東京の女性たちは勘違いをしているかもしれない。

結婚できれば、それでハッピーエンドだと。

だが、生活を共にし始めてからが本番だ。婚活の次は、夫婦生活を継続するための「結婚維持活動」が必要である。

ー人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、 記憶力の欠如によって再婚する。

フランスの劇作家、アルマン・サラクルーの言葉のように、「結婚維持」のキーワードは果たして、忍耐なのか?

この連載では、東京で「結婚維持活動」に勤しむリアルな夫婦の姿をお届けしよう。

今週は、子育てに自分の命をかける専業主婦・の夫、翔の結婚維持活動に迫る。




<今週の結婚維持活動に励む夫>
名前:翔
年齢:34歳
職業:中央官庁勤務 課長補佐
結婚生活:3年9ヶ月目


僕はね、とにかく疲弊してるんです。


寝不足ですか、って?

寝不足じゃない日の方が珍しいんですよ。僕らみたいな仕事の場合。

土日はかろうじて休めますけど、平日はタクシー帰りは当たり前ですし、国会開催中は泊まりもあります。

擬錣瀬ャリアだって、外の世界では煽てられることもありますけどね。僕のところはそんなに花形の省ってわけでもないですし、地味なものですよ。

まぁ、ここまで頑張ってきましたからね。登りつめるしかない、とは思ってますけど。

家族のために?はぁ、そうですね…。

いや、僕はこの通り世間一般の流れに逆らって、育児にはなかなか参加できていないんですけど、これ、子供の写真です。可愛いでしょう?

最近なんだか意味のある言葉を喋るようになって、面白いなぁなんて見てますよ。

妻には、育児のことでかなり嫌味を言われてますけどね。彼女、結構手厳しいんです。


子供は可愛いが、それ以上のストレスが襲いかかる。


結婚相手に、母親の面影を重ねる男


愛との結婚を決めたのは、ちょうど30歳の時だったかな。

僕、結婚するとしたら絶対に頭の悪い女は嫌だなと思ってたんですよ。僕と同じ官庁勤めとか、きちんとキャリアのある女性と結婚したかった。

その点愛は、早稲田大学を出て会計士として精力的に働いていましたからね。品の良い、控えめな顔立ちもタイプで。完璧だと思いました。

実は、「頭の良い女性と結婚」というのは、私の母からの教えで。

「将来、翔ちゃんのお仕事を理解出来るような頭の良い女の子と結婚するのよ。」って、子供の頃から言われてたんですよ。




いやぁ、母は本当に色々としてくれましたよ。今でも頭が上がりません。

小さい頃から、なんていうのかな、幼児教育ですかね。

物心ついた時から、七田式とか右脳開発とかの教室や英語の塾にも通わせてくれたのを覚えています。受験も、ずっと母と2人3脚でやってきました。

勉強が嫌だ、とか思ったことないんですよ僕。母がすごい褒め上手で、あの頃は、期待に応えようってどこまでも頑張れたなぁ。

母は働いていなかったんですが、とても聡明な人で。僕の質問には何でも答えてくれてたんです。

だからやっぱり、結婚するなら母のように、頭の良い女性がいいと思いました。

まぁでも、結婚してみて一緒に暮らしてみると現実は違いますよね。

確かに愛は頭もいいし、身長が低いところとか、黒髪で品のある顔立ちなんて母に似たところはあるんですけど、中身は全く違う。

いや、当たり前なんですけどね。

僕がある程度激務であることとか、子供ができたら愛の方にキャリアを諦めてもらわなくてはいけない、っていうのは結婚前から分かっていたと思うんですけど、どうやらそのあたりが納得できなかったみたいです。

それで、僕が疲弊して帰ってきてるのに、平気で恨みつらみをこう、延々と訴えてくる。

勘弁してくれよ、って思いましたね。

こっちは、仕事ですでに胃に穴が空くほどストレス溜まってるわけですよ。そこに妻の泣き言なんて、聞いてられません。

まぁ、そんな時も僕は母に電話して、話を聞いてもらってかなり助けてもらいましたが、ストレスはピークでしたね。


そして起こった、あの事件


妻の恐ろしさを思い知った日


でも、あの時はさすがに恐ろしかったなぁ。

いやね、相手は職場に来ていたアルバイトの女性ですよ。それも、年もそう若くない女性。ただ彼女聞き上手で、なんとなく母に似ているところもあって。愚痴を聞いてもらってただけです。

まぁ何度目かに食事に行った時に、自然な流れで色々ありまして。LINEを交換していたのですが…。

それを見つけた愛の反応が、とにかく、恐ろしかった。

女っていうのは、常に自分を受け入れてくれて、落ち込んでいたら励ましてくれて、導いてくれる存在だとばかり思い込んでいた僕にとって、目の前で叫んでいる愛は、なんというか狂っていましたね。

こんな女とはもう一緒に生活できない、と思って、やっぱりすぐに母に電話しました。

そうしたら、「翔ちゃん大丈夫、私が全部なんとかしてあげるから」って、とにかく僕は仕事に集中するように、って言ってくれたんです。

ただ、その後しばらくは完全に僕、無視されてましたね。愛は実家にばかり帰っていたので、身の回りのことも一切母に頼んでいました。

でも、無視してくれて、いなくなってくれてホッとしましたよ。あの時期でずいぶん、精神的に回復しましたから。

やっぱりうちの母、すごいんですよ。

最近も、母が愛と僕と子供のランチをセッティングしてくれて、ザ・リッツカールトンの『ザ・ロビーラウンジ』に行ってきたんですが…。




愛のこと、すごく褒めるんです。

子育てのことで頑張ってるだとか、子供を産んだのにすぐ体型が戻って凄いわ、とかこんな素晴らしいお母さんなら私も安心ね、だとか。

とにかく愛が気分よく子育てできるようにって、会ってる間中言葉を尽くしてるんです。子供をベビーカーに乗せてホテル内を散歩して寝かせてきて、ゆっくり食事が楽しめるようにしてきてくれたり。

僕から見ても愛の子育て、危なっかしいなと思うことも多いんですけど、そこを上手に褒めて、愛の気分を良くさせるんです。

もう、魔法のようで。たまに会うだけじゃなく、いっそ母と一緒に暮らせたら、どんなに素晴らしいんだろうと思いますよね。

でも、そのおかげなのかな、愛も随分と精神的に落ち着いて、良い母親やってると思いますよ。子供の食事なんかも凝ったものを作って、野菜や肉なんかもこだわりのものをオーダーしているみたいです。色々教えてもらってるんでしょうね。

家庭のストレスはとりあえず軽減されましたかね。全て母のおかげです。

あぁ、でも考えたくないことも沢山ありますよ…。転勤です。

国内の他機関への出向とかなら、いいんです。でも海外研修なんてこと、今の僕と愛と子供の3人の暮らしになんて、果たして耐えられるかどうか…。

子供が大きくなってきたら、落ち着くんでしょうかね。とにかく、僕は今のまま、愛と母がうまくやってくれるのであれば、他にあまり望むものはありません。

おっと失礼。母から電話なので、これで失礼します。

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夫はいいけど、姑に「難あり」な、妻の本音に迫る。

【これまでの結婚維持活動夫妻たち】
Vol.1:結婚維持活動:婚活よりも大変な、結婚生活の“維持”。その秘訣とは?
vol.2:子供を持ちたい夫 vs 持ちたくない妻。結婚維持活動の妥結点とは?
vol.3:余裕がある分、悩み多き専業主婦。私の存在価値を作るのは、夫ではない