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“日本一足が速い女子大生”がさらなる飛躍のため新たなスタートを切っている。「炎の体育会系TV」(TBS系)などにも出演した藤森安奈は、昨年9月の日本インカレの女子100メートルで優勝。今年3月に青山学院大学を卒業し、今春からは宝飾品販売大手As-meエステールに所属している。陸上の強豪チームではない場所に就職する道を選んだ。美しく、走る。その活躍が企業の存在をPRする“ジュエリー・アスリート”としての生活だ。社会人アスリートとして「多くのサポートを受けている」が、「自分の結果には満足はしていない」という。苦悩に打ち勝ち、美しく東京五輪を目指す。23日開幕の日本陸上選手権(兼世界陸上選手権ロンドン大会代表選考会)にも出場する最新の生の声を。

撮影 岸本勉 中村博之(PICSPORT) 取材 大崎量平 構成 編集部



○環境の変化から来る苦悩「自分を追い込まないと進歩しない」



ーー社会人アスリートとして新生活をスタートさせました。

春に大学を卒業して、社会人になり、学生時代よりも会社の手厚いサポートもあって、いい環境で自分がやりたいようにトレーニングに打ち込めています。でも、ここ最近、毎日が悔しいというか。思い通りにはいかないなと。私が思い描いていた姿とは全然違うので。それが悔しいです。最初から自己ベストを出したかったので、でも蓋を開けてみたら全然出せずに。冬の練習がすごく充実していたので、怪我もせずにしっかりできていたので。生活も変わって、環境はよくなったと思うんですけど、なかなか思うような結果が出せない自分が不甲斐ないと…。

ーー5月20日に行われた東日本実業団陸上100メートルでは12秒03と不本意な結果でした。

最低11秒8は出したかったんですけど、12秒かかってしまい、本当に何やっているんだろうって。気負いすぎてしまった部分があって、速く走らなきゃあいけないという気持ちのほうが強くなってしまって、自分らしい走りがまったくできなかった。ただ、次の日、200メートルに出場したんですけど、開き直って思いっきり走ろうと思い、前半から飛ばして、タイムは24秒64。当日は風も強くコンディション的には良くなかったのですが、その中で自己ベストの24秒27に迫る、まずまずの走りができました。だから、コンディション的には悪くなく、100メートルで結果が出なかったのは、プレシャーで体が硬くなって、スムーズな動きができなかった。メンタル面の問題が大きいんだなと。



ーー大学時代と比べて、競技生活に変化はあります?

社会人になってから週2回くらいで大学のときはできなかった体の中から鍛えるトレーニングをR-bodyさんで行っています。息の吐き方から始めて、バランスボールやチューブなどを使って、体幹を鍛えています。トレーニングを開始して2カ月が経過しますが、しっかり体の中から鍛え上げることで、ランニングのフォームを客観的にとらえられるようになりました。一歩の蹴り出しの力強さが格段にアップし推進力が生まれ、楽に前に進めるようになりました。継続していれば、必ず試合での結果にも結びつくと思っています。

ーートラックでの練習は青山学院大学の相模原グラウンドを練習拠点にしていますが、主にどんなメニューを?

水曜日はスタートダッシュ系、土曜日は加速系、日曜日が長い距離を持続する持久系という振り分けになっています。250メートルを全力で3本走ることもあり、日曜日の練習が一番きついです。15分休まないと動くことができないくらい追い込みます。だから、土曜日の夜は憂鬱な気分になります(笑)。すごく嫌いなメニューなんですけど、だからといって好きなことばかりやっていても、結局、自分を極限まで追い込まないと、人間は進歩しませんからね。



○勝負色はピンク。「魅せる走りも追い求めたい」



ーー試合時のルーティンはありますか?

しっかりメイクをして試合に臨むようにしています。メイクをすることで、さらに気合いが入るんです。大学入って2年生くらいから、なんかモチベーションが上がるから。選手として速い、強いだけでなく、応援してくれる人たちのためにも魅せる走りも追い求めていきたいって。速いっていわれるのはもちろんですが、キレイな走りだねって言われると気分がいい。メイクをしたら反響もあって、それもうれしくて。そんなに女子力高くないんですけど、インスタを見て、この女の子のメイクかわいいなって参考にしています。試合のときは必ずピンクのアイシャドウを塗っています。ピンクは私の勝負色なんです。

ーー美へのこだわりももちろん強い。

腕は日焼けしているんですけど、顔だけはシミをつくりたくないので、頑張って美白をキープしようと思っていて、ケチらずに、いい日焼け止めや美容液を使うようにしています。あと、勤務しているAs-meエステールにも「珠花」というブランドで洗顔から化粧水、乳液などが揃っていて、それも毎日使っています。普段着は楽チンな格好が好きなのですが、おしゃれなインスタグラマーさんの投稿見て、ファッションの参考にすることもあります。でも、かわいいと思ったら、すぐ買っちゃうんです。足が長く見えるハイウエストのパンツは、今年の春夏の注目アイテムなのですが、最近購入しました。やっぱり女子なので流行は気になります。



ーー普段の生活習慣で気をつけていることは?

ちょっとしたことで、体重の増減が大きいタイプ。大学時代は、個々に目標の体重が与えられて、それをオーバーしてしまうと、監督から「練習に参加しなくていい。もう帰れ」と言われて。本当に泣きながら帰ったこともあるんですけど、そういう辛い経験があるので、自己管理の意識が高まりました。食生活には特に気をつけています。栄養の本を見て、自分なりにアレンジして作るようにしています。さっぱり系にしたり、サラダに乗せたり、甘辛くしたり、鶏ささみをいろんな味付けにして、飽きないよう工夫しています。ネットでレシピを検索して研究しています。

あと、社会人になっていろいろ自分でもケアグッズを買うようになって、家でもお風呂から上がった後に自分でもケアするようにしています。一番のお気に入りはストレッチポール。音楽を聴いたり、スマホを見ながら、体を伸ばせるし、ストレッチポールの上に寝転がり、ゴロゴロして体をほぐしています。

ーーモチベーションを維持するためには息抜きも大切。どのようにリラックス、気分転換を?

甘いものも大好きでビールも大好き。試合が終わって、いい結果だったときは甘いもの食べて、ビールも飲もうってなります。でも、結果が悪かったときはもうちょっと我慢しようと。あと、私は野球が大好きなんですけど、ひとりで横浜スタジアムに足を運んでベイスターズを応援しながら、ビールを飲むのが一番の息抜きです。私が観戦すると勝率もいいです(笑)。

あと、ひとりドライブも好き。お気に入りのコースは、江の島や由比ヶ浜方面。夜、海岸沿いの道を走って、パーキングに停めて、波音を聞きながら夜空を眺めるんです。車の中では、C&Kさんや平井大さんのバラードをよく聞いています。昨日もケツメイシのバラード聞いて、涙を流しました。泣くとスッキリして逆に元気が出るんです(笑)。

試合直前はさすがにバラードは聞きませんよ。そのときは、ベイスターズの各選手の登場曲を聴いてテンションを上げています。その中でも、筒香さんの登場曲のラップ調パートが好きなんです。以前それを聞いて試合に臨んだら、実際に優勝することができたので、私にとってラッキーソングでもあります。

ーー理想の男性像は?

すごい話を聞いてくれる人がいいです。優しくて、そうですね、いろんな面で余裕がある人がいいです。ビジュアル的には私、ちょっと変わっているみたいで、みんなにこの人かっこいいよねと言ったら、えーという反応をされる(笑)。松岡修造さんの顔が一番好きなんです。ネプチューンの原田泰造さんも好きです。