松山英樹、次こそはやってくれるだろう(撮影:岩本芳弘)

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大混戦を抜け出し、全米オープンを制したのはブルックス・ケプカだった。
松山英樹が世界ランク2位に浮上!激闘をフォトギャラリーで振り返る
メジャー初優勝となった彼のビッグな勝利を紐解いていけば、そこには米ツアー屈指の飛距離があったが、エリンヒルズの4日間においては、彼の武器である飛距離にGIR(パーオン率)1位という高い正確性も加わり、それが彼を押し上げる要因になったことは言うまでもない。だが、ケプカの飛距離と正確性を戦いという流れの中で活かしたのは、彼の精神力だ。そう、気持ちが揺れ、気持ちで負けてしまったら、どんなに優れた技術力があってもスコアには反映されない。
上手い人が必ず勝てるとは限らないが、メンタリティが強い人は持てる技を発揮すべきところで発揮することができる。だからこそスコアにつなげて勝つことができる。心と技は、その両方が揃ってこそのものであることを、最終日のケプカのゴルフが教えてくれたように思う。
2位タイから最終日をスタートしたケプカは、前半は3バーディー、ノーボギーの見事なプレーで単独首位へ浮上。だが、ティショットを右へ曲げた10番は、なんとかグリーンを捉えたが、3パットして初ボギーを喫した。その瞬間からケプカの精神力が試され始めた。前半のいい流れを10番のボギーで止めてしまうのか、それとも踏みとどまって、さらにいい流れに変えることができるのか。
彼の勝敗の分れ目はそこにあった。「信じてくれるかどうかわからないけど、僕は13番のパーセーブで本当にほっとした。あのパーパットを沈めることができたことが僕の自信を膨らませてくれた」3パットした10番はしっかりと打ちきれず、「ボールに十分なスピードを与えられず、ひどいパットだった。11番もそうだった」。
だが、そんなふうにパットに自信を失いかけ、心が揺れ始めたときに迎えた13番は、パーパットを「アグレッシブに打って、しっかり沈めることができた。それが、どれほどの自信につながったことか。あれが今日の僕のターニングポイントだった」
ケプカのそのターニングポイントは、松山英樹が彼に1打差まで迫って72ホールを回り終えたタイミングと、ほぼ重なっていた。にじり寄る松山を引き離すために、揺れ始めた心を安定させる自信こそが「あのとき僕には必要だった」とケプカは振り返った。
 
なるほど。次なる14番からは3連続バーディーを奪い、ケプカのスコアは14アンダー、15アンダー、16アンダーへと伸びていった。それは同時に松山優勝の可能性を封じることにつながった。そんなケプカの勝ち方は、今年のマスターズを制して悲願のメジャー初優勝を遂げたセルヒオ・ガルシアの勝ち方と、どこか通じるものがあった。
マスターズ最終日、ガルシアがオーガスタの13番(パー5)で左のブッシュに打ち込んだとき、誰もが彼の敗北を予感した。だが、彼は「僕が目指すべきは、最善を尽くし、このホールを5で上がること」と考え、その通り、そのホールをパーで収めた。そして、14番のバーディー、15番のイーグルで再び首位に並び、そして勝利を掴んだ。
揺れそうな心を安定させ、ピンチを転機に変えて流れを好転させていく。それは、心と技を必要なところで融合させる高度な離れ業。メジャー大会のサンデーアフタヌーンに、そんな離れ業ができたとき、彼らはメジャーチャンプというものになった。
ガルシアも、ケプカも。そして次こそは、松山英樹が、その離れ業をやってのける。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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