6月16日から3日間にわたって行なわれた新潟公演で、今年の全日程が終了したアイスショー、『ファンタジー・オン・アイス』。全公演を通じて来シーズンのショートプログラム(SP)『バラード第1番ト短調』を演じた羽生結弦は、最初の幕張公演の最終日以来、なかなかノーミスの演技ができていなかった。


ファンタジー・オン・アイス新潟公演で、『バラード第1番ト短調』を演じる羽生 気合い十分で臨んだ新潟公演は、初日のオープニングで登場直後に軸がしっかりした4回転トーループを決めるなど、幸先のいいスタートを切った。しかし2日目の演技では、最初の4回転ループは着氷を少し乱すだけにとどめ、後半に入ってからのトリプルアクセルもきれいに決めたものの、その後の連続ジャンプでセカンドの3回転トーループ着氷時に転倒。演技後に苦笑いを浮かべながら両手を合わせ、観客に謝る仕草を見せた。

 だが、そこで終わらないのが羽生結弦。最終日は演技前から観客を大いに沸かせた。これまで、場内アナウンスと共に薄暗いリンクに登場する際には3回転ループを跳んでいたところを、この日はいきなり4回転ループを決めたのだ。その瞬間、彼の登場に拍手を送っていた観客からは悲鳴のような歓声が上がった。

 曲がかかった本番では、最初のループこそパンクして2回転になってしまったが、その後のスピンから気持ちを入れ直してトリプルアクセルを大きくフワッと決め、2日目に失敗した4回転ループからの連続ジャンプもきれいに着氷。感情のこもったステップシークエンスは、昨シーズンのSP『レッツゴー・クレイジー』を彷彿とさせるような鋭さと力があり、最後はスピードのあるコンビネーションスピンで締めて、納得の表情で演技を終えた。

 羽生は、2014年ソチ五輪の翌シーズンから2シーズン使っていた、バラード第1番を再びSPに選んだ理由を、「この3年間があった今だからこそできる、バラード第1番をやりたいなと考えたんです。僕は、歌手のライブのように1回1回違う演技ができるタイプだと思うので、そういう違いを大事にする演技をしたい」と明かしている。

 昨シーズン、『レッツゴー・クレイジー』では一度もノーミスの演技ができず、シーズン最後の世界国別対抗戦では、「完全に苦手意識が生まれ始めていると思う」と話していた。昨シーズンのSPは夏場の練習であらかた完成したこともあり、自分の理想の演技と実際の演技とのギャップに苦しむ1年になってしまったのかもしれない。

 そのため、新シーズンのSP『バラード第1番ト短調』は、昨シーズンのフリー『ホープ&レガシー』のように、あえてコンセプトを作らず「その時の自分が思うがまま、感じるがままの演技をしたい」と羽生は語る。目の前にある要素に集中して演技を重ねることで、自分の感情をあるがままに出し切れるような滑りを目指していくようだ。

 ファンタジー・オン・アイスでは、会場ごとにリンクのサイズや氷のコンディションを見て跳ぶ位置を選んでいたジャンプも、これから競技サイズの広いリンクでの練習を積み重ねることで、ショーバージョンから競技バージョンへと進化させていくだろう。アイスショーでの演技は、羽生のさらなる飛躍を大いに期待させるものだった。

 また、この公演で羽生と同様に新SPプログラム『ビバルディの四季より「冬」』を演じた宇野昌磨は、最初の4回転フリップと後半の4回転トーループを単発で入れた構成で、まずは曲に慣れることを優先させているように見えた。まだ序盤には硬さもあり、4回転フリップも完成一歩手前という状態。しかし、中盤のステップシークエンスからは曲に気持ちも入り始め、後半の4回転トーループとイーグルから入るトリプルアクセルは余裕を持って決めると、その後のふたつのスピンをスピードに乗った滑りでこなしていた。宇野の場合は羽生と違い、まだ別のアイスショーにも出場が予定されている。その中で着実に演技の質を高めていく構えのようだ。

 さらに、ショーのなかで行なわれたアーティストとのコラボレーションでは軽さとキレ、スピードのある滑りを披露していたハビエル・フェルナンデス(スペイン)も、第2部ではエキシビションナンバーの『パイレーツ・オブ・カリビアン』と交互で、新SPを披露した。今のところ、ジャンプは4回転トーループと3回転ルッツを前半にやり、後半にトリプルアクセルという構成だが、練習や最後のジャンプ合戦では4回転ループに挑戦していただけに、シーズン本番にはそれを組み込んでくる可能性もありそうだ。

 一方の女子は、すべてエキシビションナンバーでの演技だったが、アンナ・ポゴリラヤ(ロシア)が幕張と神戸の公演に登場。こちらもアーティストとのコラボレーションでは、幕張は大黒摩季の歌と清塚信也のピアノの『ザ・ローズ』で、神戸では藤澤ノリマサのピアノ弾き語りの『星に願いを』で重厚感のある圧巻の滑りを見せ、観客を魅了していた。

 新潟公演に出演した女王のエフゲニア・メドベデワ(ロシア)は、同じ『星に願いを』で、ポゴリラヤとはまったく違う軽やかでスピード感のある滑りを披露。その中に3回転の3連続ジャンプや2連続ジャンプを入れるという、彼女らしい爽やかさのある演技に仕上げていた。

 来シーズン、シニアに上がる本田真凜と坂本花織もエキシビションナンバーを大きなミスなく演じていたが、出色だったのは神戸公演のみに出演した三原舞依だった。プログラムは昨シーズンと同じ『タイスの瞑想曲』だが、その素直で伸びやかな滑りと、確実にジャンプを決める姿からは、昨シーズンに得た自信がそのまま滲み出ているように感じた。ここからしっかり準備を進め、新シーズンにさらなる成長を遂げもらいたい。

 観客を魅了するアイスショーの華やかな演技の中に、各スケーターの戦略が見てとれた。来年2月に行なわれる平昌五輪に向けた戦いは、すでに始まっている。

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