旧車を維持するうえで何より困るのが、必要なパーツが手に入らないこと。エンジンのパーツ、電気系部品など、純正部品がないものでもリビルト品、代替品が使えたり、ボディなどは鉄板から板金職人が叩き出すという力技もなくはないものです。

しかし、タイヤは消耗品にもかかわらず選ぶ余地がないケースも珍しくありません。クルマが進化して足回りも格段に進歩している影にはタイヤの進化も大きいわけで、その中にはハイトが低い、低扁平率のサイズが豊富になった分、高扁平の旧車用タイヤはタイヤメーカーさんが相手にしてくれなくなることが多いものです。

幸いなことにクラシックミニは他の旧車より恵まれているほうですが、それでも最新の軽自動車より小さな12インチ(年式や仕様により10インチや13インチあり)は市場から消えていく流れだと言われていました。

そんな中で昨年末、ミシュラン「XZX」に12インチがラインナップされました。
Xシリーズはミシュランがラインナップするクラシックカー向けタイヤです。2本の太いグルーブと多数の横溝からなるデザインはミニが新車だった時代に主流だったもの。以前から2CVやビートル対応のサイズは発売されていて定番として愛されていました。
今回導入されたサイズはクラシックミニ標準の145/70R12。他社がラインナップする12インチモデルは幅165等の太いものかコストを優先させた普及モデル中心だったこともあり、ミニオーナーには朗報といえます。

今回ミシュランXZXを装着してまず思ったのが、やはりクラシックパターン×標準幅のタイヤはデザイン上の収まりがいいということ。個人的に、太めのタイヤを装着した旧車をみると全体的にぼってりした印象を感じることが多いのですが、そういったことはありません。このあたりの感覚は人によって異なると思いますが、ミニ特融のすっきりしたデザインに合っていると思います。

変更前は旧車向けではない銘柄のタイヤを履いていたのですが、そこから比較するとスタートからいきなり違いを感じます。まず乗り心地がいい。ミニはノーマルのラバーコーンでもスプリングに交換した車両でも、路面の凹凸で細かくピッチングするのが当たり前と言われています。ですがXZXを履かせた車両で街中をはしりはじめた最初の100mで、クルマのショック全体が柔らかくなっているように感じられました。もう一つ違いを感じたのは交差点でのハンドルの切り始めです。タイヤ交換後は明確に、初期で「ニュ」っと粘るような感覚を感じるようになりました。

ハンドル自体は軽いのに初期で粘る感覚、おそらくこれはミシュランが意図しているものだと想定できます。1950年代に設計されたミニは当然ながら、現代のクルマよりも各部の剛性が劣ります。華奢な車体に負担をかけないバランスを考えて設計されたのが、このXZXというタイヤのようです。

この印象は高速道路、峠でも共通するものでした。
相変わらず時速100キロ付近でロードノイズは大きいですが、交換前のタイヤと比較して全体的にゴツゴツが減って快適になっています。これなら長距離ドライブでも休憩回数を減らせそうです。そして峠。以前は路面や車体に負担をかけている感覚、不安定感が常にあったのですが、それが確実に減少して安心して走れるようになっていました。あまりスピードを上げて試したわけではないですが、これならミニサーキットに持ち込んでも挙動がつかみやすく楽しめる特性になっていると思います。

 

このタイヤを装着するまで「見た目が良いのは勿論だが、その分性能はあらゆる面で(現代的なタイヤに)劣るのでは?」と考えていました。もちろん、確かに最新のタイヤに絶対性能面で劣る部分は多々あるとは思います。ただ、あくまでもタイヤは車体との相性が大切だと思い、その考えを改めるようになりました。このXZXは街乗り派はもちろん、ロングドライブを楽しむ人にも、峠が好きな人まであらゆるユーザーにお勧めできます。今回はサーキットでは試せなかったですが、すくなくとも持ち込んでみたいと思わせる性能は秘めていると感じました。

(高橋 知宏)

●サイズラインアップ
ミシュランXZX
145SR15 78S
165SR15 86S
145/70R12 69S

クラシックミニ向けサイズの「ミシュランXZX」が登場! 旧車乗りには朗報!!(http://clicccar.com/2017/06/19/484227/)