市民団体「森友告発プロジェクト」が、5月22日財務省担当者を刑事告発

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 森友学園への国有地払い下げをめぐり、撤去費用8億円相当とされるごみが、実はなかった問題で、豊中市への情報公開により、背任罪を決定づける国が作成していた新資料が見つかった。森友問題の根本的解決に向けて、その資料の意味を考えたい。

 森友問題、加計問題と、安倍首相の縁故主義に端を発する不祥事が次々と暴露されつつある。6月11日付毎日新聞は、大阪地方検察庁は森友学園の籠池泰典元理事長を逮捕・送検する方針だと1面トップで報道した。しかし、森友問題の核心点である、ごみがないにもかかわらず、その撤去費用として8億円減額し、9億円相当の国有地を1億円で払い下げた官僚たちの、背任行為や事実を覆い隠すための公文書廃棄の罪はどうなったのか。

 もともと森友問題が今年2月以降大きな話題となったのは、国会で民進党の福島伸亭議員の質問に対し、安倍首相が「自分や妻が関与していれば、議員をやめる」と過剰反応したからである。安倍首相が自分の発言に責任を取らなければ、国の基本が揺らぐ。安倍首相夫人の昭恵氏が名誉校長となり、当初は肩入れしていた籠池氏が、気が付くと自分ひとりが悪者にされていたため、参議院議員の森友調査団の前で、安倍首相と昭恵氏の関与を示す100万円の寄付を明らかにし、その後、首相の一声で籠池氏の証人喚問が行われた。

 今回の検察による籠池氏逮捕は、安倍首相に逆らうものは逮捕され、賛同してポチのように付き従うものは逮捕を免れるという点で、実にわかりやすい構図である。しかし、日本は3権分立の議院内閣制で、首相は行政のトップでしかない。議会が多数与党でルールを外して運営され、司法まで首相の意向で左右されることになれば、独裁国家になってしまう。

 すでに3月22日、大阪地検には、近畿財務局他の官僚たちを氏名不詳で訴える刑事告発状が出され、受理されている。一方、東京地検特捜部にも5月22日に刑事告発状が出されている。東京地検への刑事告発状(註1:告発状)では、大阪での刑事告発ではまだわかっていなかった、土地深部には8億円のごみがなかったことを示す書証(甲1〜甲25号証)が付けられている。市民団体や国会議員が調査収集した資料や国会での質疑の議事録などの公文書が、約10cmもの厚さになる分量が提出されている。国中を揺るがせる森友問題に本来なら検察が汗をかいて調査しなければならないものを、市民団体が調査資料をそろえて出したのである。

 ところが、すでに告発状の提出から20日以上も経過するのに、東京地検はこの告発状を受理すらせず、放置している。もしこのまま本丸の国の官僚、すなわち近畿財務局と大阪航空局、安倍首相の関与問題を放置したままで検察が籠池氏を逮捕した場合、司法の独立が疑われる由々しき事態になると心配される。

●情報公開請求で新資料見つかる

 森友問題では、加計問題同様に国は関連資料を廃棄したり、一部を黒塗りにするなどして、都合の悪い部分はすべて隠している。国や自治体など行政が持つ文書は、基本的には官僚の所有物ではなく、国民の文書である。あまねく国民が知ることができるというのは、情報公開の原則である。

 ところが、森友や加計問題については、官僚たちはこの原則に背を向け、安倍首相と内閣府に忖度し、情報隠しの違法行為を繰り返している。この違法行為が意図的に行われていれば、刑事罰の対象になる。

 そこで、市民団体「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(八木啓代代表)は5月16日、公用文書等毀棄(きき)罪で東京地検に訴え、NHKをはじめ大手メディアにも大きく報道された。

 今回見つかった新資料の名称は、「平成23年度大阪国際空港場外用地(0A301)土壌汚染深度方向調査業務報告書」(2012年2月)である(以下、本件深度報告書)。この資料のなかには、本件土地の地層図(写真1)やボーリング箇所の柱状図(写真2)が含まれ、この資料から、深部にはごみがないことがわかった。そして何より重要なのは、作成者が今回の売買契約に当たって、深部に2万トンのごみがあると鑑定した国、国交省大阪航空局であることであった。

