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いじめ防止対策推進法」の施行を受け文科省により設置された「いじめ防止対策協議会」。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』では、今年度第1回目の同協議会を傍聴された井澤一明・松井 妙子両氏がその内容をレポートしていますが…、やはりそこでは「子供のための議論」はなされていないようです。

いじめ防止対策協議会」 より深い議論を

6月13日、文部科学省で、今年度第1回目の「いじめ防止対策協議会」が開催されたので、傍聴に行ってまいりました。「いじめ防止対策協議会」は、文科省が設置した有識者会議で、2013年9月に施行された「いじめ防止対策推進法」の取組み状況の検証や、いじめ問題等について実効的な施策を講じることなどを目的としています。

昨年度の協議会の提言に基づいて、文科省は「いじめの防止等のための基本的な方針」の改定を行いました。そして今年度は、「いじめ防止対策に係る事例集」の作成や、「SNSを活用したいじめ相談体制の構築」について、検討が始まりました。

いじめ対策事例集」は、全国の学校からいじめ解決の成功事例や実際の工夫、気を付けるべき点などを集めて、事例集にまとめて共有することを目指しています。今回の会議の中では、

「学校からだけではなく、子供たちや保護者の声も集めてはどうか」

「これをやってはいけない、というものばかりではなく、こうすると解決するという事例も掲載すべき」

「事例集を校内研修などで使うこと」

「マニュアル通りにしかしない先生もいる。事例集があっても、自分で考え、周囲と相談しながら解決していくことが大切」

「すぐれた先生が1人いたから解決したではなく、いじめは複数で解決していくことが基本」

「教育学部の学生や教職課程の学生などにも事例集を配布すべきではないか」

など次々と意見があがっておりました。

気になった意見としては、「最近は保護者が学校に弁護士を同行してくる。その対応も記載してはどうか」というものがありました。これに対しては、「弁護士が同席しても対処は同じはず。弁護士も子供の安全のために行くのであって、対立するためにいくのではない」という反論がありほっとしました。

また近頃はよくあることですが、「ICレコーダーで録音する保護者もいる」と意見に対しても、「録音は学校も行えばよい。あげ足とりをしようと録音するわけではない。事実関係をはっきりさせるために録音する」と当然の反論があり心強く感じました。

特に、座長の森田洋司教授(鳴門教育大学特任教授)は次のような意見を述べておられました。

「編集の大きな柱としては、リスクマネジメントの観点も大きな柱になる。人間が対応するので、過失、認識違い、無視、軽視、怠慢などが起きる可能性はある。これにいかに備えるか」

加えて「いじめは、いじめる加害者がいなければ被害はないと言われる。しかし、事例集においては、学校が第2の加害者とならないことも大事な視点だ」との考えを示されました。

実際、私たちのところに入ってくる相談をみても、教師の対応によって、被害生徒が不登校に追い込まれることも少なくありません。あるお母さんが「うちの娘がいじめられています」と担任に相談したところ、担任は、その子からのいじめの聴取もせずに、いきなり教室で「話し合いの時間」を持ちました。その結果、被害生徒は次の日から不登校になってしまったのです。その子にとって「話し合いの場」は加害生徒や周囲の生徒たちからの

いじめではない、私たちこそ被害者。皆、迷惑している」

「あなたのここが、皆に嫌われている」

「欠点に気づいてほしいだけ」

等々の正当化の申立と、被害者の欠点を指摘され続けただけの1時間だったのです。

教師は、まずは被害状況を確認し、加害者を呼んで指導するという手順を踏まなくてはなりません。「話し合い」が個人攻撃になるのならば、介入して止めるのは当然のことです。しかし、こんなことも理解していない教師が現実にいるのです。森田教授のところにも、いじめを相談したら、よりひどくなったという事例が数多く寄せられているのでしょう。

もう一点、重要な議題として、「SNSを活用したいじめ相談体制」の検討がなされています。現在、文科省は「24時間いじめ相談ダイヤル」を設置しています。しかし、今の子供たちは携帯電話であっても電話をかけないので、現実とのギャップがある、という現状への対策として、「子供たちが使っているSNSで相談を受ける体制をつくる」という検討が始まったのです。しかし各委員からの意見にはやや失望を感じてしまいました。

「電話ならかけてきた場所が分かるので、そこの教育委員会に転送できるが、SNSだと相手の場所が分からない」

「こちらの回答が文字として残るので慎重になる。拡散されたりすることもあるのでは?」

「今、電話相談を受けているのは主に退職後の方たち。SNSになれていない」

「真夜中に『死にます』とか、『今切ってしまいました』などと深刻な相談がくる。相談を受けるほうの負担が大きい」

「子供のための議論」ではなく、相談を受ける側の論理での発言が多すぎます。「事例集」にしても「SNS相談」にしても、「子供たちを守る」という基本姿勢を崩さずに、信念を持って臨んでいただきたいものです。

6月は、いじめも多くなりがちです。不安に感じたら早めの相談をご検討ください。ご相談をお待ちしております。

いじめから子供を守ろう ネットワーク

井澤・松井

image by: Shutterstock.com

 

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出典元:まぐまぐニュース!