原因不明のつらい症状…「不定愁訴」にどう対策する?

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執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


「不定愁訴」とは、原因が特定できないけれど、何らかの症状で苦しんだり悩んだりしている場合をいいます。

さまざまな身体症状を訴えるものの、血液検査、血圧測定などを行っても器質的な異常がなく、明らかな原因がわからない状態なのです。

今回はこの「不定愁訴」について、詳しく見ていきましょう。

ふらつき、めまい… 多種多様な症状

不定愁訴をもつ本人は「他人にはわからないつらさ」とよく表現します。

比較的多いのは、身体のふらつき、めまい、頭痛、慢性疲労感、食欲不振、耳鳴り、不眠、動悸、腹痛、手足のしびれ、微熱、毎日がとてもつらいなど、症状は多種多様です。

不定愁訴の特徴

不定愁訴の症状も、さまざまな現われかたをします。

たとえば、「疲れやすい」などの全身症状だったり、「頭痛と腹痛」というようにいくつかの部位で同時に症状が出たり、「頭痛が治ったら次はめまい」「めまいが治ったら次は腹痛」というように次々と症状が出てきたりなどです。

また、日常生活や精神的ストレスなど、幾つかの要因が絡み合って症状が発症します。

婦人科、耳鼻科、整形外科、内科など受診してみても、明らかな異常が見つからず、「気のせいです」「ストレスです」などと言われることも多いようです。

不定愁訴の診断と治療について

検査では異常が出ず、さまざまな病態が関連して起こるものですので、診断が難しいところです。

更年期障害、低血圧症などの病名が付けられたり、自律神経失調症という診断名がつけられたりすることもあります。

内科的な異常がなくても、遺伝体質、性格、ストレス、生活習慣の偏りなどから自律神経の機能が低下して、不定愁訴が起こることもよくあるからです。

治療については、症状を軽くする対症療法が行われます。

具体的治療としては、更年期障害の場合は、ホルモン補充療法を行ったり、漢方薬、抗うつ薬・抗不安薬などを使用して症状を軽減させます。

更年期と不定愁訴

不定愁訴で内科を受診すると「自律神経失調症」という病名が付けられ、婦人科を受診すると更年期障害と診断されることが多いでしょう。

不定愁訴で一番多いのは45歳〜55歳くらいで、とくに、日常生活に支障が出るほどの症状が出ている場合、更年期障害の可能性があるといえるでしょう。

更年期の女性の60〜70%は何らかの症状を経験しているといわれています。

原因は、ホルモンバランスが崩れている状態から生じるものですが、それに社会的要因や心理的な要因が重なって、症状を悪化させます。

相談で多いのは「昨日はあそこの具合が悪かった、今日はここが変だ」と、まるで毎日自分の身体で具合の悪いところを探しているかのように訴えてきます。

あげくの果てに、「寝ているしかない」状態となってしまった人もいます。

不定愁訴への対応

不定愁訴になったとき、少し自分の身体から気持ちが離れるようにすることが大切です。

たとえば、趣味のことに没頭する時間を持つ、友達と会っておしゃべりをする、観葉植物を育ててみるなど、外に目を向けるのがいいでしょう。

また、最近は若い女性でも不定愁訴に悩む人が増えています。

おそらく、食生活の偏りや運動不足による冷えなどから、ホルモンバランスが崩れ、月経不順や自律神経の乱れがあって症状が出ることが多いものです。

ですから、日常生活の見直しを心がけましょう。

3回の食事はバランスよく摂るようにし、食べすぎや欠食は避けましょう。また、運動をすると睡眠もきちんととれるようになります。

有酸素運動が有効ですから、ウォーキングや水泳などがいいでしょう。

気分転換にもなります。

男性にも不定愁訴はある!?

男性にも更年期障害(LOH症候群)があります。

男性は女性よりもホルモン減少がなだらかな分、女性ほど数は多くありません。

しかし、男性ホルモン(テストステロン)の減少による不定愁訴を訴える人はいます。

症状の多くは、やる気がない、集中力がない、体力がなくなったなど、仕事関連での訴えが多いようです。

更年期にかかると、不定愁訴を更年期障害だと決めてしまうことがあります。しっかりと検査してもらい、疾患がないことを確かめることが大事です。

自分ひとりで判断せず、医師に相談しましょう。

<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供