 写真1の地層図には、上部からB1、B2の盛り土層、それに続いてAC1,AC2,AC3の沖積粘土層、AS沖積砂質土層などが続き、盛り土層のB2には「ガラ混じり砂礫」と書かれているが、それ以深はいわゆる堆積層が続き、数百年前に溯って形成された層であり、いわゆる廃棄物、ガラなどが埋設されているはずもないことがわかる。

 写真2の柱状図には、敷地内の5カ所の地点で、ボーリングの穴を約10mまで掘削し、9段階に分けて土壌の性状と埋設物のあるなしを調査している。ここでも3mより浅い部分からは、土中にコンクリート及びレンガ片、ビニール等のガラが混じっていたことが報告されているが、深部にはそのようなごみは存在しないことがわかる。

 既報のように本件用地は、国交省大阪航空局が騒音防止対策地域として、居住者の立ち退きを求め、のちには豊中市の防災避難公園にするとの名目で所有していた土地である。国有財産を処分するに当たってその実務を、財産処理のノウハウを持つ財務省近畿財務局に事務委託していた。売却に当たって、近畿財務局が本件用地の鑑定を依頼したのが、大阪航空局だった。今回見つかった新資料は、その大阪航空局が5年前の2012年に調査していたものである。

 同資料は、国が森友に本件用地を貸し付けたり売買譲渡したりするに当たり、参考資料として明記していたものである。つまり国有財産を処分する担当者自身が、この資料の存在を知っていたことになる。

 貸し付けに当たって結んでいた「国有財産有償貸付合意書」(15年5月29日)や売買譲渡するに当たって結んだ「国有財産売買契約書」(16年6月20日)のなかに、本件深度報告書を記載の上、それぞれ「(これら)記載の地下埋設物の存在及び土壌汚染の存在を了承する」「記載の内容を了承した上で、売買物件を買い受ける」としていた(写真3参照)。

 このように合意書や契約書を締結するに当たり、本件用地の状態を契約当事者である国と森友が双方で確認する資料として取り扱っていたのである。合意書や契約書のなかに示された資料にはその他、本件用地の3m未満の地下に68カ所にわたって、埋設ごみが散在することを報告した「平成21年度大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査業務報告書(OA301)平成22年1月」などを含めて4つの資料があり、浅い部分にはごみがあったと記されていた。

 今回見つかった新資料は、そのような資料のなかにあり、本件用地の深部にごみがないとする報告が掲載されていたのである。
以上のように、今回の新資料は森友問題における国の官僚たちによる背任行為を立証するうえで、極めて重要な内容が含まれている。

(1)3m以深にごみがない。
(2)作成したのが国交省大阪航空局であり、大阪航空局は一方で本件用地に2万トンのごみがあるという、まったく矛盾する虚偽の鑑定を行っていた。
(3)国と森友との貸付合意書や売買契約書の契約時点で、この新資料を前提にし、契約を進めた財務省や国交省の背任行為が明らかになった。

 先に紹介した財務省が保有していた「(仮称)M学園小学校新築工事 地盤調査報告書 平成26年12月」によって、そこに示された地層図でも、深部にはごみがなかったことが示されていた。ところがこの資料の作成者については黒塗りし、財務省はどのように入手したのかについても、国会議員からの問い合わせに対しても隠し続けてきた。その後、鑑定に使ったという証言を得て、告発が行われていた。しかし今回の新資料は、作成日も作成者も明確であり、さらに今回の貸し付けや譲渡契約においてもこの資料を参考にしていたことがはっきりしたのである(註2)。

●8億円相当のごみがない…周辺事実が次々に明らかに

 筆者は、森友問題で調査収集と科学的な分析の上に、「撤去費8億円相当とされるごみはない」と指摘してきた(4月12日付当サイト記事『【森友問題】地中深部ごみは『存在しない』との報告書…8億円値下げは計算の間違い』参照)。

