マンションの居住者による積立金で行われる、大規模修繕工事。「住まいが新しく生まれ変わる」と誰もが待ちわびているこの一大事業に、近年問題が多発しているようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、平然と利益相反行為を行う「悪質設計コンサルタント」の実態を明かしています。

不適切コンサル問題と国交省の相談窓口

こんにちは! 廣田信子です。

大規模修繕工事は管理組合にとって一大事業です。これを公明正大に適正に実施するというのは、簡単なことではありません。大きなお金が動くので、設計コンサルタントや施工業者の選定には、様々な思惑が渦巻くこともあります。

昨日の記事「理事長、理事会への不満・不信はいつの時代も変わらない」にも書いたように、大規模修繕工事を巡る内部紛争は多いのですが、その大半は、設計コンサルタントや施工業者選定に絡むものです。

そういった状況を踏まえ、平成28年3月の適正化指針(マンションの管理の適正化に関する指針)改正では、

工事の発注等については、利益相反等に配慮して適正に行われる必要がある。

と追記されました。そのくらい発注に関する問題がマンション管理の適正化のために放っておけないような状況になっているということでしょう。でも、そう言われても、管理組合は具体的にどんなことに気をつけたらいいか分からないのが実態だと思います。

具体的に何が問題かということについて、平成28年11月に、一般社団法人マンションリフォーム技術協会という改修技術者の団体が、個人会員一同ということで、「不適切コンサルタント問題への提言〜マンション修繕業界の健全な発展のために〜」を機関誌の中で発表しました。

設計コンサルタントを仕事とする方々の中から、自分たちの業界に対する問題提起があったということで、関係者の中では話題になりました。

その中で述べられていることを要約すると…

設計管理方式では、コンサルタントと呼ばれる設計事務所が修繕工事の設計(仕様書の作成等)を行い、それに基づく施工会社からの競争見積による適切な工事費で、管理組合が施工者の選定を行うのを支援する。

さらに工事中は適切な品質を確保できるよう、現場で検査等を通じて施工者を指導し、増減実数清算や竣工図書類の確認を行う。

このように、公明正大に適切な大規模修繕工事を実施することを支援するのがコンサルタントの使命である。ところが、管理組合から業務を受託するコンサルタントの中には、修繕に詳しくない設計事務所や技術的には専門家とは言えないマンション管理士もいる。

また、コンサルタントを単なる金儲け商売と考え、管理組合の支援者としての使命を忘れ、施工業者よりバックマージンをとる不適切コンサルタントも存在する。これを放置したら、管理組合に割高な工事費という実害を与え、業界全体が信頼を失うことになる。

具体的には下記の問題点がある。

割高な工事費過剰な工事内容不明朗な工事発注甘い工事管理不適切コンサルの拡大再生産真面目なコンサルタントの減少業界全体の信用が失われる

ユーザーである管理組合の正当な利益のため、マンション改修業界の健全な発展のために広く問題提起、啓発を行う。

としています。

そして、今年1月27日、国交省が「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」を関係団体に通知しました。関係団体だけでなく、管理組合や区分所有者に向けた文章がついていますが、このことを知っている管理組合の方は本当に少数だと思います。

この中では、大規模修繕工事における「設計・管理方式」は、適正な情報を基に透明な形で施工会社の選定を進めていくために有効な方式である。しかし、管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘さている。

とし、不適切な例として、

ケース1

コンサルタントに依頼したが、そこには実際には技術者はおらず、調査診断、設計等を行ったのは施工業者で、その施工業者に発注することが内定した。

ケース2

設計会社は、施工業者の候補5社のうち1社のみに少ない数量を伝え、見積もり金額を低くし、その業者に決まりそうになったが、この事実が発覚、設計会社に説明を求めたら業務を辞退した。その後、別の設計事務所で工事項目や仕様書を見直したら多数の問題点が発覚、作り直しとなった。

ケース3

一部コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるよう不適切な工作を行うことを前提に、格安のコンサル料で受託し、結果的に管理組合に損害を及ぼした。

をあげ、コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場で施工業者選定が公正に行われるよう管理組合が注意する必要がある。

としています。

さらに、建設労働者の社会保険未加入問題を受け、大規模修繕工事の発注に際しても、適切な法定福利相当額を含んだ額で契約を結ぶ必要があるということにも触れています。過剰な価格競争が、現場労働者を社会保険未加入というような厳しい状況におくことにつながっている現状を管理組合が理解することも必要だということです。

このところ、私のところにも、非常に深刻な相談が以前にも増して届くようになりました。国交省の通知の影響かと思ったら、その通知自体を知らない方が大半です。「注意する必要がある」って何をどう注意するのかと言われると悩ましいです。

自分たちでは適正かどうか分からないから、専門家にコンサルを依頼しているのに、そのコンサルが信用できないとなったら、どうしたらいいか…と思われるのも当然です。

私もどう答えればいいか、ずっと悩んでいましたが、とにかく、今、何かがおかしいと思っている渦中にいる管理組合は、国交省が相談窓口を設置していますので、ぜひ相談をしてください。

相談窓口は下記の2つです。

● 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター

 0570-016-111

※ 施工費用について見積チェックサービスあり(無料)

● 公益財団法人 マンション管理センター

 03‐3222-1519

今日の内容で、2つの公表されている文章を私が要約している部分はぜひ本文にあたって確認して下さいね。

image by: Shutterstock.com

 

『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』

著者/廣田信子(記事一覧/メルマガ)

マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。

出典元:まぐまぐニュース!