【試乗記】大幅に進化したSUBARU「アイサイト ツーリングアシスト」を体験試乗 「まるで運転の上手いロボットが手伝ってくれるような感覚」

【ギャラリー】Subaru EyeSight Touring Assist45


SUBARU独自のステレオカメラを使った運転支援システム「アイサイト」が、また大幅に進化した。今年夏に発表予定の「レヴォーグ」と「WRX S4」に標準装備される「ツーリングアシスト」と呼ばれる新機能を、Autoblog記者が一足先に体験してきたので、その印象をご紹介したい。



かつて「ぶつからないクルマ?」というTVCMで、衝突被害軽減ブレーキに対する認知を一般に広く進めたSUBARU(当時は富士重工業)のアイサイトだが、今や単に前方車両に「ぶつからない」機能だけでなく、前走車に追従して発進、加速、減速、さらには操舵のアシストまでしてくれるように進化した。

もちろん、従来からアイサイトには「全車速追従機能付きクルーズコントロール」機能が搭載されているが、今回のアップデートでは、車線が消えていたり渋滞していて見えない状況でも、カメラが先行車を認識して、これについていくように、低速域から(0km/hから)ステアリングも制御できるようになった。メーター内のマルチインフォメーションディスプレイには、先行車を認識しているのか、車線を認識しているのか(片側か両側か)、あるいは両方とも認識しているのか、その作動情報が表示されるのだが、運転している際にはそんなもの、まったく意識させられることなく、"半自動運転"で筆者を乗せたレヴォーグは前走車を追っていく。



カーブに差し掛かると、まるでステアリングに見えない手が優しく添えられるかのように、そっと"操舵という作業"を手伝ってくれる。前走車が停止すれば、なるべく乗員に減速Gによる負担が掛からないように、見えない足が2次曲線的にブレーキを踏み、停止する直前には上手なドライバーがするように、ブレーキペダルを踏む(見えない)足の力をすっと抜く。もちろん、停止状態から前方車両が急発進しても、この見えない足は乱暴にアクセルペダルを踏んだりしない。できるだけ加速Gが急激に発生しないようにスロットルを開けていく。



その一連の動作は、運転が上手なロボットが一緒に乗って、自分の運転を手伝ってくれているような、そんな感覚を覚える。しかも鉄腕アトムのように人間味を感じさせるロボットだ。決して「制御」「介入」という言葉から想像するような、人間の意思を無視した無機的な力が割り込んでくる感じではない。技術に人間的な温かみを感じる。この点が最も印象深かった。きっと長距離を走った後には、共に運転をしてきた相棒に「お疲れ」と思わず声を掛けたくなるに違いない。アシストを行う様々な機能が、正確であることよりも、自然であること、さらに言えば洗練されていることに感心させられる。この"運転の上手さ"は、ひたすら現実の路上を走り込んで設定を煮詰めることで完成させていったという。あまりにジェントルな運転にしてしまうと、「遅い」「かったるい」と言われてしまうのが難しいところ、とエンジニアの方は仰っていた。

ただし、このロボットはあくまでも人間の運転を手伝ってくれるだけなので、ステアリング・ホイールからドライバーが手を離したままでいると注意を受ける。SUBARUの場合、この検知はタッチセンサーではなくステアリングに掛かるトルクをもとに判断しているため、まったく力を入れずにステアリングに手を添えているだけでは、機械が勘違いして注意されることもあった。アイサイトと人間の"友好関係"を築くためにも、この辺りはもう少し改善が必要だろう。



SUBARUの技術者によれば、アイサイトはレーダーではなくステレオカメラで周囲を認識しているため、(EyeSightという名前の通り)両目で見て反応する人間の感覚に近いのが特長だという。つまり、前走車が実際に減速するという物理的な距離の接近を感知する前に、ブレーキランプが点灯するのをアイサイトは"見ている"のだ。今回の体験試乗では、前走車を運転する元カート・チャンピオンのテスト・ドライバー氏に頼んで、左足ブレーキを使って減速せずにブレーキランプだけを点灯してもらったり、あるいは逆にブレーキランプを点灯させずシフトダウンによるエンジン・ブレーキのみで減速を行ってもらったりしたのだが、アイサイトが運転するレヴォーグは、乗員にまったく不安や不快感を抱かせず、実に見事に(つまり自然に)速度をコントロールしてみせた。


