【気になるこの症状】

 これから蒸し暑くなると昆虫の活動が活発になる。部屋の隅に潜んでいるゴキブリも同じ。繁殖させてしまうと、思わぬ呼吸器疾患を招く場合がある。夏に急にぜんそく発作が悪化するようなら、「ゴキブリぜんそく」の可能性がある。

 【3割が抗体を保有】

 気道にアレルギー性の炎症が起こる「気管支ぜんそく」。代表的な原因物質(アレルゲン)としてダニやハウスダストが知られるが、ゴキブリも原因になるという。池袋大谷クリニック(東京)の大谷義夫院長(日本呼吸器学会指導医)が説明する。

 「米国の都市部の一部では、ダニよりゴキブリが原因の方が多いことが分かっています。国内のぜんそく患者のゴキブリアレルゲンの抗体保有率は約30%。その保有順位は、どの世代においてもベスト10以内です」

 細かくいえば、なぜか30〜40代よりも50〜70代の患者の方が保有率は高いという。

 【夏型肺炎との違い】

 「ゴキブリぜんそく」は、ゴキブリの糞(ふん)や虫体の破片などを吸い込むことでぜんそく発作が起こる。そのためダニなどの通年性と違って、ゴキブリが最も繁殖する夏季に発作が悪化するのが特徴という。

 「夏にせき症状が出る病気には、カビを吸ってアレルギー性の肺炎が起こる『夏型過敏性肺炎』もあります。ただ、ゴキブリぜんそくはアレルゲンを吸ってすぐ発作が出ますが、夏型過敏性肺炎は吸ってから6〜12時間してからせき症状が出るところが違います」

 つまり、ゴキブリぜんそくは1日内でも自宅から離れれば発作は出ない。一方、夏型過敏性肺炎は3〜4日、自宅を離れなければせき症状は治まらないのだ。

 【こまめに掃除】

 それにぜんそく発作はせき症状に加えて、呼吸に合わせて「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」といった音がする喘鳴(ぜんめい)を伴う。「せき」と「喘鳴」があれば気管支ぜんそくの疑いが強い。呼吸器内科に行けば「ゴキブリ」を含めた39項目のアレルゲンの抗体検査(採血)が保険で受けられるという。

 「ゴキブリぜんそくの疑いが強ければ、とにかく駆除することが一番の治療になります。そして、通常のぜんそく同様、長期管理薬として吸入ステロイド薬を使います。1日1〜2回の吸入で、3〜4日すればかなり楽になります」

 駆除してゴキブリがいなくなっても、糞や虫体はホコリに紛れて残る。ダニや花粉など他のアレルゲンを除去するためにも、部屋の掃除は年中こまめにやっておこう。

 「気管支ぜんそくによる死亡数は減っていますが、それでも年間約1500人います。ゴキブリぜんそくも甘くみてはいけません」

 《ゴキブリぜんそくを疑うポイント》

 (1)夏にぜんそく発作が急に悪化する

 (2)アレルゲンの抗体検査で「ダニ」が陽性でない

 (3)自宅に明らかにゴキブリがいる(駆除していない)

 (4)自宅から離れるとぜんそく発作が起こらない