米国の大手メディアのトランプ政権に対する非難キャンペーンは激しさを増す一方である。

 反トランプ陣営の記者やコラムニストから、テレビキャスター、芸能人までもが放送禁止まがいの罵詈雑言をトランプ氏に浴びせる。トランプ氏の生首のイメージをネット上でばらまく。トランプ暗殺を想起させる舞台劇を上演する──。

 こんな動向に対して、保守系の大物の政治評論家がこの状態はきわめて危険だとして、メディア界に沈静を求める警告を発した。

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テレビ番組も舞台劇もトランプ攻撃

 この警告は大手紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の女性政治コラムニスト、ペギー・ヌーナン氏により6月15日の同紙に発表された。

「誰もが激怒している、それは危険だ」(Rage Is All the Rage, and It’s Dangerous)というタイトルのこのコラムは、ワシントンを主要舞台とする米国の分裂と対立が近年に例のないほど険悪になったとして、「トランプ支持層とトランプ憎悪層の対決」に焦点を合わせていた。

 ヌーナン氏は1980年代にレーガン大統領のスピーチライターを務めた政治学者で、長年、米国メディア界で活躍してきた大物政治評論家でもある。基本的な政治傾向は保守だが穏健派で、トランプ政権に対しても頻繁に批判を述べてきた。

 ヌーナン氏は本コラムで、最近の以下のような出来事は大衆扇動的で明らかに一線を超えていると指摘する。

・CNNテレビの娯楽番組に定期出演する女性コメディアン、キャシー・グリフィン氏は、5月30日、トランプ大統領の生首をぶら下げる映像をツイッターなどで流した。

・6月中旬、ニューヨーク市で上演中の舞台劇「ジュリアス・シーザー」では、暗殺されるシーザーをトランプ氏に似せる演出があった。

 ヌーナン氏は反トランプの憎悪をこうしてあおるのは行き過ぎであり、危険だという。さらに報道の分野でも、トランプ叩きは過熱している。

・CBSテレビのニュース関連番組に定期的に出演する著名な評論家兼コメディアンのスティーブン・コルベア氏は、放映中にトランプ氏をロシアのプーチン大統領の性器に関連付ける発言をした。

・CNNテレビの司会役が、トランプ氏に「シット(くそ)」という汚い言葉をぶつけた。

・MSNBCテレビの報道キャスターが、「トランプ大統領は自分の政治目的のためにテロ犯罪をわざと起こさせようと挑発している」と断言した。

 ヌーナン氏は以上のような実例をあげて、懸念を表明した。民主党寄りの芸能人やキャスターが政治的な理由でトランプ大統領の政策を非難するのは正当化できるとしても、明らかな偏見や不公正をメディアの客観性や中立性を放棄して表現することは、危険な暴力行為をも扇動することになる、と警告した。その危険な暴力行為の実例としては、6月14日にワシントン郊外で起きた、反トランプの中年男性による共和党議員たちに対する射撃事件が挙げられるという。

 同氏はさらに、米国内でイデオロギーや政策をめぐって激しい対立が起き、その結果、米国全体が政治的に分極化することを憂慮する。現在の米国の主要メディアのトランプ大統領への攻撃は、激怒や憎悪をあまりにむき出しにしており、「その温度を下げるべきだ」と訴えた。

このままでは米国全体が危機に

 6月16日、ワシントンを拠点とする保守系のインターネット新聞「ワシントン・フリー・ビーコン」も、この種のトランプ叩きの現状を伝える記事を掲載した。

 民主党系弁護士のジャミー・ゴアリック氏が、トランプ大統領の娘、イバンカさんとその夫のジャレッド・クシュナー氏のロシア関連疑惑での弁護を引き受けた。そのことが民主党勢力から裏切り行為のように激しく非難されているという実態を伝える記事だった。

 弁護士の弁護引き受けは政治党派の別を越えてなされるのが自然である。ところが「ワシントン・ポスト」などはゴアリック弁護士がクシュナー夫妻を弁護するのは不当な行為として断じている。ワシントン・フリー・ビーコンの記事は、その種の非難は一線を越えていると批判した。

 こうしたトランプ政権と反トランプ陣営(民主党と大手メディアの連合)との対決は一体どこまでエスカレートするのか。ヌーナン氏のコラム記事は、「トランプ大統領に敵対する側はこのあたりで冷静にならないと、米国全体が危機に瀕し、国力が衰えることにもなる」と警告していた。

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筆者:古森 義久