お手軽で副作用もない鎮痛剤としてVRがオススメ?(画像は研究で使用されたVRの一部)

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歯科医院での治療中、患者に自然の風景をバーチャルリアリティ(仮想現実、VR)で見せていると、虫歯治療の恐怖や痛みが軽減される――。

一風変わったVRの活用方法を英プリマス大学の研究者らが模索していると、2017年6月14日付のBBC電子版の記事が報じている。VRと言えばゲーム用途に専用のゴーグルが家電メーカーなどから販売されており、娯楽のための技術というイメージがあるが、本当に「鎮痛剤」代わりになるのだろうか。

同じVRでも効果に大きな差が

麻酔や鎮痛剤以外のもので患者の注意をそらし、痛みや不安、恐怖を軽減するという試みは以前からさまざまな方法が調査されてきた。虫歯治療に限定しても、「待合室に観葉植物をたくさん設置する」「治療中に自然の映像や音を流す」「3Dアニメーションを見せる」などが検証されている。

VRも例外ではなく、数年前からいくつかの研究が行われているが、実際の医療現場で効果を検証したものはほとんど存在しない。BBCの取材に対し研究者のひとりであるサビーン・パール博士は

「氷水に手をつけてどの程度まで耐えられるか、という予備的な実験ではVRを使用したグループは未使用グループよりも痛みと冷たさに長く耐えており、虫歯治療でも痛みの軽減が期待できるのはないかと考えた」

と答えている。

パール博士らが心理学専門誌「Environment and Behavior」に発表した論文によると、2013年8月から2014年10月までに虫歯の治療に2か所の歯科医院を訪れた患者のうち、実験に参加することに同意した18歳以上の患者70人を「海岸の風景をVRで体験するグループ」「街中の風景をVRで体験するグループ」「VRは体験しないグループ」の3グループへ無作為に分類。VRは市販のゴーグル型端末を装着し、30分ほど映像を見るというもので移動操作などはできない。

治療後に「痛みが全くない(0点)」から「痛みがある(1〜10点)」まででスコアをつける疼痛評価シートと、自己回答式のアンケートによるストレスや不安感の調査、VR利用者のみVRの感想も記入させている。

パール博士は海岸と街中、2種類のVRを用意したのは自然環境のVRであればより効果が高まるのではないかと考えたためだったと話しているが、結果は意外なことに海岸VRグループのみ他のグループに比べて痛みの平均スコアが2点以上低く、街中VRグループは体験しないグループと差がないというものだった。

個人差があることを指摘する声も

この結果に、パール博士自身もBBCに対し「自然環境が人のストレスを軽減することは以前から知られていた」と答えつつ、

「VRという同じ注意を逸らす仕組みを利用しているときでも、自然環境をモチーフにしたVRの効果が明らかに高かったことは驚きました」

と述べている。実験から4週間後に行ったアンケートでも、海岸VRグループの不安感は非常に低くなっていた。

治療に協力した歯科医師のメリッサ・オーブリー医師も「特別な鎮痛方法は歯科医師や看護師にトレーニングが必要で、麻酔を使用した場合は患者が治療後もしばらく注意する必要があるが、VRであれば患者も医師も少ない負担で提供することができる」とその効果を評価している。

ただし、VRは内容によって個人が感じる没入感に大きな差が出るため、「全ての人に均一の効果をもたらすVRが可能かどうか、さらに詳しく検証しなければ医療現場で利用するのは難しいのではないか」と指摘する声も寄せられているという。