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昨年夏に発売した最新モデルが相次いで発火・発熱問題を起こし、全量回収という異例の事態に追い込まれたサムスン。最新モデルの『Galaxy S8』で“世界一安全なスマートフォン”を目指し、再び消費者からの信頼回復を図るために動き出した!

スマホの高性能化が起こした問題。品質管理強化で信頼回復を目指す



2016年10月にはサムスンが満を持して発売したフラッグシップモデル『Galaxy Note7』が、全量回収という大騒ぎになったのは記憶に新しい。飛行機への持ち込み禁止や他製品への不信感が高まるなど、バッテリーが焼損騒ぎを起こした同製品はサムスンの信頼を大きく失墜させるものとなった。世界シェア1位、年間3億台もの出荷台数を誇る同社が、なぜ、このような問題を引き起こしてしまったのだろうか。



▲『iPhone 7』の対抗機と目され、2016年8月に発売された『Galaxy Note7』だったが、爆発事故が相次ぎ、同年10月に販売中止。サムスンは徹底的な原因追及を数か月かけて行った。

スマートフォンの性能は年々高まっている。高性能なスマートフォンを動かすためには、より多くの電力が必要となるのだが、スマートフォンの大きさ自体には制限がある。つまり、スマートフォンに内蔵するバッテリーの容量は、年々高密度になっているということである。例えば、今回焼損問題を起こした『Galaxy Note7』のバッテリーを前モデルと比較すると、容量が17パーセントも増えたにも関わらず、端末自体の大きさはほぼ同等に抑えられていた。しかも本体内部の隙間は余裕がほぼ無く、防水化のため内部に籠った熱も逃げにくい構造になっていたと考えられる。



▲焼損原因は電池の歪み。バッテリーの容量を限界まで増やした結果、外部からの圧力で歪みが生じやすくなってしまい、内部で電極がショートしやすくなった。また、電極の設計にもミスがあり、それらが発火の原因となったと分析されている。

とはいえ、バッテリーを製造供給したのは実はサムスンではなく、バッテリーメーカーだ。サムスンはメーカー側に対して、厳しい品質基準を提示し、それをクリアした製品だけが納入される。つまり、粗悪なバッテリーが製造されたことにより発火が起きたのではなく、きちんとした規格に見合った製品がトラブルを起こしたのだ。また、当然ながらサムスン側も納入されたバッテリーの検査を行い、合格品のみを製品に搭載する。さらには出来上がった最終製品の品質確認だってしっかり行っている。これは国際標準化機構による品質マネジメント「ISO9000」などを取得している大手製造メーカーとしては当然のこと。サムスンはTVや冷蔵庫も手掛ける大手家電メーカーであることも忘れてはならない。



▲『Galaxy Note7』のバッテリーは2社が製造。サムスンは当初そのうち1社の製品に問題があるとして採用を中止したが、結局もう1社製のバッテリーを搭載した製品も焼損した。



▲『Galaxy Note7』は発表当時で最強のスペックを誇った。製品発表会ではiPhoneなど、他社との比較は一切行われずとも、あらゆる機能がそれらを凌駕するほどのものだった。

つまり、サムスンのトラブルは、年々高性能化するスマートフォンの各部品に対しての品質管理が、従来と同等レベルでは不十分で、より厳格かつ慎重に行う必要があったことを証明した。超高密度なバッテリーは、今までの検査方法では不具合を完全にチェックすることが出来なかったということだ。

サムスンはこのトラブルを教訓に、品質管理体制をゼロから作り直す。その中でも特筆すべきはバッテリーの全品検査だ。どのメーカーもバッテリー検査などは全体の1割ほど、抜き取り検査を行うのが常だ。しかし、サムスンはバッテリーを製品組み込み前の検査だけでなく、組み込み後に全数検査してから出荷することに決めた。もちろんコストや時間は当然掛かるが、人々が毎日肌身離さず持ち運ぶスマートフォンを製造するメーカーとして、安全な製品を作ることは責務でもある。もし再び発火トラブルを起こし、市場からの撤退を余儀なくされる損失を考えれば、当然の措置と言えるだろう。

サムスンの事件はスマートフォン業界全体に、バッテリーのみならず品質管理体制を考え直させる大きなきっかけとなったのは間違いない。その結果、この春から発売になった同社の新製品『Galaxy S8』『Galaxy S8+』が、最上級の安全基準を満たしたスマートフォンとなったこともだ。



▲最新モデルの『Galaxy S8/S8+』は角を取った曲面仕上げのディスプレイを採用。縦横比が18.5:9の横長サイズで5.8インチ、6.2インチどちらのモデルも片手で楽に持てる。最新のCPUを搭載し、高速通信にも対応するなど、この夏屈指のハイスペックなスマートフォンだ。

とはいえ、サムスンの製品への不信感はまだ払しょくされていないのも確かだ。だが、同製品がトラブルなく好調な売れ行きを示せば、それは消費者がサムスンの行った管理体制の改善を認めたということにもなる。だからこそ、日本上陸の予定もあるサムスンの新製品の動向に、スマートフォン業界全体が注目しているのである。

【サムスンの行った改善・安全対策】

バッテリーはメーカーから届いた時点での検査に加え、スマートフォン組み込み後で全品検査する。端末設計も安全第一とした。

・組み込み後のバッテリー全品検査

・検査を2段階に増強

・8種類の検査システム導入

・端末内部空間の確保

・社内関係部署間の情報共有

・部品専門チームの立ち上げ

・外部調査機関との連携強化

文/山根康宏

※『デジモノステーション』2017年7月号より抜粋