスって、バラードやミドルテンポのものが多いなと思いまして。

伊東歌詞太郎 僕らがミドルテンポをやると「バラード」と捉えられたりしてしまうのですが。

――例えば「半径10メーターの世界」は“パワーバラード”でしょうか。

伊東歌詞太郎 僕らもその言葉が大好きです。すぐ“パワーバラード”と言ってしまいます(笑)。

――確かに諸にバラードという訳ではないですよね。

宮田“レフティ”リョウ テンポ感がシーン全体で上がってきていると思います。洋楽だともう一周しているという感じもありますが。「歌モノ王道J-POPがやりたいよね」となった時に、アップテンポの曲が多い必要がないと思いまして。

デビューシングルだったかもしれない「スタートライン」

――曲順は悩みませんでしたか?

伊東歌詞太郎 実はそんなに悩まなくて、10曲のライブだと思ってセットリストを組む感じでアルバムを作っています。

――最初と最後が決まってしまえば、後はすんなり決まったり?

伊東歌詞太郎 それもありますね。最初は絶対に「スタートライン」だし、最後が「スターダスト」というのはありました。

宮田“レフティ”リョウ 確かにそれはイメージでありましたね。

――「スタートライン」はもうタイトルが1曲目という感じですものね。

宮田“レフティ”リョウ これが7曲目とかにきても「うそ〜」ってなりますよね(笑)。

――その「スタートライン」はいつごろ作られた曲でしょうか?

伊東歌詞太郎 2014年の夏頃です。その時から「スタートライン」というタイトルもついていました。「部活の合宿っていいよね、そういう感じのいい曲作ろうぜ」というノリだったのです。僕は学生時代陸上部で、クラウチングスタートをした時のあの何ともいえない緊張感。もう逃げ出したくなるような感覚。陸上競技って自分との戦いで、スタートをしてしまえば、後は何てことはないのですが。スターターピストルの鳴る瞬間の直前までがもう地獄です(笑)。

――そこまでなのですか?

伊東歌詞太郎 半端じゃないです。それが陸上で学んだことです。それって人生にも置き換えられることで、始めるまでが怖くてやらないということが多いのではないかと思いまして。そういうところにリンクさせて正直に気持ちをしたためました。

――2014年に作った「スタートライン」をこのタイミングで披露するのは何故でしょう?

宮田“レフティ”リョウ この曲は、メジャーデビューシングルだったかもしれない曲なんです。今回のアルバムは、コンセプチュアルに作るというより、今まで書き溜めてきた膨大な曲をセレクトして、この10曲になったというアルバムです。その中で「これは入れたいよね」ということだったんです。

伊東歌詞太郎 本当にとらわれずにストックの中からバランスをみて選んでいたのですが、1曲目は「やっぱりこれでしょ!」というのは2人の中で合致しました。

――ちなみに、曲のストックはあとどれくらいあるのでしょうか?

伊東歌詞太郎 あと30曲くらいはあります。

――すぐに2ndアルバムが出来そうですね。

伊東歌詞太郎 何なら3、4年はサボれるのではないかというくらい(笑)。

宮田“レフティ”リョウ でも新曲は作り続けたいです!

――クリエイターとしてはSでありMでもある?

伊東歌詞太郎 たぶんクリエイターは全員Mじゃないかと(笑)。例えば「締切り明日までね」と言われたら「いやいや、やりますけど…」みたいな。心の中では、その締切りを自分で超えることも楽しめちゃうといいますか。それってクリエイターがみんな持っているM気質なのかなと。「無理だよ」とはならないと思います。

――むしろ「やってやるぜ」というような?

伊東歌詞太郎 自分で良いハードルとして解釈して臨む感じです。

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