(1)隣接する豊中市が購入した土地は、防災記念公園として計画された土地であり、周囲の土地と10倍の開きがある(自由党 森ゆうこ参議院議員提出)。
(2)同土地の断層調査(仮称M学園資料平成26年12月)では、3m以上の深部にごみがないという報告があった(社民党 福島みずほ参議院議員提出)。
(3)算定式が、深部の新たなごみを算定するとしながら、すでに撤去したごみを二重に計算するなど、算数の足し算や引き算を間違うレベルの幼稚な間違いを犯していた。

 こうしたなかで、8億円のごみがあったのか、なかったのかという問題の解明については、以下のような経過をたどってきた。

(1)ごみがなかったことが、さまざまな調査データの分析から指摘され、インターネットを中心に広まった。

(2)ごみがあったとして8億円を値引いた国が、深部のごみの存在を自ら調査していなかったことがわかった。これは5月9日の国会審議で民進党の小川敏夫参議院議員の質問に、国交省の佐藤義信航空局長が「値引きする8億円の算定について、ごみがあった深さまで実際には確認せず、『総合的に勘案して見積もった』」と答弁して明らかになった。総合的に勘案してというのは、森友学園側の業者がそのように言っていたということでしかなかった。

(3)ところが5月16日に、籠池氏が民進党のヒアリングに出席し、森友側の業者や弁護士のやり取りメールを明らかにし、森友側の業者自身が深部にはごみがないという事実をつかんでいたことを明らかにした。

 このように、3m以深にごみがあることは、国が調べたわけではなく、業者が言っていただけとわかった後に、その業者自身が「ごみがない」ことを知っていた事実が明らかになったのである。
 
 さらに、新資料によって、もともと深部にはごみがなかったという調査報告書を、当の国交省大阪航空局自体が作成していたことがわかったのである。小川参議院議員の質問への国、国交省の答弁では、ごみがあることの裏付けさえ取らずに8億円を値引いていたというひどい実態が明らかになったが、今回の深部にはごみがなかったとする新資料を、その国交省が作成していたことを考えると、国会での答弁は、まったくの虚偽答弁だったことがわかる。

●籠池氏が明らかにしたメールの内容

 籠池氏が明らかにしたメールには、森友問題の背後の闇を知るうえで実に興味深い内容が含まれている。月刊誌「紙の爆弾」(7月号)で筆者が報告したその内容を、下記に引用・転載する。

 2017年5月16日に、民進党が開催したヒアリングで明らかにしたメールは、森友学園の校舎建設事業の設計にかかわったキアラ建築研究機関の杉本氏と、近畿財務局との交渉の窓口に立っていた酒井弁護士、校舎建設工事を担った藤原工業など内部でのやり取りと、近畿財務局や大阪航空局とのやり取りのメール(2016年4月〜)であり、驚くべき内容が書かれていた。

 同年3月11日の森友学園側からの、深部にごみが存在するという報告や、録音テープで話題になった財務省本省での籠池夫婦と田村嘉啓室長との面談を受けて、深部のごみの量と撤去費用の算定に関連したメールである。ここではすでに3月でのやり取りを受けて、深部にごみがあるものとして、近畿財務局が算定式をつくるため問い合わせを行っていた。16年4月1日に近畿財務局管財部の池田氏から下記のようなメールが出され、「提示を依頼する書類」が請求されている。

(財)「瑞穂の国記念小学院開校に向けご協力ありがとうございます。(略)5月末を目途に土地の評価額算定を実施し、(略)土地の売買契約を締結すべく作業を進めています」「つきましては、現在地表に野積みされている廃棄物の撤去、今後の建築基礎の掘り方を行い発生する土砂の撤去費、地中に埋設されている廃棄物層(略)等を適正に反映させ、価格提示行いたいと考えているところです」

 この中で「提供を依頼する書類」が添付され、ボーリングデータ、柱状図、掘削図などの提供が、要求されていた。これに対して、キアラ設計(キ)と酒井弁護士(酒)の間でのやりとりが以下の通り新資料には記されている。

(キ)「要求資料を作成するうちに、気になることがあり・・・・添付に計画地のボーリング調査資料を付けております。…これで行くと・・・約3m以深には廃棄物がないことを証明しています。・・・」(4/8)
(酒)「柱状図がないことは不自然でしょうか?・・実際にどうこうではなく机上の計算でも構わないというのが、近畿財務局の考え方なのではないかと思います」(4/9)
(キ)「やはり仰るように、言われてから提出する形をとるべきかと考えます。」(4/9)。
(酒)「柱状図の提出は、やめましょうか・・・あいまいな形では億単位の交渉はできません」(4/10)
(キ)「今回工事に係わるボーリング調査に関する資料は、抹消しました。」(4/10)
※以上、同資料に記載の原文ママ

