「入らなかったね。まあ、こういうときもある。俺のせいだろうね。みんなに申し訳ないと思う……」

 0-1で敗れた横浜F・マリノス戦後、FC東京のFW大久保嘉人はいさぎよく、自らの非を認めた。


決定機をゴールできずに悔しい表情の大久保嘉人 横浜FMをホームに迎えた一戦。FC東京は試合を優位に進めながらも、終盤の失点に泣き、敗戦。2度の決定機を逸した大久保が自らの責任を感じたのも、当然の結果だった。

 この大久保をはじめ、今季のFC東京は他チームも羨(うらや)むような豪華な攻撃陣を手にしている。昨季得点王のFWピーター・ウタカをサンフレッチェ広島から、快速アタッカーのFW永井謙佑を名古屋グランパスから迎え入れ、他にも昨季からの戦力であるFW前田遼一、MF中島翔哉、FW阿部拓馬、MF河野広貴など、他チームであれば堂々とレギュラーを張れる人材を前線に多数備える。

 加えて出し手にも、卓越したパスワークを持つMF郄萩洋次郎(前FCソウル)、高精度クロスを誇るDF太田宏介(前フィテッセ)と代表クラスのタレントがともに海外クラブから加わった。悲願のリーグ制覇を実現できるだけの戦力は十分に備わった――そう見るファンや関係者も多くいたはずだ。

 しかし、横浜FMに敗れたFC東京は、これで早くも5敗目。順位も7位に後退し、首位の柏レイソルとの勝ち点差は7に広がった。悲願を成就させるには、あまりにも心もとない戦いを続けている。

 15試合で14失点と守備の安定がある一方で、課題は攻撃面にあるだろう。21得点とゴールの数は決して少なくはないものの、そのタレントの質を見るかぎり、やはり物足りなさは否めない。リーグ最高とも言える攻撃陣の戦力を、今ひとつ生かし切れていない現状が浮かび上がる。

 大久保もここまで6得点。2013年から3年連続で得点王に輝いたJリーグ史上最強のストライカーも、その実力を十分に発揮しているとは言いがたい。

 もちろん、得点の数が増えていかないのは、横浜FM戦のように自らのミスに起因する部分もあるだろう。しかし、阿吽(あうん)の呼吸でパスが出てきた川崎フロンターレ時代とは異なり、欲しいところにパスが出てこず、フィニッシュまでなかなか持ち込めない。青赤の背番号13がそんなストレスを抱えていることも、想像にかたくない。

 データを見ても、それは明らかだ。昨季は33試合に出場し、128本のシュートを放った。1試合にならせば、3.88本のシュート数となる。一方で今季は14試合で33本。1試合平均では2.36本と、昨季と比較すれば約1.5本のマイナスである。

 横浜FM戦後も、大久保はこんな苦言をチームメイトに呈していた。

「相手のプレスにハメられたときに逆サイドに出せば、すごいチャンスになるんだけど、同じ方向しか見ていない。ひとつのパスで絵が変わるのに、変えることができていない。そこは個人の問題だから、意識してやってほしい。そうなれば、やり方も明確になると思うし、チームとしてもっとよくなっていくと思う」

 FC東京の今季のスタイルは、ポゼッション型ではなく、トランジション型に分類されるだろう。力強いプレスでボールを奪い、素早く切り替えて相手陣内にスピーディに攻め込む。ショートカウンターが主体のサッカーは、相手の間でボールを受けてバイタルエリアで連動していく川崎F時代とは、やはり大きく異なる。

 もちろん大久保としても、チームが変わった以上、今のやり方にアジャストしていく必要があるだろう。とはいえ、極端なスタイルの変化に即時フィットするのは、経験豊富なストライカーであっても、そう簡単な作業ではないのだろう。

「前の選手は能力があるので、チームとして生かし切れていない部分はあると思います」

 そう語るのは、出し手側の選手である郄萩だ。

「こういうサッカーをしていれば、カウンターの場面は増えてくると思う。そこでシュートの形まで持っていくことが重要になる。その精度を高めるために、前の選手ともっとコミュニケーションを取ったり、練習で詰めていきたい」

 カウンターの質を高められるか――。それがFC東京の今の最大のテーマだ。とはいえ、ショートカウンターだけでは、いずれ頭打ちとなるだろう。もうひとつのデータを引っ張り出せば、その理由が浮かび上がる。

 今季のFC東京はここまで7勝を挙げているが、そのすべてが完封勝利。つまり、先手を奪えば強さを発揮するが、1点でも奪われれば、そこから跳ね返す力がないということを表している。カウンターとは、相手が出てきてこそ効果を発揮する。先に奪われ、守りを固められてしまえば、打つ手がないのである。そのためにはやはり、ブロックを作った相手を崩すパスワークなり、連動性が求められてくる。

 もっともその意味では、この横浜FM戦はひとつの転機になるかもしれない。大久保も郄萩も、口をそろえたのが「チャンスの数自体は増えてきた」ということ。郄萩は「今までよりも、縦パスを前線の4人に入れていく形はできていた。(代表ウィークによる)中断期間にやってきたことが少しは出せたんじゃないかなと思います」と、敗戦のなかでもポジティブな部分をそう語っていた。

 実際に大久保が逃したふたつの決定機は、縦一本のカウンターではなく、縦パスをきっかけとした高い位置で、ウタカとの連動によって生まれたもの。

「ウタカはキープできるし、周りも見れるので、すごくやりやすい」

 大久保もウタカとの連係に、今後の可能性を見出していた。

「あそこで(ゴールが)入っていれば、チームとしても自信がついたかもしれないけど。あとは俺が決めるだけ。今日は反省して次にいきます」

 俺が決めるだけ――。手応えを掴んでいるからこその、大久保の懺悔だった。

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