アマゾン買収後のホールフーズの未来 ベゾスが示した重要なヒント

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小売業界は先週、米アマゾンが米高級スーパーチェーンのホールフーズ・マーケットを137億ドル(約1兆5200億円)で買収するとの発表で大騒ぎになった。これにはもっともな理由がある。

アマゾン・ドット・コムが書籍販売以外の分野に裾野を広げて以来、ジェフ・ベゾス率いる同社はさまざまな業界を次々と破壊していった。今度は食品業界がターゲットのようだ。

しかし、従来の食品小売業の株式が低迷する中、ベゾス指揮下の新生ホールフーズの全容については、さまざまな臆測がまるで鍋の中の有機レンズ豆のように渦巻いている。

アマゾンがホールフーズを変えるのか、ホールフーズがアマゾンを変えるのか?ホールフーズの食品はアマゾンを通して直接消費者の玄関に届けられるようになるのか?それともホールフーズは、理想的な購買層が住む地域でのアマゾンの実店舗形態での販売拠点となるだろうか?アマゾンは価格引き下げのためホールフーズの品質を落とすだろうか?それともその強力な物流網を活かし、品質を犠牲にせず価格を削減するだろうか?

こうした疑問の答えを知る人は、ジェフ・ベゾスら上層部以外ではまだほとんどいない。彼ら自身も、これから長い時間をかけて答えを出すのではないだろうか。しかしベゾスは、一つの重要なヒントを提供した。ホールフーズのジョン・マッキーを最高経営責任者(CEO)の職に残すという決断だ。

マッキーCEOは、ホールフーズがテキサス州オースティンでヒッピーの自然食品店として創業した時代から経営を担っており、高品質な有機食品を大衆に届ける同社の本来の理念を固く信じている。

2013年に出版された共著『世界でいちばん大切にしたい会社 コンシャス・カンパニー』の中でマッキーは、自身の哲学が会社と共に進化を遂げてきた経緯を説明している。

フォーブスの取材に応じたマッキーは、同書の原題である「コンシャス・キャピタリズム(意識の高い資本主義)」について「企業が常に高い目的意識に基づいて行動するようにすることで、世界により良い影響を与えるようにするビジネスの考え方」と説明している。

ホールフーズの場合、常に保持してきた高い目的意識は、持続的な農業と健康的で高品質な食品だった。

他の食品チェーンは、米国で高まる有機食品への需要から利益を得ようとしてきた。ウォルマート、コストコ・ホールセール、クローガーといった小売大手は、より低コストの代替商品を提供し、ホールフーズの顧客を奪うことに成功している。こうした企業の勝利要因は、マッキーがホールフーズ経営に当たり下す決断の多くを左右してきた大きな目標に、あまり関心がないことにあった。

有機食品市場で起きるこの「底辺への競争」への参加を渋ったことで、マッキーはウォール街との対立を深めていった。多くの大手投資企業が、ホールフーズの市場シェア低下と事業機会損失への懸念を声高に表明してきた。

それでも、マッキーは自身の立場を変えようとしなかった。先週、米誌テキサス・マンスリーのインタビューで、ホールフーズの売却強要を試みていたヘッジファンドのジャナ・パートナーズを「欲深いやつら」の集まりだと激しく批判している。

ジャナなどの投資企業は、ホールフーズにアマゾンからの申し出を受け入れさせたことで勝利を収めたかもしれない。だが、マッキーがベゾスと協働し、ホールフーズの中核的な価値と理念を犠牲にすることなく会社を成長させることができれば、まだマッキーにとって勝利の可能性はある。

ベゾスは、少なくとも現時点ではその価値を認めているようだ。買収発表後の声明で「最高の自然・有機食品を提供し、健康的な食事を楽しいものにするホールフーズ・マーケットは、何百万人もの消費者から愛されている」と述べている。

もちろん、この姿勢は今後変わる可能性がある。ベゾスは移行期の秩序を保つためにマッキーを利用しているだけで、買収手続きが完了し次第、解任するつもりなのかもしれない。しかしそれまでは、マッキーがトップの座に留まることで、ホールフーズは高級有機食品チェーンのまま存続し、単にウォルマートのウェブサイトと環境意識を改善したような企業にはならないことを示している。