なお、この「アイサイト・ツーリングアシスト」はあくまでも高速道路・自動車専用道路を走行するための機能であり、一般道における使用は「してはいけない」ことになっている。技術的には信号も認識可能なのだが、これも法的に「やってはいけない」そうだ。最先端の技術を存分に使ってもらえないもどかしさが、きっとエンジニアの心にはあるだろう。だが、そこは航空機メーカーをルーツに持つSUBARUのこと。空を飛ぶ技術が可能になったからといって、すぐに旅客機を運航できるわけではないことはよくご存じのはず。

ただ、SUBARUが目指す自動運転は、自律走行のクルマが人を運ぶだけの「無人運転」ではないという。クルマの運転はあくまでも人間が楽しむ権利という考え方がそこにはある。クルマの運転は楽しい。しかし、現実の路上を走っていれば、常に楽しめるとは限らない。クルマの運転は楽しむべきものだからこそ、楽しめない時間はなるべく楽に、安全に過ごせるように、アイサイトという技術で人を手助けしたい。そんなSUBARUの思いが「ツーリングアシスト」という名称からも感じられた。



なんといっても、先行車が側道に外れて(ウインカーを出さない限り、アイサイトはそっちを追い掛けて行ったりはしない)、前方が開け、クルーズコントロール機能をキャンセルしてから、自分でアクセルペダルを踏み込んで運転を再開したときの爽快感。これを全て機械に明け渡すなんてもったいない。もちろん、そこで面倒だなとか億劫だなと思わせるのではなく、気持ちいいと感じさせるのは、レヴォーグの優れた基本性能があってこそだろう。ステアリングとシートを通して感じられるクルマとの一体感、100%自らの意思のみで曲がり、加速し、減速させた時に味わえる質感の高さには、改めて言及しておきたい。こういう「ご褒美」がなかったら、運転は全て機械に任せたくなってしまうかもしれない。



なお、今回のアップデートにおいて、アイサイト自体の基幹ハードウェアは2014年に登場した「アイサイト(ver.3)」から変更がないという。それが"vre.4"を名乗らない理由の1つだろう。それならば、従来のアイサイト(ver.3)搭載車もソフトウェアのアップデートで新機能を追加することが可能なのではないかと思って尋ねたところ、残念ながらそう簡単ではないそうだ。まず、既存モデルは生産時にインストールされたソフトウェアで認証を取得しているため、それを書き換えると問題になる可能性があるという。それから、基幹ハードウェアは共通でも、新機能を表示するマルチインフォメーションディスプレイなどの装備が従来車種には搭載されていない。これらも含めてアップデートを行うことは現実的には難しい。現行「インプレッサ」や「SUBARU XV」については、数年後の年次改良で採用する予定だとか。

ただし、既存モデルのオーナーが羨むばかりではない。従来の全車速追従機能付きクルーズコントロールには、「ダイナミック」モードが用意されているが、実は現在のアイサイト・ツーリングアシストではこれが省かれているのだ。ソフトウェアを進化させたことにより、現状のコンピューターではメモリや処理速度がいっぱいになってしまい、この機能まで入れられなかったそうだ。


【ギャラリー】Subaru Levorg31



【ギャラリー】Subaru WRX S433


マーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」という小説の中で、いたずらをした罰として塀のペンキ塗りをやらされているトムが、友達から冷やかされると、「これは"fun"(楽しみ)なんだ。やらされているんじゃない。自分からやっているんだ。信じられないならちょっとやってみろよ」と言って、まんまと友達にペンキ塗りをやらせてしまう場面がある。クルマの運転はペンキ塗りと比べるまでもなく、本物のfunである。そう信じている方にこそ、SUBARUのアイサイト・ツーリングアシストを実際に試していただきたいと思う(高速道路で試乗できる機会を、SUBARUと販売店は何とか用意してもらいたい)。そうではなく、運転もやっぱりペンキ塗りと変わらないと思う方は、他社の自動運転技術に期待していただくほかない。