 以上のように、近畿財務局側が深部のごみの存在について、深部での地層の様子を示す柱状図の提出などを求めている。これに対して、その柱状図を提出すれば、深部にはごみがないことが示されていて、深部にごみがあるとする主張と矛盾することになり、大幅な値引きが期待できなくなるとして、キアラ側と酒井弁護士がメールをやりとりし、ボーリング調査の結果の柱状図を提出しないことにしたことがわかる。そして森友の籠池氏は発注事業者だが、キアラと酒井弁護士との間でこのようなやり取りをしていたのを最近気が付いたという。

 このメールでもっとも重要な点は、ごみがあったと報告していた森友学園側が、そのごみはなかったという調査資料を持っていたことである。そして近畿財務局は、現場の実態を調査もせず、この森友学園側の事業者の主張のまま、ごみがあったとしていた点である。そして柱状図等が提出されていないにもかかわらず、2回目のごみの撤去に関連して、深部に約2万トンのごみがあるという算定式を偽装し、その撤去料として1トン当たり約4.2万円かかるとして8億円を算定したのである。

 筆者らは、これまでの調査・分析によって、2万トンを計算した算定式に矛盾点が多いと指摘してきたが、その指摘に符合し、算定式の出鱈目さを裏付けるメールである。

 今回の新資料でわかったことは、近畿財務局は本件用地の地層図や柱状図の提出を森友側に要求しながら、その地層図や柱状図を所有し、深部にはごみがないことを把握していたということである。森友側に資料請求しても出してこないと予測しながら、あえて請求し、深部にはごみがないことを、契約時には近畿財務局や国は知らなかったことにしたのである。そのことが今回の新資料で掴むことができたといえる。

●背任罪で刑事告発
 
「森友告発プロジェクト」(藤田高景共同代表)などの市民8人は5月22日、撤去料が8億円相当とされる2万トンのごみがないにもかかわらず、あるかのように偽装し、9億円相当の国有地を1億円に値下げし、国家財政に損失を与えたとして、背任行為で当時の近畿財務局局長と財務省の担当責任者、武内良樹、迫田英典2名ほかを背任罪で東京地検特捜部直告係に告発した。告発状はもうひとつ提出され、自民党候補者の応援に入った安倍首相夫人の昭恵氏付公務員秘書が選挙に帯同した件の公務員法違反も告発した(註3)。

 刑法は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」(刑法38条)となっている。そのため、告発に当たっては被告発人が違法行為を行ったというだけではなく、故意に罪を犯す意思があったことを立証する必要がある。

 今回の告発では、森友問題に取り組んできた国会議員が調査・収集した資料や、国会での質疑の記録や新聞報道なども交えた客観資料をつけて、深部にごみがないのに2万トンのごみがあるとした過誤を指摘している。その上で、被告発人らが犯した「過誤」は、

(1)森友学園に、大きな利益を与えること
(2)国が不当な損害を被ること

であると訴えた。そして今回の新資料の発見を受けて、この資料も東京地検特捜部に6月8日には追加提出された。 

 森友問題は、いよいよ8億円のごみがなかったとの事実の上に立ち、財務省官僚や国交省官僚たちが値引くことによって、国家財政に大きな損失を与えた点について、背任罪で訴える段階に到達した。

 今後、官僚たちはなぜそのような行動に走ったのか、そして安倍首相を忖度して取り組んだ犯罪行為に、安倍首相はどこまで関与していたのかが問われることになる。ちなみに告発状は、次のように結んでいる。

「本件は、国有財産を不当に約9割も値引いて払下げがなされたという、日本の政治の根幹を揺るがす極めて重大な犯罪である。被告発人を厳重に処罰し、同種犯罪を根絶し、日本の政治を正常化するために告発におよんだ次第である」

(文=青木泰/環境ジャーナリスト)